介護福祉士国家試験・わかりやすい解説で受験生を応援します

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第30回介護福祉士国家試験に向けて講座を再開します

 

介護福祉士国家試験を受験される皆様、こんにちは。

 

今年はどうしようかと思い、この講座もしばらく更新していませんでしたが、来週あたりから再開することにしました。

 

昨年は最後まで行かず中途半端になってしまいましたし、昨年から今年にかけてはそれほど大きな制度改正などがなく、ほぼ昨年と同じ内容の学習で大丈夫ですので、昨年に続ける方法で記事を追加していきます。

 

日常の仕事が忙しくて、滞ることもあると思いますが、少しでも受験される方のお役に立てればと思っております。

 

介護福祉士の受験者数が減ってしまったことや、2018年には介護保険の改正なども行われますので、今回の試験が一つのチャンスだと思います。

 

受験資格のある方はぜひチャレンジしてみてください。

一緒に頑張りましょう!

第29回介護福祉士国家試験、結果はいかがでしたか?

 

第29回介護福祉士国家試験を受験された皆様お疲れさまでした。

 

合格点は75点だったようですが、いかがでしたか?

 

合格した方、おめでとうございます!

 

また、惜しくも不合格になってしまった方、また来年頑張りましょう。

来年の試験問題はほぼ今年の勉強で大丈夫だと思います。

 

その次になると介護保険の改正などがあり、また大変になってしまいます。

今のうちに合格してしまいましょう!

 

ところで昨年度は、途中からあまり記事を書いている時間がなくなってしまい、このサイトも中途半端になってしまいました(参考にしてくださった方、すみませんでした)。

 

今年度もどこまでできるかわかりませんが、少しずつ更新していきたいと思っています。
合格目指して頑張りましょう!!

 

 

介護福祉士国家試験 お疲れさまでした!

 

皆さん、今回の試験では朝早くからお疲れさまでした。

 

私の本業の仕事が忙しくなってしまい、最近はほとんど記事をアップできなくて申し訳ございませんでした。

 

まだ暫定版ですが、解答速報を作成してみましたので、参考になさってください。

 

暫定版でしたが、確定版に変更しました。

 

第29回介護福祉士国家試験 午前問題

 

第29回介護福祉士国家試験 午後問題

 

 

介護福祉士無料受験対策講座を再開します。

介護福祉士国家試験の合格を目指している皆さん、こんにちは。

 

1年間のブランクがありましたが、また「介護福祉士無料受験対策講座」を再開することにしました。

 

今年度(平成28年度・29年1月試験)から、実務経験3年での受験に、「介護福祉士実務者研修」の受講が義務付けられましたので、通信でもレポートの提出やスクーリングが必要で、費用も数万円~十数万円かかってしまいます。

 

ですので、今まで以上に一発合格したいですよね。

 

そこで少しでも皆さんのお手伝いができればと思い、講座を再開することにしました。

 

まだ、このサイト内は2年前のままで、特に介護保険制度や障害関係などは、大きな改正がありましたので、まだ使わないでください。(勉強法などは大丈夫です)

 

これから不定期ですが、順次修正してアップしていきますので、それに合わせて勉強をしていってください。

また、サイトも少し見やすくしていくつもりです。

 

それでは、みなさん一緒に頑張りましょう!

 

 

 

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介護福祉士国家試験の概要が発表されました

 

7月1日に、厚生労働省より、第29回(平成28年度)の介護福祉士国家試験の概要が発表されました。

 

 

内容は以下の通りです。

 

 

◆筆記試験

 

平成29年1月29日(日)

午前:10時00分~12時25分

午後:13時45分~15時35分

 

 

◆実技試験

平成29年3月5日(日)

 

 

◆申し込み期間

平成28年8月10日(水曜日)から9月9日(金曜日)(消印有効)まで

 

 

◆受験手数料

13,140円

 

 

詳しくは「社会福祉振興・試験センター」のホームページをご覧ください。

 

 

第28回介護福祉士国家試験問題をアップしました。

ゴールデンウィークも終わり、そろそろ受験の準備に取り掛かった方がよい時期になりました。

 

がんばればもう少し後からでも大丈夫ですが、私の経験上、試験の2~3か月前になって、「もう少し早めに準備すればよかった」と嘆く人を何人も見ていますので、早めに準備された方がよいと思います。

 

さて、この時期の勉強法としては、まず自分の実力を確認し、苦手分野をなるべく少なくしていくことをお勧めします。

 

今年の1月に行われた、第28回の筆記試験をダウンロードできるようにしましたので、今後の学習の参考にしてください。

 

もし、50%取れない科目があったら、できるだけそれ以上取れるようにしていってください。

 

第28回介護福祉士国家試験 午前問題

 

第28回介護福祉士国家試験 午後問題

 

解答

 

障害者自立支援制度における利用者負担と相談体制

<利用者負担>

 

障害者総合支援法における利用者負担は、利用者の負担能力に応じた負担(応能負担)が原則となっています。

 

その仕組みは、まず、障害福祉サービスを利用した人は、原則としてサービス費の1割(定額負担)と光熱水費や食費などの実費を負担します。

 

そのうえで、障害福祉サービス費は、利用者の負担能力に応じた4段階の負担上限月額が設定されていて、それ以上の負担はありません。

 

生活保護世帯や市町村民税非課税の低所得者世帯は負担上限月額が0円に設定されており、費用負担はありません。

 

また、食費や光熱水費の実費負担に対しても、収入に応じた減免措置が講じられています。

 

この他、同一世帯で複数のサービスを利用する場合などで、月ごとの世帯での利用者負担額が高額になる場合、基準額を上回る部分について「高額障害福祉サービス等給付費」が支給されます。

 

この合算の対象となるサービスは、障害者総合支援法における障害福祉サービス費と補装具費の利用者負担額、介護保険法に基づく一部のサービス費の利用者負担額、児童福祉法に基づく障害児支援(入所・通所)の利用者負担額です。

 

また、介護給付費、訓練等給付費について、市町村に申請後、支給決定前に緊急な理由によりサービスを利用した場合、申請日にさかのぼり、特例介護給付費、特例訓練等給付費が支給されます。

 

<相談支援体制の強化>

 

平成22年12月の障害者自立支援法(現総合支援法)の改正で、相談支援体制を強化するため、以下のような改正が行われました。

 

① 相談支援の充実させるため、これまでの相談支援の定義の見直しが行われ、自立支援給付に含まれる相談支援が以下の3つに分けられました

  • 基本相談支援:相談、情報提供、助言、連絡調整等を総合的に供与する
  • 地域相談支援:施設入所者等の地域への移行相談、単身の居宅生活者に対する連絡体制・緊急対応の相談
  • 計画相談支援:サービス等利用計画の作成、検証、見直し、変更など

 

※基本相談支援と地域相談支援を行う事業を一般相談支援事業、基本相談支援と計画相談支援を行う事業を特定相談支援事業といいます。

 

② 地域における相談支援体制の強化を図るため、市町村は、地域における中核的な機関として「基幹相談支援センター」を設置することができるようになりました。

基幹総合支援センターは、市町村直営のほか、社会福祉法人やNPO法人に委託できます。

 

③ 「自立支援協議会」が法律上位置付けられました。

「自立支援協議会」とは、障害のある人と障害のない人が共に暮らせる地域をつくるため、困難事例の協議、ネットワークづくり、障害福祉計画の進捗状況の評価など、障害福祉に係る関係機関が情報を共有し、地域の課題解決に向け協議を行うための会議です。

市町村が行う地域生活支援事業(障害者相談支援事業)の中に位置づけられ、障害者団体や福祉サービス事業所、教育、保健医療、企業など障害福祉に係る関係機関で構成されています。

 

介護福祉士実務者研修について

今まで、介護福祉士の実務経験での受験資格は『実務経験3年間』のみでしたが、今年度(平成29年試験)から『実務経験3年間』に加えて『実務者研修』を修了することが義務付けられました。

 

実務者研修は、450時間のシラバス(科目と時間数、内容などが書かれたもの)が決められていて、無資格の方はすべて受講しなければなりませんが、これは450時間学校へ通うというのではなく、多くは「通信講座」になっていて、自宅学習でレポート提出と数日間のスクーリングによる「通学講習」を併せて行うようになっています。

 

また、介護職員基礎研修や初任者研修(旧 ホームヘルパー2級)を修了している人は、スクーリング時間や通信添削回数(レポート提出回数)などの免除もあります。

 

具体的な受講時間や課題提出回数、スクーリング時間はおおよそ下記の通りです。

 

取得している資格受講時間レポート提出スクーリング
なし450時間7~9回10~14日
介護職員初任者研修320時間5~7回8~10日
ヘルパー1級95時間1~2回8~10日
介護職員基礎研修50時間1回2~3日

 

さて、数ある学校の中から、どこを選べばよいのか迷ってしまいますね。

 

受講料は安いに越したことはありませんが、スケジュールやスクーリングの会場など、無理なく受講できるところを選びましょう。

保有資格によって受講にかかる時間は違いますが、修了までには6ヶ月間の在籍が必要なスクールもありますので、特に無資格の方は注意が必要です。

 

また、受講料についても金額の他、支払い方法や費用の支援制度の有無などもチェックして、自分に合った学校を選びましょう。

 

実技試験最後のおさらい

いよいよ、実技試験本番まで、あと3日になりましたね。

 

今回は、今までとダブるところもありますが、最後の受験対策攻略法をお届けします。

晴れて介護福祉士になれるよ、しっかり確認して試験に臨んでください。

 

実技試験での最大の重要ポイントは、

 

①安全・安楽、②自立支援、③個人の尊厳です。

 

この3点ができていないと、不合格になる可能性が大ですが、これさえきちんとできていれば、多少の介護のミスは問題ありません。

 

この3点は、具体的には下記のようなことです。

①安全・安楽:体調の確認、転倒・転落・強打の防止、患側の保護、誤嚥の予防

②自立支援 :利用者の力を引き出す、意欲を高めるコミュニケーション

③個人の尊厳:介護の説明と同意、選択と自己決定、あいさつ・言葉づかい・態度

 

次に大切なのは、理想の介護を求めすぎないことです。

 

過去問などの映像の完璧な介護を見ていると、自分ができていないと思いがちですが、

チェックポイントでチェックされるのは、

 

・介護の方法が正しいか

・ボディメカニクスを活用したか

・これから行うことを説明し、同意を得たか

・健側から、あるいは目線を合わせて声掛けをしたか

・患側を保護したか

・自立支援(残存能力の活用)をしたか

・自己決定をしてもらったか

・気分や痛みを確認したか

などです。

 

「介護の方法そのもの」は、チェックポイント全体から見れば、そんなに大きなウエイトは占めていません。むしろ、声掛けだけでも結構点数は取れるものです。

 

それに、会場のレイアウトが、必ずしも理想の介護ができる状態とは限りません。

 

例えば、ベッドから車いすへの移乗の場合、車いすは健側に付けるのが大原則ですが、健側に置けない場合もあります。

 

そのようなときには、「車いすの位置はこちらでよろしいですか」と声をかけ、同意を得た上で安全な介護を行えば、それは正しい介護方法となります。

介護方法は、正解が一つだけ(~でなければダメ)ではありません。

 

ですから、少しぐらいの介護のミスは気にせず、説明と同意、自己選択、気分・痛みの確認、安全の確認などの声かけをきちんと行い。リラックスして試験に臨みましょう。

 

それでは、試験の流れに沿っていくつかのポイントを見てみましょう。

 

まず、問題文をよく読み、

①どんな利用者か(名前、右麻痺・左麻痺、できること・できないこと)、

②介護の内容、

③会場のレイアウトと備品などを確認します。

 

それから、自分がどのように介護をするかをイメージしますが、問題文に「○○はできる」、「○○を望んでいる」と書いてあったらそれは必ずしてもらうようにしましょう。

 

次に、試験会場に入ったら、備品の確認をしましょう。

 

問題文にある概略図は、備品がすべて書かれていないなど、不完全な場合があります。(第22回では、ベッドにタオルが掛かっていたが、概略図には書かれていなかった)

 

主な備品には以下のような意味があります。問題文に書かれていなくても、もしあったら活用しましょう。

 

タオル:手を拭く、隠す、保温

くつ:履く、脱がす、片づける

2つの物:選んでもらう、ひとつでもそれでいいか確認する

 

試験官が「始めてください」と言ったら、「始めます」と言い、モデルの近くまで行き、少しひざまずくような感じで

「名前を呼んであいさつをする」「自分の名前を名乗る」「これから何をするか伝え、同意を得る」 をしてスタートです。

 

その後は、(一部ですが)以下のような点に注意しながら、実技を行っていきます。

 

・移乗、体位交換等

重要ポイントは、①ボディメカニクスの活用、②残存機能の活用、③麻痺側の保護、④体調の変化の確認です。

 

・座位の安定

健側の手で支える、足を肩幅に開く(麻痺側は手伝う)、かかとを床につける 身体が傾いていたら直す

 

・座位⇒立位

足を引く(健側は自分で、麻痺側は手伝う)

⇒手前にずれる(健側は自分で、麻痺側は手伝う)

⇒健側の手を使いながら前かがみになって立ち上がる(麻痺側は保護する)

⇒めまいがないかどうか確認する

 

・ベッド上の平行移動

枕⇒頭⇒上半身⇒臀部⇒足の順で

 

・仰臥位⇒側臥位(健側に)

健側の足を患側の足の下に入れる(または膝を立てる)

⇒枕をずらす⇒向く方向を見てもらう⇒介助して側臥位に

⇒患側の足を持ち上げ、健側の足を後ろに伸ばしてもらう

⇒腰を安定させる⇒肩を安定させる

 

・杖なし歩行介助

麻痺側の斜め後方から介助、健側→患側の順に歩く

 

・段差超え

杖あり:杖⇒患側(介助しながら越える)⇒健側

杖なし:健側⇒患側(介助しながら越える)

 

・着脱

室温の確認、肌の露出を少なく

 

この他、行為ごとの説明と同意、体調・気分・痛みの確認は必ず行い、2つのものがあったら、どちらがいいか、1つのものならそれでいいかを確認しながら実技を進めましょう。

 

時間内に終わらなくても、それだけで落ちることはありません。制限時間を意識してミスをするよりも、チェックポイントを確実に実施することを優先しましょう。

 

間違いに気が付いたら「もう一度やり直します」と言ってからやり直しても問題はありません。 ただし、あまり時間をかけすぎると終わらなくなってしまうので、危険行為でない限りは飛ばしてしまってもいいでしょう。

 

以上のようなことに注意して、「これはできた、これもできた」と、プラス思考でいきましょう。少しぐらいできないことがあっても、6割できれば合格です。

 

実技試験まであとわずかです。体調を崩さぬよう、十分注意してお過ごしください。

それでは、皆様の合格を心よりお祈り申し上げます。

実技試験当日の流れ

今回は、実技試験の流れについて説明します。

 

まず、当日用意するものですが、介護しやすい服装と靴、そして何より大切なのが受験票です(絶対忘れないようにしましょう)。

 

服装は、ジャージとスニーカーという人が多いようですが、事業所のユニフォームの人も結構います。また、靴はナースシューズでもOKです。

ジーパンをはいていったために落ちたという話は聞きませんが、良くないという説もありますので、大事をとるならやめておいた方が無難でしょう。

 

携帯電話は、持って行っても大丈夫ですが、問題の漏えい防止のため、受付で預けることになります。

試験会場によっては、預けるのにとても時間がかかる場合がありますので、できるだけ持っていかないようにしましょう(バッグの中に隠しておければ大丈夫ですが、電源は切っておきましょう)。

 

この他、髪の長い女性は髪を束ねる、介護の邪魔になるものは身につけない、靴の紐はほどけないようにしっかりと結ぶ、などの他、試験官の印象が悪くならないように、派手な化粧やマニキュア、香水などは避ける、といったことにも注意しましょう。

 

※移動することが多く、元の場所には戻ってきませんので、荷物はまとめて持ちやすいようにしておきましょう。

 

■実技試験の流れ

 

試験会場に着いてからの流れは、大体以下の通りです。

 

①受付

・受験票を提出し、氏名・受験番号を確認し、採点票が渡されます。携帯電話の回収も行います。

 

②待機室

・まず、広い待機室に移動します。このときに着替えなどを行いますが、順番によってはかなり長時間待たされることもあります。参考書などを読むことも可能ですので、不安なところをおさらいしておきましょう。

 

③控室

・20~30名で待機室より狭い控室に移動し、実技試験の「課題文」と「見取り図」が渡されます。 試験会場にも課題は掲示してあるので、丸暗記する必要はありませんが、10分程度は時間があるので、何を使ってどのように介助をするか、頭の中でシミュレーションしておきましょう。

 

④試験室

・係員の案内に従って、受験票・採点票・課題と手荷物を持ち、試験室に入室します。

・入室したら、忘れずに挨拶をし、名前を告げて、受験票と採点票を係員に渡します。手荷物も指示された場所に置きます。

・受験票の確認や準備のために若干時間がありますので、このときに、課題と試験会場の備品などの状況を確認しましょう(課題に記載されていない備品があることがあります)。

・試験官の「始めてください」と指示があるので、「始めます」と言って実技を開始します。

・時間内に実技が終了した場合は「終わりました」と言って実技を終了します。時間内に終わらなければ試験官から「終了です」と指示があります。

・受験票を受け取り、係員の指示に従って退室します。

 

⑤終了後

・午前中の受験者は、午後の受験者が待機室に入室するまで、退出できません。係員の指示に従い、試験前とは別の控室に移動します。

・午後の受験者は、係員の指示に従って退出します。

・携帯電話を預けた人は、返却所で受け取ります。

 

以上が大体の流れです。当日慌てて試験に影響がないよう、しっかり準備しておきましょう。

実技試験攻略法

今回は、どのような問題が出ても共通の項目である、「介護の原則」「健康状態の把握」についての重要ポイントをお話しします。

 

ここをきちんと押さえれば、介護の方法で多少間違えても合格点をとることができます。

 

「身体介護」の方法は、正解が1つとは限らないので、利用者の同意を得た上で安全な介護を行えば、ほとんど減点にはなりません。100%正しい方法がわからなくても自信を持って試験に臨みましょう。

 

■これまでの実技試験の傾向

 

今までの実技試験の問題を見てみると、過去25回の実技試験のうち、

第5回が全盲、第11回が全身倦怠感以外はすべて、左右どちらかの麻痺という設定です。

 

また、介助の内容では、ベッド⇔車いすやポータブルトイレ、いすなどへの移乗動作を伴うものが12回、仰臥位から側臥位、端座位、起座位などベッド上での移動動作を伴うものが9回、歩行介助が7回となっています。

 

最後に安楽な体位にするものも多く出題されている他、衣服の着脱を含むものが13回出題されています。

 

これらを見てみると、片麻痺の人への、移乗・移動、着脱をきちんと習得しておくことが重要だといえます。

 

それができたら、出題基準の「身体介護」の他の介助方法についてもできるようにしておきましょう。

 

その他、第25回の問題では、「歩行器型杖」というあまりなじみのない福祉用具が出てきました。福祉用具の使い方も一度おさらいをしておく必要があるでしょう。

 

■「介護の原則」「健康状態の把握」についての重要ポイント

 

①安全・安楽

 

・転落・転倒・強打などの危険を伴う行為をしない
まず一番大切なのが、危険行為をしないことです。
危険行為とは、モデルをベッドから転落させる、車いすを押してテーブルにぶつけるなどの行為で、試験は即中止となります。
逆に言えば、中止にならなければ危険行為とは判断されていないということですので、そのまま試験を続けていいのですが、「車いす、杖等の安全確認」、「車いすのブレーキをかける」、「適切なスピードで車いすを押す」などに注意しましょう。

 

・麻痺側の保護
麻痺側は不安定になるため、保護する必要があります。
歩行介助で麻痺側の後方に立つ、側臥位では麻痺側を上にするなどの他、立ち上がりの際に麻痺側の膝を介護者の膝で支える「膝折れの防止」も重要です。

 

・誤嚥の防止
食事の介助などが出題されたら、上体を起こした姿勢で少し前かがみになるようにします。顎が挙がり反り返るような姿勢は危険です。

 

②自立支援

 

・利用者の残存機能を活用する
危険でない限り、利用者にできることはやってもらうようにしましょう。
片麻痺の人を車いすに乗車させる場合に、麻痺側は介助してフットレストに載せますが、健側は自分で載せるなど、健側を活用しましょう。
この他、健側を使って起き上がる、健側で支えて座位をとる、健側の手でボタンを留めるなど、できる行為は行ってもらいます

 

③個人の尊厳

 

・「○○さん」と名前で呼びましょう。

 

・モデルの目線に合わせて、丁寧な言葉遣いでコミュニケーションをとりましょう。

 

④説明と同意

 

・始めに全体の説明をし、その後は介護の行為ごとに、「これから何を行うのか」、「どのような方法で行うのか」、「残存機能をどのように使うのか」を説明し、承諾を得ます。

 

・どのような方法で介助したらよいか迷う場合、介助の方法が複数ある場合などでも、その方法を説明し、同意を得ていれば間違いにはなりません。

 

⑤自己決定

 

・2つのものから選択するような場合、「どちらがよろしいでしょうか」、「こちらでよろしいでしょうか」など、利用者に選択してもらいます。

 

・ポータブルトイレなど、介護者がものを移動する場合なども、「この位置でよろしいでしょうか」と聞きましょう。

 

⑥健康状態の把握

 

・試験スタート時と介護行為ごとに「気分はいかがですか」「気分は悪くないですか」「大丈夫ですか」などと健康状態を確認しましょう。

 

⑦介護者の健康管理

 

・介護者の健康管理では、ボディメカニクスの活用が大切です。

 

・支持基底面を広くとる、重心を低くする、水平に移動する、相手にできるだけ近づく、肘や膝を支点にしててこの原理を応用する、相手の身体を小さくまとめる、大きな筋群を使う、といったボディメカニクスの原理をしっかり把握しておきましょう。

実技試験の概要

筆記試験お疲れ様でした。そして筆記試験の合格おめでとうございます。後は3月2日の実技試験をしっかりとクリアして合格してしまいましょう。

 

これから数回に分けて、実技試験の対策についてお話ししていきます。

 

今回は、実技試験の概要についてお伝えします。

 

実技試験は、試験官2名の前で出題された問題に適した介助を実践します。制限時間は5分間です。

試験問題は、出題基準の中から選んだ2~4種類の介護行為によって構成されています。

採点は、15項目程度のチェックポイントがあり、できた行為に基づいて点がつけられます。

 

危険行為などがなければ、全体の6割程度できていれば合格で、合格率も9割ぐらいですので、落ち着いてできれば、それほど難しい試験ではありません。

(利用者の能力を活用することが大原則ですが、昨年の試験でほぼ全介助してしまった人が合格しました)

 

■実技試験の出題基準

 

出題基準は、以下の通りとなっていますので、どのような介助が出題されるのかを確認しておきましょう。

 

特に重要なのは、「介護の原則」の中の

①利用者の安全・安楽の確保

②自立支援

③個人の尊厳(コミュニケーション、自己決定) です。

 

大項目中項目小項目
1.介護の原則①安全・安楽・転落・転倒・強打の防止
・麻痺側の保護
・誤嚥の予防
②自立支援・残存機能の活用
・意欲の促進
③個人の尊厳・コミュニケーション
・事前の説明と承諾
・自己決定
・接遇(言葉づかい、態度)
2.健康状況の把握①利用者の健康状況の把握・外見(観)の変化を察知する観察
・意識(反応)状況の変化を察知する能力
・体温、脈拍、呼吸の測定
②介護者の健康管理・ボディメカニクス
・感染予防
3.環境整備①室内環境・換気
・温度、湿度
・冷暖房
・清潔
・採光
②ベッド・ベッドの機能
・ベッドメイキング、リネン交換
4.身体介護①体位と体位変換・体位の種類
・体位(身体)の保持と膝折れ防止
・テコの原理、ボディメカニクスの活用
・体位の変換
②移乗動作・車いす
・ポータブルトイレ
・ストレッチャー
・いす
③移動・歩行介助・ベッド上での移動
・車いす、ストレッチャーでの移動
・肢体不自由者の歩行介助
・視覚障碍者の歩行介助
④食事の介助・食事の種類と介助
・食前の介助
・摂食の介助
・食後の介助
⑤排泄の介助。トイレ及びポータブルトイレへの誘導と介助
・便器、尿器の介助
・おむつの介助
⑥保清の介助・清拭
・入浴、シャワー浴
・足浴、手浴
・洗面
・口腔ケア、義歯の取り扱い
・洗髪
⑦衣服の着脱・衣服の着脱
・寝衣の交換
・衣服のたたみ方
⑧整容の介助・髪をとかす
・ひげそり

 

実技試験当日までにやっておくこととしては、

 

①出題基準に書かれている基本的な介護技術の確認と練習

 

②“You Tube”などで、実技試験の映像が公開されていますので、見ておくのもよいでしょう。

 

③実技試験スタート時のセリフの練習

実技試験のスタートでつまづくと、頭の中が真っ白になって後の実技に影響します。

大体、次のようなセリフでスタートしますので、頭の中で試験会場をイメージしながら、スラスラと言えるように練習しておきましょう。

 

・失礼いたします(こんにちは)。○○さん、本日介護を担当させていただく△△です。よろしくお願いいたします。

・本日の体調はよろしいですか?(気分はいかがですか?)

・それでは、今日は(問題文の行為)をします。よろしいでしょうか?

・それでは、□□できるようにお手伝いをさせていただきますね。

重要ポイント集18 障害の医学的側面の基礎的知識6

重要ポイント集18

領域Ⅲ こころとからだのしくみ

障害の理解 「障害の医学的側面の基礎的知識6」を作成しました。

 

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重要ポイント集17 障害の医学的側面の基礎的知識5

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重要ポイント集16 障害の医学的側面の基礎的知識4

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重要ポイント集15 障害の医学的側面の基礎的知識3

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筆記試験のテクニック

今回は、筆記試験で失敗しないための注意点などをお届けします。

以下のような点に注意して、高得点を目指しましょう!

 

1.わかる問題からどんどん解いていく

やさしい問題も難しい問題も点数は同じです。時間切れで答えられなかったなどとならないよう、わかる問題から解答しましょう。

 

2.わからない問題はいくら時間をかけてもわからない。

ただし、解答しなければ100%×です。とりあえず解答して問題用紙に何か印をつけ(解答用紙に印をつけると×になる可能性あり)、後でまた考えましょう。

 

ここから下は100%合っていることではありませんが、参考までに。

 

3.自分の直感を信じよう。

問題の読み間違いやひっかけ問題は別ですが、一般に第一印象で判断した方が、見直して解答を変えたものよりも正解率が高いと言われています。

見直す場合は、問題文が正しく読めているかの確認を中心に行いましょう。

 

4.自分の解答傾向を知ろう

一般的に問題が全く分からないと○にする、中途半端にわかっていると×にする傾向があると言われています。自分の傾向を知って、それに惑わされないようにしましょう。

 

5.完全否定は×が多い。

「○○はすべて××でなければならない」「○○できるのは××のみである」のように全く例外を認めないような設問は過去ほとんど×です。

ただし、人員基準における資格のように、「○○でなければならない」が正解のものもありますので、迷ったときだけにしましょう。

 

★解答・マークシートの注意点

 

・設問を正しく読む

「適切なものを選びなさい」と「適切でないものを選びなさい」を間違えないようにしましょう。

 

・選択肢も最後まで読む

前半部分だけを読んで、「わかった」と思っても最後まで読みましょう。意味が逆になっている場合があります。

 

・解答欄のずれに注意

解答を後回しにした場合など、後で記入するときに解答欄がずれてしまうことがあります。問題番号と解答番号をチェックしながら解答しましょう。

 

・解答はひとつ

間違いに気づいて解答しなおした場合など、マークが2つついてしまう場合があります。2か所以上のマークは不正解となりますので、間違ったら確実に消すよう注意しましょう。同様に、解答用紙に余計な印などはつけないようにしましょう。

 

・マークはしっかりとぬる

ある程度濃くないと機械が読み取らない可能性があります。

 

・すべての問題に解答する

無解答は間違いなく0点です。何か塗れば2割は当たるので、わからなくても適当にマークしましょう。

 

いよいよ試験日まであと1週間となりました。最後まであきらめずに頑張ってください。

また、インフルエンザなども流行してきています。体調管理にも十分気をつけてください。

重要ポイント集14 障害の医学的側面の基礎的知識2

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重要ポイント集13 障害の医学的側面の基礎的知識1

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重要ポイント集11 障害の基礎的理解1

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重要ポイント集10 認知症の人に対する地域ケア

重要ポイント集10

領域Ⅲ こころとからだのしくみ

認知症の理解 「認知症の人に対する地域ケア」を作成しました。

 

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重要ポイント集8 医学的側面から見た認知症の基礎

重要ポイント集8

領域Ⅲ こころとからだのしくみ

認知症の理解 「医学的側面から見た認知症の基礎」を作成しました。

 

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直前までの準備

試験日まであと2週間となりました。

 

今回は、試験日までの勉強法や、試験での注意事項などをお届けします。

 

●試験日までの勉強法

 

・徹底的な復習

これからは、新しいことをやって不確実な知識を増やすより、今までの知識を確実に身に付ける方が高得点につながります。徹底的に復習しましょう。

 

・危ない科目をなくす

0点の科目が一つでもあると不合格になってしまいます。もし、危ない科目があったら、1問でも解けるように、重要な項目を中心に覚えるようしましょう。

 

・前日まで勉強

よく、「前日はリラックスして、体調を整えましょう」と言われます。

体調管理はもちろん大切ですが、前日の記憶は70%残ります。最後まで勉強しましょう。私自身、何度もこれに助けられています。

 

●前日の準備

 

下記のうち、お弁当以外は、前日までに揃えて、忘れ物のないようにしましょう。

 

・受験票、HBの鉛筆(シャープペン不可)、消しゴム

信じられないことですが、毎回受験票を忘れる人がいます。必ず持っていきましょう。また、念のためコピーをとって別に持っていくのもいいでしょう。

 

・昼食

お弁当をコンビニで買うなら自宅の近くで買って行きましょう。試験会場近くのコンビニは間違いなく混んでいます。

 

・防寒具

多分、試験会場も寒いです。寒さで試験に集中できないことがないよう、しっかり寒さ対策をしておきましょう。

 

・テキスト等

試験開始前まで、テキストを見ることができます。不安解消のためにも、持ち運びしやすいものを1冊ぐらいは持っていきましょう。

 

・携帯電話

持ち込み禁止となっていますが、電源を切ってバッグの中に入れれば大丈夫です。

ただしバイブがなったらアウトですので、必ず電源は切っておきましょう。

 

・時計

時計機能のみのものを持参しましょう。

 

 

●余裕を持って試験会場に到着しよう

・入室時間は9時~9時20分です。遅れずに到着しましょう。

 

●女性はトイレに気をつけよう

・会場内のトイレは30分待ち 外に仮設トイレなどが設置してありますが、トイレの時間を計算して、会場に行きましょう。

 

●リラックスして受験しよう

・周りの人はできそうに見えるものです。問題をめくる音や途中退出など、周囲の動きに惑わされないで自分のペースで受験しましょう。ほかの人もあなたのことをできそうだと思っていますよ。

・一年に一回しかない数十分です。大切に使いましょう。

 

※あとひと頑張りです。合格を心よりお祈り申し上げます。

重要ポイント集7 認知症を取り巻く状況

重要ポイント集7

領域Ⅲ こころとからだのしくみ

認知症の理解 「認知症を取り巻く状況」を作成しました。

 

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重要ポイント集6 高齢者と健康3

重要ポイント集6

領域Ⅲ こころとからだのしくみ

発達と老化の理解 「高齢者と健康3」を作成しました。

 

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重要ポイント集5 高齢者と健康2

重要ポイント集5

領域Ⅲ こころとからだのしくみ

発達と老化の理解 「高齢者と健康2」を作成しました。

 

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重要ポイント集4 高齢者と健康1

重要ポイント集4

領域Ⅲ こころとからだのしくみ

発達と老化の理解 「高齢者と健康1」を作成しました。

 

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重要ポイント集3 老化に伴うこころとからだの変化と日常生活

重要ポイント集3

領域Ⅲ こころとからだのしくみ

発達と老化の理解 「老化に伴うこころとからだの変化と日常生活」を作成しました。

 

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重要ポイント集2 老年期の発達と成熟

重要ポイント集2

領域Ⅲ こころとからだのしくみ

発達と老化の理解 「老年期の発達と成熟」を作成しました。

 

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重要ポイント集1 人間の成長と発達

重要ポイント集1

領域Ⅲ こころとからだのしくみ

発達と老化の理解 「人間の成長と発達」を作成しました。

 

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介護過程3

(2)介護過程の展開3

 

◆援助の実施

 

介護従事者は、介護計画に沿って、利用者が少しでも生活課題を解決して目標に近づけるよう、援助を実施します。

援助の実施に当たっては、①自立支援と予防、②尊厳、個別性、自己決定の尊重、③安全、安心、安楽などの視点を持つことが重要です。

 

◆モニタリングと記録

 

介護計画・個別援助計画に沿ってサービスが提供されているか、実施された援助の有効性、目標の達成度、利用者の変化や利用者・家族の満足度などを確認することをモニタリングといいます。

 

介護過程を展開する中での利用者の状況やその変化の様子は経過記録に記録します。 後の評価を的確に行うためには、正確に記録することが必要です。

 

記録では、①援助実施前の利用者の状態、②援助実施中の状態、③実施後の利用者の反応や状態、の3段階について記録します。

 

◆評価

 

あらかじめ定めておいた評価期間ごとに、目標の達成状況などについて評価を行います。

 

目標を達成していれば、その介護過程は終了しますが、達成できていなければ、各段階での妥当性を評価し、修正したうえで、再度介護過程を展開します。

 

評価の判断は、次のような基準で行います。

・援助内容を計画した通りに実施しているか。

・目標に対する達成度。

・援助内容や方法、頻度などは適切か

。 ・新たな生活課題が発生していないか。

 

また、妥当性のある評価を行うためには、次のようなことが必要です。

・評価期間が適切である。

・正確で十分な記録がある。

・評価の判断基準が具体的に設定されている。

 

(3)介護過程とチームアプローチ

 

介護保険制におけるケアマネジメントも介護過程と同じように展開されますが、同じものではありません。

 

ケアマネジメントは、利用者の生活全般を対象とした総合的な援助計画であり、生活課題に対して様々な社会資源を結びつけるものです。

 

これに対し介護過程(個別援助計画)は、介護支援専門員が立案したケアプランに基づき、介護の専門職の立場で、ケアプランの目標に向けて個別援助を展開するための計画です。

 

訪問介護における介護過程(訪問介護計画)を例では、

介護支援専門員が作成するケアプランは、 ①アセスメント、②ケアプラン原案の作成、③サービス担当者会議、④ケアプランの確定、⑤援助の実施、⑥モニタリング、⑦評価、⑧終結または①に戻る というように展開されます。

 

このうち介護過程(訪問介護計画)は、③~④で訪問介護が位置付けられ、どのような支援を行うかが決められますので、それにしたがって介護過程を展開することになります。

 

利用者への援助は、様々な専門職がかかわるチームケアとして行われます。介護保険制度のケアマネジメントの展開においては、サービス担当者会議で各専門職からの専門的な視点による意見が反映され、多角的な援助が可能となります。

 

介護過程を作成する介護職員もサービス担当者会議に参加し、他の職種と利用者に関する情報や目標、援助方針を共有したうえで、介護過程を展開する介護職チームでもケアカンファレンスを行い、チーム内での情報共有や連携が行われます。

 

介護過程2

(2)介護過程の展開2

 

◆介護計画の種類

 

介護保険制度の中で作成されている介護計画には、大きく分けて居宅サービス計画や施設サービス計画などの「ケアプラン」と「個別援助計画」の2種類があります。

 

ケアプランは、利用者にかかわるすべての専門職が参画し、利用者の生活全体に対する総合的な計画を立てるもので、介護支援専門員が作成します。

 

これに対し、個別援助計画は、ケアプランに示されている目標や援助方針を踏まえて、各分野の専門職がどのように利用者にかかわるかを具体的な援助方法として示したものです。

この個別援助計画は、居宅サービスにおいては、訪問介護計画や通所介護計画など、各サービス事業者の計画がり、施設サービスにおいては、介護計画や看護計画、機能訓練計画などが該当します。

 

◆目標設定

 

ケアプランや個別援助計画などの計画を作成に当たっては、生活課題を解決し、利用者の望む生活ができるよう、具体的な目標を設定します。

この目標には「長期目標」と「短期目標」がありますが、「長期目標」には、生活課題が解決した最終的な状態を設定し、「短期目標」には、長期目標を実現するための段階的に達成していく目標が設定されます。

 

目標を設定する場合と記載する際のポイントは、次の通りです。

 

・利用者一人ひとりの価値観や生活習慣を尊重し、自己実現を目指すものであること。

・利用者自身が主体的に意思決定した目標であること。

・利用者の状態像に合った、実現可能な目標であること。

・目標達成までの期間を設定すること。

・目標を記載するときは、利用者を主語とし、わかりやすい言葉で記載する。

・目標の達成度がわかるように、できるだけ具体的で数値化された表現を使う。

・優先順位が高いものを上方に記載する。

 

◆計画の立案

 

介護計画・個別援助計画に掲げられた目標を達成するために、どのような援助やサービスが必要かを検討し、計画を立案します。

 

①個別化と標準化

計画の立案に当たっては、利用者の生活習慣や価値観を尊重し、ADLのみでなく、QOLの向上にも目を向け、利用者それぞれの特性に合わせた「個別化」の視点をもつことが重要です。

また、援助はチームによって行われるため、それぞれの構成員が目標や役割を共有する必要があります、このため、計画は誰が読んでもわかり、統一されたケアができるよう「標準化」されたものでなくてはなりません。

 

②頻度と期間

計画の作成では、本人の状況と家族の介護力等を踏まえ、目標を達成するために必要な頻度と達成までの期間を設定します。また、目標が達成できたかどうかを確認できるようにするため、その判断の根拠となる観察内容を記載します。

 

③説明と同意

目標と援助内容、頻度、期間などが決まったら、利用者及び家族に対し、主体的に参加できるよう、十分に説明し、同意を得ます。

介護過程1

(1)介護過程の意義と目的

 

介護過程とは、利用者がより良い生活を実現するために、直面している生活課題を把握し、その解決を図るための計画を立て、実施、評価するプロセスをいい、「問題解決アプローチ」ということができます。

 

介護過程は、多職種連携のもと、利用者の尊厳を守り、個別ケアを実践することによって、自立した生活の実現を目指すものです。

また、介護過程の展開は、利用者のニーズを客観的・科学的に捉えることによって、「根拠に基づいた介護の実践」を可能にすることができます。

 

介護過程は、介護保険のケアプランや他の計画とほぼ同様ですが、「アセスメント」「計画の立案」「援助の実施」「評価」の4つの過程で構成され、それらが循環することによって、支援が継続していきます。

 

各過程の内容は、以下のとおりです。

 

①アセスメント

・援助に必要な多方面からの情報を収集する。

・専門的な視点から情報を解釈、分析し、それらを関連付け、統合する。

・利用者が抱える生活課題(ニーズ)を明確化する。

 

②計画の立案

・課題を解決するための目標を設定する。

・目標を達成するための方針や具体的な支援方法を決定する。

 

③援助の実施

・計画に基づいた援助を実施する。

・実施状況や新たな課題を把握する。

 

④評価

・モニタリングを行い、目標の達成状況を評価する。

・支援方法が適切であったかを評価する。

・計画の修正の必要性、今後の方針を検討する。

・新たな課題が把握された場合は、再アセスメントを行い、必要な計画の修正を行う。

 

(2)介護過程の展開

 

◆情報収集とアセスメント

 

アセスメントとは、①利用者の希望や心身の状況、生活環境など多角的に情報を収集する、②その情報を解釈、分析し、関連付け、統合する、③生活課題(ニーズ)を明確にする、という一連の過程のことを指します。

 

アセスメントが適切に行われるかどうかが、その後の援助の質に大きく影響します。アセスメントを行う者には、専門的知識や経験、判断する力が要求されます。

 

また、アセスメントを行う際には、利用者のマイナス面だけにとらわれることなく、利用者のできること、得意とすることなどのストレングスにも着目することが大切です。

 

①情報収集

 

情報には、利用者自身が考え方や問題のとらえ方である「主観的情報」と、他者が観察することによって得られる「客観的情報」があります。

 

情報収集では、まず主観的情報を集めますが、初めからすべての情報を集めようとはせず、先入観を持たずに利用者に接し、受容・共感によって信頼関係を築きながら正確な情報を把握していきます。

 

客観的情報は、心身の状態の観察や、医師の診断・バイタルチェックなどのデータや記録書類、家族や他職種からの情報などから得ることができます。

 

これらの情報を記録する際は、主観的情報なのか客観的情報なのかがわかるように区別して記録します。

 

②情報の解釈・分析、関連付けと統合

 

収集した情報が正確なもので、援助目標を達成するために必要十分かどうかを吟味したうえで、その内容を分析し、いくつかの情報の関連付けと統合を行うことによって、利用者の課題を明確化します。

 

③課題の明確化

 

利用者の抱える課題には、①顕在的課題、②顕在的課題の要因、③潜在的課題があります。

また、支援の方法として、①状態の改善・維持を目指すものと、②状態の悪化・低下を防止するものとに分けることができます。

 

支援計画を立案する場合には、これらを踏まえ、利用者のニーズや生活状況に照らし合わせて、優先順位をつけて支援を行うことが必要です。

優先順位の設定に当たっては、まず「生命の安全」にかかわることを最優先し、次いで自立支援の基づいた「生活の安定」や「人生の質・豊かさ」など、その人らしく生活ができているかに視点をおくとよいでしょう。「マズローの欲求段階説」も参考になります。

 

介護過程にICFの視点を取り入れることによって、アセスメントの質を高くすることができます。

「参加」に焦点を当てることによって、利用者の意欲が高まり、「心身機能・身体構造」や「活動」にプラス面の影響がでる、生活機能と環境因子のかかわりに焦点を当てることで、活動を促進する計画を立てるなど、多角的な視点で計画を立案することができるようになります。

 

終末期の介護2

(3)終末期における介護

 

身体的苦痛や不安が大きい中では、質の高い生活を送ることはできません。

終末期の介護では、利用者が、人生の最期までその人らしく充実した生活を送ることができるよう、できる限り苦痛を和らげるとともに、穏やかな気持ちで最期を迎えられるよう援助します。

 

終末期の介護の主なポイントは、以下のとおりです。

 

◆身体的側面からの支援

・苦痛緩和のため、できるだけ呼吸が楽な体位にし、必要に応じて体位交換をする。

・入浴ができない場合でも、部分浴や清拭を行い、身体を清潔に保つ。

・口腔内が乾燥するため、水分を補給するが、窒息の危険があるため無理に水分を与えず、水を含ませたガーゼで口腔内を湿らせる。

・痰が出やすくなり、窒息の危険もあるため、医療職と連携して痰の吸引を行うか、ガーゼなどで痰を取り除く。

・手足をマッサージするなどして、倦怠感を除去する。 ・下肢に冷感がある場合は、湯たんぽや靴下などで保温する。

 

◆精神的側面からの支援

・不安や恐怖、悲しみなどネガティブな感情にとらわれている場合があるので、傾聴に努め、共感的態度で接する。

・本人が大事にしている活動を優先的に行なえるようにする。

・聴力や触覚は比較的最後まで残るので、声かけや手を握るなどのスキンシップを行う。

・できるだけ家族と共に過ごせるようにする。

 

◆医療との連携

施設入所者の重度化に伴い、2006(平成18)年の介護報酬の改正により、介護老人福祉施設では「看取り介護加算」が導入されました。

看取り介護加算は、①医師による回復の見込がないことの判断、②24時間の連絡体制など、医療連携体制が確保されていること、③利用者又は家族との同意の下、看取り介護計画が作成されていることなど、一定の要件を満たした場合に算定できます。

 

高齢者の多くは、住み慣れた自宅で最期を迎えることを希望しています。

在宅でのターミナルケアでは、家族との時間を穏やかにすごせるよう、不必要な医療処置は行なわず、苦痛の緩和や不安の除去などを中心とした援助を行います。

 

在宅で介護保険の訪問看護を利用している利用者が、病状の急性増悪、終末期などで、頻回に訪問看護が必要と判断された場合は、特別訪問看護指示書が交付され、1ヶ月のうち、14日以内で毎日の訪問看護が利用できるようになります。

この場合は、介護保険ではなく、医療保険からの訪問看護の提供となります。

 

◆臨終時の介護

・安楽な姿勢の保持など、できるだけ苦痛がないよう、工夫する。

・窒息防止のため義歯ははずしておき、口腔内が乾燥しないようガーゼなどで湿らせる。

・家族や親しい人と静かに過ごせるよう、明るさ、室温などの環境整備を行なう。

・声かけは最期まで行う。また、不用意な発言をしないよう注意する。

・臨終時は、家族との別れの時間がとれるよう配慮する。

・死亡の確認は医師が行う。医師が死亡診断をした時刻が死亡時刻となり、他の者は判断できない。

・死後のケア(エンゼルケア)は、家族等との別れの時間が終了してから行う。

・エンゼルケアは、死亡診断後、死後硬直が起こる2~4時間までに行う。身体を清拭し、その人らしく美しく整える。

 

◆グリーフケア(悲嘆のケア、家族等への支援)

終末期においては、利用者だけでなく、家族も不安や悲しみなどの精神的負担や、介護量の増大による身体的負担を感じています。

家族もケアの対象者として位置づけ、利用者と過ごせる時間を作る、家族の悲しみや苦しみを受け止め共感するなど、利用者と家族が悔いを残さないように支援することが大切です。

 

「グリーフ」とは、悲嘆という意味ですが、身近な人との死別を体験した家族に対し、悲嘆から立ち直っていく過程をサポートすることを「グリーフケア」といいます。

 

グリーフケアにおける援助のポイントとして、以下のようなことが挙げられます。

・大切な人との死別に際して悲嘆することは、ごく自然のことであるという認識を持つ。

・利用者との関係や看取りに関し、罪悪感を持たず肯定的に捉えられるよう援助する。

・家族に対しねぎらいの言葉かけをする。ただし、助言をするのではなく、悲しみを共感するという聞き手の姿勢で行う。

 

終末期の介護1

(1)終末期における介護の意義・目的

 

終末期の介護(ターミナルケア)は、死を迎えるためのケアのことですが、利用者が死ぬまでの日々をできるだけ苦痛がなく、自己決定を尊重しその人らしく生きていくことを全人的に支え、QOL(生活の質)の向上を目指す重要な介護です。

 

終末期の人の苦痛には、①肉体的苦痛、②精神的苦痛、③社会的苦痛、④霊的苦痛の4つがあります。この4つを「全人的苦痛(トータルペイン)」といい、ターミナルケアでは、この4つの苦痛に配慮した援助が必要です。

 

終末期では、心身の状態が大きく変化しますので、医療職との連携が不可欠です。また、全人的な援助を行うための様々な職種が関わり、チームで利用者や家族を支援します。

 

チームケアでは、利用者、家族、チームメンバー全員が、ターミナルケアに対する合意ができていることが重要であり、利用者に関する最新の情報を共有している必要があります。

 

終末期ケアの考え方のひとつに、「ホスピスケア」があります。ホスピスケアとは、病気の治療を目的とするのではなく、極力痛みや苦しみを除去し、利用者の価値観・考え方を尊重し、最期まで質の高い人生が送れるよう、様々な専門職やボランティア等が支援するケアの方法です。

 

ホスピスケアは、緩和ケアを中心に行われていますが、緩和ケアとは、痛みや呼吸困難など身体的な苦痛のほか、不安や孤独など精神的症状、人生の意味や死生観などの霊的(スピリチュアル)な苦痛を和らげるためのケアのことをいいます。

 

(2)終末期における利用者のアセスメント

 

終末期におけるアセスメントの主なポイントは、以下のとおりです。

 

●身体的側面

・痛みや苦痛の有無とその程度 ・呼吸状態、循環状態

・栄養状態、食事・水分摂取状況

・排泄の状態、皮膚の状態

・ADLの状態

・服薬の状態

 

●精神的側面

・死に対する本人の価値観

・信仰の有無、霊的な痛みの有無

・やりたいことがあるか

 

●環境的側面

・終末期に対する家族の考え方、家族との関係

・支援体制

・住居等の物理的環境

 

●終末期における身体の変化

・呼吸

呼吸困難になり、一般に下顎呼吸(顎を上げてする呼吸)→鼻翼呼吸(鼻翼を拡げる呼吸)→チェーンストークス呼吸(早い呼吸と無呼吸を繰り返す)→呼吸停止となる。

 

・皮膚

皮膚色が青白く変化し、唇や爪、手足にチアノーゼ(血中の酸素不足により皮膚や粘膜が青紫色になる)が出現する。また、四肢や背部に浮腫がみられるようになる。

 

・脈拍

脈が弱くなりふれにくくなる、不整脈が現れる。

 

・その他

体温が低下し手足が冷たくなる、意識が低下し反応が少なくなる、尿量の減少、姿勢保持ができなくなる、などの兆候が現れる。

 

自立に向けた睡眠の介護2

(3)安眠のための介護・安眠を促す介助の技法

 

◆安眠のための環境整備

 

安眠のためには、温度や湿度、音、明るさなど、寝室の環境を整えることが大切です。個人差はありますが、以下のような条件が快適な環境といえます。

 

・温度・湿度

季節や個人によって差はあるが、一般に温度は25℃前後、湿度は50~60%がよいとされる。

 

・音

話し声や足音、テレビの音などの生活音や騒音は、安眠の妨げになるためできるだけ避ける。ただし、心理状態によっては、生活音や音楽は安心感やリラックス効果をもたらし、安眠を促す場合もある。

 

・明るさ

夜間暗くなると、メラトニンというホルモンが分泌され、睡眠が促されるため、寝室は暗くした方がよいが、利用者の好みや夜間の行動にも左右される。

 

・寝具

人は睡眠中の体温を下げるため、コップ1杯程度の汗をかく。シーツやタオルケット、カバーなどは乾燥した清潔なものを使用する。

 

・ベッド

ベッドは、寝返りをうつために十分な広さのものを使用する。マットレスは、安楽な体位が保持できるよう、やわらかすぎず適度な硬さのものを使用する。

 

・枕

高すぎる枕は、頚椎が無理な形に曲がり、肩こり頭痛などのほか呼吸にも影響がある。首が15度程度上がりる高さで、寝返りがうてる長さのものを使用する。

 

・エアマット

褥瘡予防などのためにエアマットを使用することがあるが、エアマットの揺れや浮遊感のために船酔い現象が起きたり、マット上での動きを抑制し、寝返りや起き上がりがしにくくなるので注意が必要である。

 

◆安眠への援助のポイント

 

・生活のリズムを作り、日中活動的にすごせるようにする。

 

・食事や水分は、必要量を摂取し、寝る2~3時間まえには済ませる。

 

・就寝前に排泄を済ませ、夜間尿意があっても対応できるよう、尿器やポータブルトイレなどを準備しておく。

 

・飲み水やティッシュペーパー、タオルなど必要なものを準備しておく。

 

・かゆみや痛みがある場合には、処置等を行っておく。

 

・夜間の事故などにすぐ対応できるように、サポート体制をとっておく。

 

◆利用者の状態・状況に応じた介助の留意点

 

・認知機能が低下している利用者は、心身の異常をうまく伝えることが困難であり、不眠落ち着きのない行動をとることがあります。このような場合は、体調不良等がないかを確認し、できるだけ安心して落ち着けるような環境を整備します。

 

・運動麻痺のある利用者は、睡眠中の姿勢に注意し、麻痺側を上にして安楽な体位にします。ただし、長時間にならないよう、体位交換を行います。

 

・下肢等に冷感があれば、湯たんぽや電気毛布を使用しますが、低温やけどや脱水にならないよう、注意が必要です。

 

・不眠が改善されず、健康を害する恐れがある場合などには、医師から睡眠薬が処方されることがあります。

 

・睡眠薬を服用するときは、水か白湯(アルコールと一緒に飲むことは禁忌)で、指示された時間と量を守って服用します。眠れないからといって、自分で量を増やしたりせず、医師に相談します。

 

・睡眠薬の副作用で、足元のふらつきや眠気でぼんやりとした状態になることがあります。転倒の危険性が高くなりますので、介護者は、状態をよく把握して、環境の整備や見守りなどを行います。

 

・眠れるようになったからといって睡眠薬を急にやめると、退薬症状(禁断症状)が現れ、不安やせん妄、頭痛などが起こることがあります。薬をやめる場合も、医師に相談して指示をもらうようにします。

 

自立に向けた睡眠の介護1

(1)睡眠の意義・目的

 

よい睡眠は、身体と脳を休ませ、疲労を回復させるとともに、ストレスの解消や各種ホルモンの分泌を促し、健康な生活を維持することができます。

 

しかし、一半に高齢になると、寝つけない、眠りが浅いなどの訴えが多くなり、日中の活動にも影響がでてきます。介護従事者は、睡眠の障害となっている原因を把握し、それを取り除くことによって、利用者が安眠できるよう支援します。

 

(2)利用者の睡眠に関するアセスメント

 

睡眠に関するアセスメントの主なポイントは、以下のとおりです。

 

●身体的側面

・麻痺の有無や運動機能など身体状況

・既往歴

・発熱や痛み、便秘・下痢などの症状

・服薬状況

 

●精神的側面

・認知・知覚機能

・不安や心配事などはないか

 

●環境的側面

・ベッドか和布団か、枕やマットレスなど寝具の状態

・部屋の明るさ、騒音、室温など

 

上記のほか、ライフスタイルや生活環境、日常的な睡眠や覚醒のパターン、日中の活動状況、夕方以降に摂取した食べ物や飲み物、なども睡眠に影響します。

様々な視点から利用者を把握し、できるだけ詳しく記録をすることで、睡眠障害の原因や対処方法が見いだせるようになります。

 

◆睡眠障害

 

睡眠障害とは、眠れないことだけではなく、睡眠中の病的な変化や行動、睡眠のリズムの乱れなど、様々な状態の総称です。

睡眠障害のある利用者に対しては、その症状と客観的な情報を把握・検討して、適切な対応につなげることが必要です。

 

通常人には「概日(がいじつ)リズム(サーカディアンリズム)」があり、体内時計によって、ほぼ同じ時間に眠くなったり目覚めたりします。

 

ところが、高齢になると、なかなか眠れない、眠りが浅く何度も目覚める(中途覚醒)、一度目覚めると入眠できなくなる、朝早く目覚めるなど、熟睡できないことが多くなります。

 

このほか、心配事やストレス、痛みや掻痒感(かゆみ)なども、不眠をもたらす原因となります。

 

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に10秒以上の無呼吸が5回以上繰り返される疾患のことを指します。無呼吸だけでなく、不規則な呼吸やいびき、昼間の眠気、起床時の頭痛などの症状も見られます。

 

睡眠時無呼吸症候群は、放置すると生命にかかわることもあり、またこの疾患による特有の眠気は交通事故を起こす危険もあります。

睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、早期に受診し、適切な治療をすることが大切です。

自立に向けた家事の介護5

(4)家事の介助の技法5

 

◆家庭経営・家計の管理

 

家庭において日常生活を送る中で発生する様々な欲求を、消費活動を通して満たす行為を「家庭経営」といい、人、物、金、時間、生活支援を運用することを指します。

 

家庭経営を円滑に進めるためには、「家計管理」を適切に行うことが必要ですが、加齢や認知症などで、金銭管理が困難になると、他者の支援が必要になります。このような場合でも、できるだけ利用者の意思を尊重し、主体的にかかわれるよう支援します。

 

単身高齢者など、家族の支援が難しい場合は、成年後見制度や日常生活自立支援事業を利用することも考慮します。

 

家庭経営への支援のポイントとしては、以下のようなことがあげられます。

 

・金銭管理の方法について、利用者と介護者が一緒に考えて決める。

・金銭管理は計画的に行い、不必要なものは購入しない。

・通帳や現金、重要な証書などは、安全な場所に保管し、大金は持ち歩かない。

・家計簿をつける。 ・介護者は、通帳や現金は預からない。日常生活自立支援事業等を活用する。

・悪質商法等の被害に合わないよう、情報を提供し注意を促す。

 

最近、販売・勧誘に関する悪質商法が増加し、特に高齢者が被害に合うケースが多くなっています。

高齢者の身近にいる介護従事者は、悪質商法等に関する知識を持ち、利用者の生活状況に注意して、被害に合わないように心がけます。

万一、消費者被害に合ってしまった場合は,消費生活センターや国民生活センターに相談し、できるだけ早く対処することが大切です。

 

契約をしてしまても、一定の期間内であれば「クーリングオフ制度」によって解約することができます。

「介護実践に関する諸制度1 個人の権利を守る制度1」を参照してください。

 

主な悪質商法には、以下のようなものがあります。

 

・マルチ商法(連鎖販売取引、ネットワークビジネス)

商品を販売しながら会員を勧誘するとリベートが得られる仕組みで、消費者を販売員にして、会員を増やしながら商品を販売していく商法。

 

・催眠商法

狭い会場に人を集め、販売員の巧みな話術で、日用品等をただ同然で配り、雰囲気を盛り上げた後、高額商品を契約させる商法。

 

・ネガティブ・オプション(送りつけ商法)

注文していない商品を、勝手に送りつけ、受け取った以上支払義務があるとだまし、代金を支払わせる商法。

 

・点検商法

正規の点検を行っているように装い、トイレや床下などを点検し、「故障している」「シロアリがいる」などとだまし、商品の交換などを行って代金を請求する商法。

 

・霊感商法

「たたりがある」などと不安をあおり、単なる置物や印鑑などを、不当に高い金額で売り込む商法。

 

自立に向けた家事の介護3

(4)家事の介助の技法3

 

◆掃除

 

住まいを清潔で安全に保つためには、定期的に掃除をすることが欠かせません。

しかし、掃除は家事の中でも身体的負担が大きいため、障害や加齢に伴い、困難になってきます。

 

介護従事者は、利用者ができることは行ってもらい、主体的に掃除に参加できるように支援しますが、利用者の生活習慣や価値観を尊重することは言うまでもありません。

 

掃除に関する利用者のアセスメントでは、身体機能や精神面のほか、利用者のやり方を尊重しえたうえで、利用者の健康を害する原因となっていないかなを把握する必要があります。

 

●掃除の支援

 

掃除の支援を行う際は、以下のようなポイントに注意します。

 

・掃除を行うための空間を確保する。

・掃除の方法や内容を利用者に確認する。

・利用者に確認しながら、必要なものと不要なものを分け、置き場所は利用者と一緒に決める。

・換気を行う。

・掃除機など掃除用具の準備をする(事前に紙パックがいっぱいになっていないかを確認する)。

・掃除はゆっくり、ていねいに、片付けながら行う。

・掃除機やほうきなどでごみやほこりを取り除いてから拭き掃除をする。

・拭き掃除は、汚れの種類や度合いにより、から拭き、水拭き、洗剤拭きを区別する。

・利用者の身体状況に応じて、できることを行ってもらう。

・利用者に参加してもらう場合は、転倒や無理な身体の使い方をしないように注意する。

・掃除が終わったら、ごみを決められた方法で分別する。

・地域のルールに従ってごみ出しをする。

 

●ごみ出し

 

利用者がごみを出せない原因には、作業が苦手、ごみの出し方や収集日がわからない、ごみを運ぶのが困難、などがあります。できるだけ利用者が主体的に行えるよう、原因に応じた工夫をします。

 

また、性格的なことなどから「捨てられない」ことも原因となっています。利用者の価値観を尊重しながら、納得して捨てられるように支援します。

 

●ハウスダスト

 

近年、ハウスダスト(住宅内の塵やほこり)に含まれるカビやダニ、花粉などが問題となり、アレルギー性疾患の原因となっています。

 

カビ・ダニともに、適度な温度と湿度、人のフケなどの栄養分があることが発生条件となっています。

 

最近の住宅の機密性の向上や、暖房、加湿器の使用が増加の原因と考えられています。

丁寧な掃除と十分な換気を行い、ダニの除去には直射日光に当てることが有効です。

 

◆裁縫

 

高齢者は身の回りのものに愛着を持ち使い続けたいという気持ちがある、身だしなみを整え社会性を保つ、転倒などの危険防止や動作の安全を確保する、などのことから、裁縫も重要な支援のひとつです。

 

裁縫も他の支援と同様、利用者ができる場合は行ってもらい、利用者の生活習慣や価値観を尊重して、主体的に参加できるように支援します。

 

ズボンなどのウエストのゴムの緩みや裾のほつれは、転倒などにつながり危険です。定期的に確認し、利用者からの希望がなくても、ゴムの交換、裾落ちの補修などを行います。

 

裁縫の支援は、以下のような手順で行います。

 

・衣類の素材と破損状況に応じた補修の方法を選び、利用者に確認する。

・必要な針や糸を準備する。

・用途に合わせた縫い方で補修する。

・利用者が行う場合、必要に応じて針に糸を通すなどの援助を行う。

・針などが紛失していないかを確認し、後片づけを行う。

 

縫い方には、以下のようなものがあります。

並縫い:しつけや仮縫い

半返し縫い:重ねた布を丈夫に縫い合わせる

本返し縫い:ミシンの代わりなどに用いる一番丈夫な縫い方

かがり縫い:ほつれや破れた部分を綴じる まつり縫い:ズボンの裾を留めるときに用いる

 

自立に向けた家事の介護2

(4)家事の介助の技法2

 

◆洗濯

 

現在では、ほとんどの被服製品が家庭で洗濯することができるようになりましたが、様々な化学繊維の普及や、被服製品の化学処理の方法が開発され、以前より洗剤と繊維の適合や洗剤の量などに注意が必要になっています。

 

また、化学処理された繊維によっては、刺激性接触皮膚炎やアレルギー性接触皮膚炎などの衣料障害につながることもあり、注意が必要です。

 

介護職は、被服素材や洗濯の方法、洗剤の種類などの正しい知識を持ち、利用者の自己決定と自立支援に配慮しながら、支援を行うことが大切です。

 

①洗濯の方法

 

洗濯の方法には、手洗いと洗濯機洗い、湿式洗濯と乾式洗濯(ドライクリーニング)があります。

 

湿式洗濯は水を使う、通常家庭で洗濯機を使って行う方法です。

乾式洗濯は水を使わず、有機溶剤で洗濯します。毛や絹など水分を含むと縮んだり型崩れしやすい衣類の洗濯に適しています。

 

洗剤の主成分は界面活性剤で、汚れになじみやすい親油基と水になじみやすい親水基からなり、汚れを繊維から引き離す働きをしています。

 

漂白剤には、酸化型と還元型があり、酸化型には塩素系漂白剤と酸素系漂白剤があります。

酸素系漂白剤は、効力はあまり高くありませんが、色柄ものにも使用できます。

塩素系漂白剤は、効力が強く殺菌にも使用しますが、布を傷めやすく、絹や毛には使用できません。

還元型の洗剤は、酸化した鉄さびなども落とすことができ、金属汚れや塩素系漂白剤によって黄ばんだものを漂白することができます。基本的には白ものの衣類に使用します。

 

洗濯の支援を行う際は、以下のような点に配慮します。

 

・便や嘔吐物など、汚物で汚染しているものは、少量でも別に洗濯する。

・汚れの箇所や汚れ方、汚れの種類を確認する。

・洗剤は、適合するものを指示された量で使用する。

・繊維の種類によって、自然乾燥か乾燥機を使用するかを決める。

・乾燥機を使う場合は、乾燥時間と温度を調節する。

・できるだけ利用者と一緒に行い、利用者の身体機能、認知機能、感覚機能に合わせた方法を工夫する。

・利用者の意向や習慣等に配慮する。

・選択場所や物干し場の環境を利用者が使いやすいように整備する。

 

②アイロン

 

アイロンをかける際は、衣類に表示された温度で行います。

 

主な繊維に適した温度は、以下のとおりです。

・高温:綿、麻

・中温:毛、絹、レーヨン、キュプラ

・低温:ポリエステル、アセテート、ナイロン、アクリル

 

③しみ抜き

 

衣類にしみがついてしまった場合は、できるだけ早くしみ抜きを行います。

 

しみ抜きは、衣類を裏返し、しみのついた部分を下敷き布などの上に載せて水や薬剤をつけたガーゼなどで叩くようにし、しみを下敷き布に移すように行います。

 

しみのついた部分をこすって拡げないようにし、薬剤を使う場合は、目立たない部分で試してから行います。

 

基本的に、水溶性のしみは水または温水を使い、油性のしみはベンジンを使います。

水溶性:しょうゆ、ソース、紅茶、ジュース、血液など

油性:えり垢、口紅、クレヨン、ボールペン、チョコレートなど

自立に向けた家事の介護1

(1)家事の意義・目的

 

家事は、生活する上で基本となる行為であり、そこで生活する人の価値観や生活習慣が反映されています。専門職としての家事を行うにあたっては、単に技術やサービスの提供に留めるのではなく、利用者本人や家族のニーズに対応し、「その人らしい生活」が送れるように支援します。

 

介護保険制度における家事支援のサービスは、主に(介護予防)訪問介護における生活援助として提供されます。

これは、利用者本人ができない行為で、「直接本人の援助」に該当する行為を代行する支援になりますので、「商品の販売・農作業等生業の援助的な行為l「直接本人の日常生活に属しないと判断される行為」は生活援助に含まれません。

 

(2)家事に関する利用者のアセスメント

 

利用者の家事支援に関するアセスメントのポイントは、以下のとおりです。

 

・身体的側面

疾患の状態、既往歴、体調の変化

移乗・移動等のADLの状態

感覚器官の状態

生活のリズム

 

・精神的側面

家事の理解などの認知機能

家事に関する考えや希望、生活歴、習慣など

本人の意欲の有無

生活や家事へのこだわり

 

・環境的側面

広さ、和室洋室、1階2階など物理的な住まいの環境

利用者・家族の生活動線

家事に関する用具の状態

福祉用具

家族の有無、家事に関する能力・時間等

近隣との関係 経済状況

 

(3)家事に参加することを支える介護

 

家事は、利用者がそれまでの生活の中で培ってきたものであるため、家事のプロセスをアセスメントしていくと、利用者にできること発見できると思われます。

それが、利用者が家事に参加する機会となり、生活への意欲を取り戻すきっかけとなります。

 

介護従事者は、利用者が持っている能力を活用できるよう家事の方法を工夫し、利用者の意欲を引き出すことで、生活の活性化につながるよう支援することが大切です。

 

(4)家事の介助の技法1

 

◆調理

 

調理は、生命や健康を維持するために特に重要な食事に関する支援であり、介護従事者は、必要な栄養が摂取できること、安全に楽しく食事ができることのほか、利用者に意欲を持たせ、生活の質の向上や自立につながるよう支援することが必要です。

 

調理・食事の行為のプロセスは、①メニューの決定、②食材・調理器具の準備、③下ごしらえ、④加熱調理・味付け、⑤配膳、⑥食事(介助)、⑦下膳、となっています。

 

介護従事者は、利用者の状況を十分に把握し、利用者の疾患や服薬状況、その日の体調などによって必要となる専門的対応を行うほか、生活習慣や嗜好に配慮するとともに、利用者が主体的に関われるよう支援します。

 

調理支援における主なポイントは、以下のとおりです。

 

・利用者の嗜好・希望する食生活に配慮する。

・疾患、その日の体調に合わせた支援を行う。

・栄養バランス、摂取カロリーに配慮する。

・献立は利用者と一緒に考え、旬の食材をとりれる。

・利用者の状態に合わせた食材の形状に調理する。

・味見などで利用者が調理に参加する機会を設ける。

・食欲が増すように盛り付ける ・適温で提供する。

 

◆その他食生活に関する事項

 

①食生活指針

 

2000(平成12)年に文部省(現文部科学省)、厚生省(現厚生労働省)、農林水産省が共同で「食生活指針」を策定しました。

この指針には、食事内容のほか、食の楽しみ、家族のコミュニケーション、日本の伝統的な食文化など、献立計画から廃棄まで、食生活全般にわたる内容が示されています。

 

「食生活指針」を具体化するため、2005(平成17)年に、国民一人ひとりが何をどのくらい食べたらよいかをイラストで示した「食事バランスガイド」が公表されました。

 

②加工食品

 

調理の負担を軽減する手段の一つとして、加工食品の利用が考えられます。

加工食品には、味噌・醤油・納豆・ヨーグルトなどの発酵食品、冷凍食品、レトルト食品、フリーズドライ食品などがあり、嚥下困難者向けのものも販売されています。

 

これらのものを上手く活用して、時間の短縮や食事のレパートリーを増やすことも、家事援助の一つの手段です。

 

③配食サービス

 

全国各地の自治体やボランティア団体、民間企業などで、栄養バランスのとれた食事を定期的に宅配する配食サービスが行われています。

 

買い物や調理が困難な高齢者や介護の必要な人向けに、健康維持や自立生活の継続などを目的としたものですが、定期的に人が訪問するため、独居高齢者の安否確認の手段としても活用されています。

 

④食生活の変化

 

最近では、家庭内の調理の簡素化、個別化が進んでおり、中食、個食、孤食が増加しています。それぞれの意味は以下のとおりです。

 

「中食」とは、市販の惣菜や弁当、ファストフードを買って家で食べること。

「個食」とは、家族が一緒に食事をしていても、それぞれが自分の嗜好に合った別々のものを食べること・

「孤食」とは、家族とは別に一人で食事をすること。

 

自立に向けた排泄の介護3

(5)利用者の状態・状況に応じた介助の留意点

 

排泄障害には、頻尿、尿失禁、便秘、下痢、便失禁などがあります。これらの障害の原因には、原疾患によるもの、薬の副作用によるものもあり、医療職と連携して原因を把握し、適切な治療・ケアを行います。

 

◆頻尿

 

一般的な1日の排尿の回数は、4~6回(就寝時0~1回)といわれています。

頻尿には、明確な回数の定義はありませんが、概ね8回以上(就寝時2回以上)を頻尿といっています。

 

頻尿の原因には、膀胱の炎症や容量の減少、前立腺肥大のほか、精神的な緊張が原因となる神経性頻尿などがあります。

 

◆尿失禁

 

尿失禁とは、「不随意、あるいは無意識な漏れが衛生的、または社会的な問題になった状態」(日本禁制学会)と定義され、様々な原因によって、尿が自分の意思に反して漏れてしまう状態を指します。

 

尿失禁には、その原因によってさまざまな分類がありますが、以下の4つの種類は、試験にもよく出題されますので、覚えておきましょう。

 

①腹圧性尿失禁

女性に多く、骨盤底筋の筋力低下による尿失禁で、くしゃみや咳など、お腹に力が入ったときに尿が漏れてしまいます。

手術による治療法もありますが、骨盤底筋の訓練が有効です。

 

②切迫性尿失禁

男女とも高齢者に多い尿失禁で、脳や神経の問題や膀胱炎、前立腺肥大、骨盤底筋の筋力低下などが原因となり、急に尿意を感じ我慢ができず、失禁してしまいます。通常は、頻尿を伴います。

治療法には薬物療法のほか、膀胱訓練(尿を我慢する訓練)と骨盤底筋訓練を行います。

 

③溢流性(いつりゅうせい)尿失禁

男性に多く、前立腺肥大や前立腺がんなどで尿が出にくい、糖尿病による膀胱の収縮不全などで、排尿困難になり、あふれるように漏れる尿失禁で、常に残尿があります。

治療法には、て尿道を開く手術や薬物療法、残尿を管で抜き取る導尿法などがあります。

 

④機能性尿失禁

排尿機能は正常であっても、それ以外の機能の障害による尿失禁です。例えば、トイレまでの移動が困難などの身体機能の低下や、トイレの場所がわからない、使い方がわからないなど認知機能の低下などが原因となっています。

原因となる機能障害へのアプローチのほか、排泄行為がしやすいように環境を整備する、介護の方法を工夫するなどの対応が考えられます。

 

◆便秘

 

便秘には明確な定義はありませんが、数日に1度程度しか排便がない、量が少ない、便の水分量が少なく硬い、排便困難があるなどの状態を指します。

 

便秘の原因には、以下のようなことが考えられます。

 

・食事摂取量の低下 ・食事の偏り(食物繊維の摂取が少ないなど)

・水分摂取量の低下

・腸の疾患や機能低下

・環境の変化

・活動性の低下(腹筋力の低下)

・便意を抑制すること

 

介護者は、利用者の便意を逃さず、すぐにトイレに行けるように援助し、排便姿勢(腹圧がかけやすい座位)の確保や、安心して排泄できる環境の整備などに留意します。

腹部を温める、腸の走行に沿って「の」の字を描くようにマッサージをするなども便秘解消に効果があります。

 

◆下痢

 

下痢とは、1日の便に含まれる水分量が200ml以上であると定義されていますが、一般には、便の水分量が多く、水または泥状になった状態を指します。

 

下痢の原因には、以下のようことが考えらます。

 

・感染症、食中毒

・炎症

・腸内の異常発酵や腐敗

・神経過敏

 

下痢は、水分や電解質が失われ、体力を消耗します。安静にし、脱水を防ぐために身体に負担の少ない食物や湯冷ましなどの水分を補給します。

 

感染症による下痢の場合は、周囲に拡大しないように感染予防策を講じます。また、下痢が続くようであれば、医療職と連携し、適切な治療が受けられるように支援します。

 

◆便失禁

 

便失禁は、便意が我慢できない、便意に関係なく知らない間に漏れている、トイレに上手に行けないなどにより、無意識または自分の意思に反して便が排泄される状態のことをいいます。

 

疾患によるものや、認知機能の低下など原因は様々ですが、一番大きな原因は、肛門括約筋の機能が低下によるものです。

 

◆その他

 

膀胱留置カテーテルを装着している利用者は、尿路感染症の予防のため、陰部を清潔にするとともに、水分を多めに摂取する、蓄尿バッグを膀胱より下の位置にするなどの対応が必要です。

 

骨盤内手術後や神経因性膀胱炎などで排尿障害のある利用者が、自分で膀胱内にカテーテルを挿入して、一定時間ごとに尿を体外に排出する方法を自己導尿清潔簡潔導尿)といいます。

自己導尿は、尿路感染を予防し、腎機能を保護するための有効な方法とされています。

 

浣腸は、便秘で苦痛がある場合に行い、直腸や結腸を刺激して排便を促す方法です。

市販のディスポーザル浣腸器を用いたグリセリン浣腸は、原則として医行為ではないとされていますが、利用者の状態をよく把握し、医療職と連携をとりながら行うことが必要です。

 

自立に向けた排泄の介護2

(4)安全で的確な排泄の介助の技法

排泄介助では、前出したような一連の動作が安全で快適にできるように心がけます。

また、感染症予防のため、手袋をするなど、衛生面にも注意が必要です。

利用者の羞恥心にも配慮し、トイレ以外の方法で介助をする場合は、プライバシーが確保できるよう援助します。

 

以下、介助方法別の留意点を示します。

 

◆トイレ・ポータブルトイレ

 

・できるだけトイレで排泄したいという利用者の希望を尊重し、手すりの設置や段差解消、照明器具など、利用者に合わせた環境整備を行う。

 

・尿意・便意がなくても安易にオムツ等にはせず、排泄パターンを把握して誘導するなど、できるだけ自立した排泄ができるよう援助する。

 

・排泄後は、利用者のプライバシーに配慮しながら、利用者の体調や排泄物の状態(量・色・においなど)を確認し、異常があれば医療職へ報告する。

 

・トイレ・ポータブルトイレでの排泄では、足底がきちんと床につき、前傾姿勢がとれることが必要です。また、蹴こみ(けこみ:トイレの下の足を引き込むスペース)があると立ち上がりが容易です。

 

・ポータブルトイレは、利用者の身体機能に合ったひじ掛けや背もたれのあるものを選定します。

 

・プラスチック製のポータブルトイレは、軽くて持ち運びはしやすいが、安定性に注意が必要です。

 

・木製で椅子型のポータブルトイレは、重く持ち運びはしにくいが、安定性があり、移乗がしやすい。ベッド脇に設置すれば、立ち上がりの際の支えにもなる。

 

・ペーパーホルダーシは、利用者の使いやすい場所に設置し、トイレットペーパーが片手で切れるよう、カッター部分に重みがあるとよい。

 

・排泄関連の福祉用具として、立ち上がりの困難な利用者には、補高便座や電動式便座昇降機がある。

 

・自分で陰部を拭くことが困難な利用者には、温水洗浄便座が有効です。

 

◆採尿器・差し込み便器

 

・採尿器・差し込み便器は尿意や便意はあるが立位や座位がとれない、夜間便器への移乗介助等ができないなどの際に使用します。

 

・おむつに比べ、排泄物が直接肌に触れている時間が短いため、衛生的で利用者の自立を促します。

 

・採尿器には、身体構造の違いによって、男性用・女性用の区別があります。

 

・男性用の尿器を使用する場合は、できるだけ自分で性器を受尿口に入れてもらい、自分で尿器を持ってもらいます。自分でできない場合は了解を得て介助します。

 

・女性用の尿器を使用する場合は、仰臥位になり、尿器の縁を陰部にしっかり密着させ、尿が飛び散らないように、両ひざを閉じるようにして行います。

 

・自動吸引式集尿器は、センサー付きの受尿部と蓄尿部が分かれており、尿を感知すると高低差がなくても尿を蓄尿部に送ることができます。受尿部には、男性用と女性用があります。

 

・差し込み便器を使用する場合は、男女とも肛門部が便器の中央部にくるようにし、便器の中にトイレットペ―パーを敷きます。腹圧をかけやすくするため、ベッドの背を上げるようにして行います。

 

・男性が差し込み便器を使用する場合、同時に排尿がある場合もあるため、尿器も使用できるようにしておきます。

 

◆おむつ

 

・寝たきりで尿意便意がない場合などに、最後の手段としておむつを使用します。排泄物が直接肌に触れるため、できるだけ早く交換することが大切です。

 

・片麻痺の人のおむつ交換をする際は、患側が下になる時間をできるだけ短くするようにして介助します。

 

・おむつには、布おむつと紙おむつがあり、紙おむつにはパンツタイプ、テープ式、フラット型などさまざまな種類があります。利用者の身体状況を把握し、昼夜で使い分けるなど、適切なものを選定します。

 

・布おむつには、肌触りが下着に近い、洗濯して繰り返し使える、ごみにならないなどの長所がありますが、洗濯等の手間がかかる、重ねて使用するとかさばる、濡れることによる不快感があるなどの欠点もあります。

 

・紙おむつには、種類が豊富で利用者の状態に合わせやすい、濡れても不快感が少ない、手間がかからない、使い捨てで衛生的であるなどの長所がありますが、ごみが出る、経済的負担が大きいなどの欠点もあります。

 

・布おむつを使用する場合、尿漏れを防ぐため、女性は後ろ側、男性は前側を二つ折りにするなどして厚くします。

 

・おむつ交換の介助の際には、使い捨て手袋を使用し、排泄物に直接手が触れないように注意します。

 

・おむつ交換時の清拭用の布は、汚れた面で拭かないよう、面を変えながら行います。また、汚れたおむつ等は、汚れた部分を内側にして丸めて処理します。

 

自立に向けた排泄の介護1

(1)排泄の意義・目的

 

排泄は、体内にある不要な物質を体外に排出することを指しますが、人間の基本となる生理的欲求であり、生命を維持し、健康な生活を送るために大きな意味をもつものです。

 

また、排泄は極めてプライバシーに関わる行為であり、羞恥心を伴います。

介護者は、利用者の心理面にも配慮し、利用者の生活リズムや習慣を尊重した安全で安心感を与えられるよう援助します。

福祉用具などを活用し、利用者に恥ずかしい思いをさせないよう、環境を整えることも有効です。

 

排泄行為の自立は、社会的自立につながりますが、失禁から安易にオムツをしようするなど不適切な排泄介護を行うことが、利用者の意欲を低下させ、社会的活動が不活発になったり、廃用諸侯群を招いたりします。

 

(2)排泄に関する利用者のアセスメント

 

排泄介助を適切に行うためには、利用者の排泄に関するADLの状況のほか、習慣や価値観、などを把握する必要があります。以下に排泄に関するアセスメントのポイントを示します。

 

●身体的側面

・疾患の状態、既往歴、服薬状況

・ 尿意・便意の有無、

・移乗・移動、着脱等のADLの状態

・食事、水分の摂取状況

 

●精神的側面

・トイレの場所や排泄行為の理解などの認知機能

・コミュニケーションが可能か

・排泄に関する考えや希望、排泄習慣など

・ 本人の意欲、羞恥心、遠慮、介護の拒否の有無など

 

●環境的側面

・トイレの場所、移動時の障害物の有無など

・プライバシーの保護

・洋式・和式、手すりの設置など利用しやすいか

・介助可能な広さがあるか

・介護者が常にいるか、いない場合の時間帯はいつか

・介護者の技術や排泄に関する知識

 

(3)気持ちよい排泄を支える介護

 

利用者の尊厳が保持され、その人に合った方法で排泄介助を行うために、以下のような点に留意します。

 

・介護側の都合に合わせた介助ではなく、利用者の排泄リズム・習慣に合わせた介助を行う。

・羞恥心を与えないよう、言葉遣いや態度に注意する。

・利用者のプライバシーに配慮し、安全に動作ができる環境を整える。

・残存能力を活用し、利用者の自立度に応じた介助を行う(安易にオムツやポータブルトイレなどを使用しない)。

・清潔を保持し、感染症等に注意する。

・排泄物を確認し、異常があれば医療職に報告する。

 

排泄の行為は、以下のような一連の動作で行われます。

排泄のコントロールがうまくできなくなったときは、どのような原因で、どの部分ができないかを把握し、必要な援助方法を導き出します。

 

① 尿意・便意を感じる

② 起居動作、およびトイレまで移動、ドアを開ける

③ トイレ、便器を認識する

④ 衣服を脱ぐ

⑤ 便器に座る(①~⑤の間、排泄を我慢する)

⑥ 腹圧をかけ、排尿・排便をする

⑦ トイレットペーパーで拭く、水を流す

⑧ 衣服を着る、手を洗う

⑨ 他の場所へ移動する

 

自立に向けた入浴・清潔保持の介護2

(4)安全で的確な入浴・清潔保持の介助の技法

 

◆入浴

 

入浴介助の方法・注意点については、前出の入浴介助の留意点とほぼ同様です。

 

ここでは、入浴の作用、浴槽について確認しておきます。

 

入浴には、3大作用といわれる「温熱作用」「静水圧作用」、「浮力作用」があります。

 

・温熱作用

温熱作用は、お湯の熱による作用で、血管拡張による血行促進によって組織への酸素供給を増加させる効果があります。

ただし、42℃以上の高温浴では、交感神経が刺激され、心拍数、血圧の上昇がみられるため、高齢者や心機能の低下している人には注意が必要です。

微温浴(37~39℃)では、副交感神経が刺激されて、リラックスして入浴がでます。

 

・静水圧作用

静水圧とは、浴槽の中で身体にかかる水圧のことをいいます。

静水圧によって静脈が圧迫され、静脈還流が増加し血圧や心拍出量が増加します。

肩までつかる全身浴では、心臓や肺に負担がかかりますので、半身浴の方が安全に入浴できます。 また、浴槽から急に立ち上がると、静水圧がなくなり、失神やめまいが起こる場合があります。

 

・浮力作用

浴槽の中で体重は浮力の作用によって普段の9分の1程になります。そのため、体重を支えている筋肉や関節への負担が少なくなり、普段動かしにくいところも動かしやすくなります。

ただし、浮力によって身休が浮いてしまい、溺水につながることがありますので、注意が必要です。

 

浴槽には様々なタイプがありますが、主に「和式」「洋式」「和洋折衷」の3種類があります。

 

・和式浴槽

深くて狭いため、足を曲げて入る。洋式に比べて静水圧がかかるため、心疾患のある人にはあまり向いていないが、背に当たる部分が直角に近いので、立ち上がりはしやすい。

 

・洋式浴槽

浅めで足を伸ばして入れるため、楽に出入りができ、負担が少なくゆったりと入浴できる。身体が浮きやすく、姿勢が不安定になりやすいという欠点もある。

 

・和洋折衷式浴槽

和式と様式の中間にあたるもので、両者の長所を合わせた浴槽である。

 

◆シャワー浴

 

疾患や身体的状況により、入浴が困難な場合や、汚れをすぐに落としたい場合などにシャワー浴を行います。

 

身体にあまり負担をかけずに清潔を保持できる反面、皮膚の表面しか温まらず、入浴よりも気化熱による皮膚の温度が低下しやすいという欠点があります。

 

浴室を暖かくし、終了後はすぐに乾いたタオルで身体を拭くなどの配慮が泌要です。

 

◆部分浴(足浴・手浴)

 

疾患や身体的状況により、入浴ができない場合は、足浴、手浴の部分浴や洗髪、陰部洗浄を行います。

 

①足浴

足浴は、足を清潔にするだけでなく、下肢全体を湯につけることによって、血液の循環が良くなり、身体が温まってリラックスできるとともに、安眠を促す効果もあります。

不必要な露出は避けて、微温(37~39℃)で行うようにします。

 

②手浴

手浴は、手指の拘縮などで汚れが溜まりやすい場合などに効果があります。

こまめに手浴を行うことによって、清潔が保持できるほか、拘縮の予防や症状の緩和などにもつながります。

 

③洗髪

洗髪には、頭皮と髪の毛についた汗や皮脂、汚れなどを取り除くとともに、頭皮を刺激して爽快感を与える目的があります。

洗髪を行う際は、安楽な体位で行い、頭部を傷つけないよう、指の腹で頭皮をもむようにして行います。

寝たきりなどで入浴できない場合は、福祉用具を使い、ベッド上で行うこともできます。また、湯を使わずに使用できるドライシャンプーも様々な種類がありますので、利用者の状態に合わせて洗髪の方法や用具を選択します。

 

④陰部洗浄

陰部は、尿や便によって汚染されやすく、感染症や悪臭の原因になります。

利用者の羞恥心に配慮し、こまめに行うようにします。女性の場合は、陰部への感染予防のため、前から後ろに向けて洗い流します。

 

◆清拭

 

清拭は、身体状況等により、入浴できない場合に代わりに行われることが多く、全身清拭と部分清拭があります。

皮膚の汚れを取り除き、清潔を保つことのほか、血行や新陳代謝を促し、爽快感を得る効果もあります。

 

清拭における注意点等は、以下のとおりです。

 

・できるだけ、日中の暖かい時間帯に行うなど、室温に注意する。

・不必要な露出を避け、必要に応じてタオル等で保温する。

・平均した力で、滑らかに拭き、血行を促す。 ・四肢は末梢から中枢に向けて、筋肉の走行に沿って拭く。

・腋下などの発汗しやすい部分や褥瘡になりやすい背部や仙骨部、臀部などは毎日丁寧に拭く。

・片麻痺のある利用者の背部の清拭では、健側を下にして楽な姿勢で行う。

・腹部の清拭は、腸の走行に沿って「の」の字に拭く。

・目は、手を清潔にしてから、目頭から目尻に向けて拭く。同じ面で拭かないようにする。

 

(5)利用者の状態・状況に応じた介助の留意点

 

入浴の介助は、利用者の尊厳やプライバシーに配慮しながら、その人の状態に合わせて、適切な方法で行います。

 

・認知症の高齢者は、入浴を拒否することが多々あります。

入浴行為自体がわからなかったり、入浴の方法がわからないなど、原因は様々ですが、できるだけ原因を突き止めて対応するようにします。原因がわからない場合でも、時間を空けて声をかけるなど、入浴できるよう工夫して支援します。

 

・入浴中の事故は、冬季に集中しています。脱衣所と浴室の温度差を少なくし、ヒートショックを受けないように配慮します。特に高血圧の人には注意が必要です。また、低血圧の人は、起立性低血圧にも注意が必要です。

 

・ストーマを装着している人の場合、ストーマを外して入浴しても、腹腔内圧が風呂の水圧よりも高いため、湯が体内に入ることはありません。

 

自立に向けた入浴・清潔保持の介護1

(1)入浴の意義と目的

 

入浴や清拭には、生理的・心理的・社会的効果があります。身体機能の低下や認知症などで、自力での清潔保持が難しくなっても、できるだけ本人の力を活用しながら、清潔を保つための援助を行いましょう。

 

入浴や清拭には以下のような効果があります。

 

・身体の清潔保持ができ、感染予防につながる

・血行を促進し、新陳代謝を促すことにより、傷や褥瘡などの回復につながる

・適度な体力の消耗やリラックスすることにより、安眠をもたらす

・保温効果や疲労回復により 食欲増進、ストレス解消など精神的に活性化させる効果がある

・胃腸の働きが活発になり、排便を促す

・身体が清潔になり体臭を防ぐことにより、よい対人関係の形成につながる

 

このほか、入浴時に温まった四肢を動かすことによって、固まった関節可動域を広げるリハビリテーションの効果もあります。

 

(2)入浴に関する利用者のアセスメント

 

入浴や清拭は、利用者の全身の状態が観察できる機会であるとともに、気分が爽快になり、コミュニケーションをとるにもよい機会となりますが、体力の消耗が大きいうえ、火傷や溺水、転倒などの危険性やプライバシーの問題も存在します。

 

入浴や清拭の介助を行う際は、利用者の状態をよく把握し、適切な方法や手順で援助を行う必要があります。

入浴や清拭に関するアセスメントでは以下のような点に留意します。

 

・健康状態

既往歴や現疾患、皮膚の状態、感染症、入浴時のバイタルサイン、服薬状況など

 

・身体的側面

麻痺・拘縮などの障害、移動・移乗の状態、感覚機能の状態など

 

・精神的側面

認知機能の状態、意欲、気分の状態など

 

・環境的側面

入浴場所の状態、介護者の状態、人間関係、緊急時の体制など

 

・個人的側面

生活習慣、清潔に関する価値観、経済状況など

 

(3)爽快感・安楽を支える介護

 

入浴の介助を行う際は、安全で楽しく入浴できるように、環境面や介助の方法に配慮する必要があります。

 

また、利用者の残存機能を活かし、できるだけ自分で行ってもらうとともに、プライバシーや羞恥心に配慮することが求められます。

 

入浴の介助では、以下のような点に留意します。

 

・入浴の前後に健康状態を確認する。

バイタルサインや皮膚の状態、表情など。異常がみられる場合は入浴を中止する。

 

・脱衣室、浴室を暖かくしておく

高齢者は、皮膚感覚や体温調節機能が低下しているため、ヒートショック(急激な温度の変化による身体の変化)をおこしやすい。

 

・湯温を確認する。

42℃以上では、血圧の上昇がみられるため、39~41℃(中温)以下が望ましい。

 

・石鹸、タオルなどの入浴用品は安全で使いやすい場所に置く。

転倒防止のため、安全な場所に置き、床のぬめりなどにも注意する。

 

・排泄は、入浴前に済ませておく。

 

・シャワーやかけ湯をする場合は、心臓から遠い末梢から中枢に向けて行う。

自分の手で湯温を確認してから行う。片麻痺がある場合は、温度が確認できる健側から行う。

 

・浴槽に入る時間は、5~10分程度にする。

呼吸器系、循環器系の疾患がある場合は特に注意をする。

 

・浴槽内での姿勢に注意する。

浴槽内では身体が浮き、バランスをくずしやすい。肩を支えるなどで頭が沈まないようにする

 

。 ・安全に入浴、洗身の介助を行う。

残存機能を活用し、介護者が安全に介助できるよう、シャワーチェアなどの福祉用具を活用する、ボディメカニクスを活用するなど。

 

・入浴中、入浴後の心身の状態を確認する。

入浴は体力を消耗しやすい。異常がある場合は、入浴を中止し、医療職に報告する。

 

・入浴後は丁寧に水分を拭き取る。

 

・水分補給をする。

十分な休息をとるとともに、失われた水分を補給する。

 

事故や体調の悪化が見られたときには、以下のように対応します。

 

・体調の悪化がみられたときは入浴を中止し、ベンチなど平らなところで安静にして医療職に報告する。

 

・溺水した場合は、すぐに栓を抜いて、利用者の気道を確保しながら浴槽から引き出す。

 

・めまいを起こした場合は、浴槽から出して、仰臥位で安静にする。

 

・痙攣が起こった場合は、浴槽から出して、楽な姿勢にする。痙攣が数分以上続く場合は、救急搬送を要請する。

 

・熱傷(やけど)を負った場合は、すぐに患部を冷水で冷やす。熱傷の範囲が広い場合は、救急搬送を要請する。

 

自立に向けた食事の介護2

(5)利用者の状態・状況に応じた介助の留意点

 

●嚥下障害のある人の食事の介助

 

食事をするという認識をしてから、食べ物を飲み込むまでは、以下のような過程を経て行われます。

 

①先行期

食物が口に入る前に、その形や量、質などを認識する。

②準備期

食物を咀嚼し、唾液と混ぜて、飲み込みやすい形状(食塊)にする。

③口腔期

舌の運動によって、食塊を口腔から咽頭へ送り出す時期

④咽頭期

食塊を咽頭から食道へ送る時期  このとき、軟口蓋が鼻腔をふさぎ、次に喉頭蓋が気管をふさいで食物が気管に入るのを防ぐ

⑤食道期

食塊を食道の入口から胃へ送りだす時期、下部食道括約筋により、胃からの逆流を防いでいる

 

誤嚥は、食物を咀嚼してから食道へ送るための一連の動作がうまくできなくなることで起こります。

誤嚥しにくい食べ物として、プリン、ヨーグルト、とろろ状のものやかゆ状、ポタージュ状のものなどが挙げられます。

固いものや餅・海藻などの粘着性の強いもの、パサパサしたものや水分の多いもの、刻み食など食塊を作りにくいものは誤嚥しやすいとされています。また、豆やこんにゃくなども喉につまらせやすいので注意が必要です。

ゼリー状にする、とろみをつけるなど、誤嚥しにくい状態にして提供します。

この他、酸味や辛みの強いものや熱すぎるものなどもむせやすいので注意が必要です。

 

誤嚥しにくくするためには、座位をとり、やや前かがみで顎を引いた姿勢がよいとされています。高い位置からの介助では、利用者の目線が上がり、顎も上がってしまうので、誤嚥しやすくなります。

 

嚥下障害のある人への食事介助では、以下のような注意が必要です。

 

①意識がしっかりしているときに食事をする

②一口量を少なくして食べ物を口腔の奥でなく舌の上にのせる

③食べ物を口に入れたら口を閉じてもらい、首を前に曲げるようにして飲み込む

④利用者のペースに合わせ、ゆっくりと行う

⑤利用者の状態を観察し、危険を感じたらすぐに中止し、様子をみる

 

●食事療法が必要な人の食事介助

 

糖尿病の利用者の場合は、糖質・脂質のとりすぎを避け、指示されたカロリー摂取量を守り、バランスのとれた食事を摂ることが大切です。

 

高血圧の利用者の場合は、塩分の制限が必要です、高血圧治療ガイドライン2009年版では、高血圧患者の塩分摂取量の目標を1日6g未満としています。

 

●視覚機能が低下している人の食事の介助

 

視覚障害者に対しては、テーブルの上を時計の文字盤にたとえ(手前が6時、向い側が12時)るクロック・ポジションを利用して食品の位置を知らせます。

 

脳の障害などにより、見えない範囲がある場合は、介護従事者は見えない側を補助し、見えない部分に熱いものなどを置かないように注意します。

 

●運動機能が低下している人の食事の介助

 

片麻痺などで上肢の機能に障害がある人には、使いやすい食器や自助具を使って、できるだけ自分で食べられるよう支援します。

片麻痺のある利用者への食事介助では、健側の口角の横か下から食物を入れるようにします。

 

●脱水の予防

 

脱水とは、水分や電解質が不足した状態のことで、口腔や舌、皮膚が乾燥し、頭痛や吐き気、痙攣などで、生命にかかわる場合もあります。

高齢になると、身体の水分量が減少する上、喉の渇きを感じにくくなったり、排尿を気にして水分摂取を制限したりするため、脱水症状に陥りやすくなります。

人体の約60%は水分で、1日に約2500ml(食事等から1000ml+水分として1500ml)の水分摂取が必要とされています。

介護従事者は、水分摂取量の他、皮膚や口唇の乾燥、下痢や便秘、尿量などを観察することが大切です。

 

(6)他の職種の役割と協働

 

●医師、看護師

食事の状況は、利用者の健康状態と密接な関係があります。介護従事者は、利用者の食欲や食事・水分の摂取量、食事の仕方などを観察し、体重減少や嘔吐など、いつもと違う状況があれば、速やかに医療関係者に報告します。

 

●歯科医師、歯科衛生士

義歯の不具合や口腔内の状態が悪化し、口腔機能が低下している場合は、食事摂取に悪影響を与えます。歯科医師や歯科衛生士などと連携し、口腔機能が改善するよう支援します。

 

●栄養士・調理師

食欲が低下している、嚥下状態が悪化している、治療食が必要であるなど、利用者の状態に合わせた食事が提供できるよう、栄養士・調理師などと情報を共有することが大切です。

 

自立に向けた食事の介護1

(1)食事の意義と目的

 

食事は、必要な栄養素を摂取し、身体の健康を維持・増進することのほか、利用者の生活を楽しくし、生活の質を向上させるものであることが大切です。

 

そのためには、利用者の生活歴や好み、文化的背景などの食の嗜好性を尊重し、利用者の状態に応じた食事形態や食べるための道具・食器などに工夫をして、利用者が自分の意思でおいしく食べられるよう支援することが大切です。

 

(2)食事に関する利用者のアセスメント

 

食事の介護に関するアセスメントでは、利用者の身体的な側面だけでなく、精神的側面や環境にも着目し、利用者の状態を総合的に把握する必要があります。

 

主な観察ポイントには、以下のようなことがあげられます。

 

身体的側面

・食事にかかわる身体部分に麻痺・拘縮・筋力低下はないか。

・感覚機能に障害はないか。

・消化器・口腔内の状態。

・摂食・嚥下の動作は可能か

・食事の場所までの移動ができるか

・座位は可能か、

 

精神的側面

・食事に関する意欲はあるか。

・認知機能の低下はないか。

・料理や味付けに好みはあるか。

・食事制限などのコントロールはできるか。

・食事に関するコミュニケーションはとれるか。

 

環境的側面

・食事をする場所の状況。

・一緒に食事をする人はいるか、

介護者はいるか。

・経済状態はどうか。

 

(3)「おいしく食べる」ことを支える介護

 

●食事の環境づくり

 

利用者が食事をおいしく安全に楽しむことができるためには、環境を整え、適切に準備をしておくことが大切です。主な準備としては、以下のようなものがあげられます。

 

①食事の前に排泄を済ませる。

 

②食事場所を整える

寝る場所と食事をする場所を別にすることを「寝食分離」といいます。座位がとれる場合は、できるだけベッドから離れて食事ができるよう支援します。

 

③食事をとりやすい姿勢にする

食事時のいすは、足が床について安定した姿勢がとれる高さにし、テーブルは、肘が楽に置ける程度の高さにします。

やむを得ずベッド上で食事をする場合でも、できるだけ食事にふさわしい場所にするよう支援します。

また、誤嚥を防ぐため、30度くらいにベッドを起こして頸部を前屈させるようにします。

片麻痺のある場合は、健側をやや下にした側臥位にし、健側から介助を行うようにします。

 

④食事をとる体制を整える

手や口腔内(食前の洗口は口中の粘りを取り食欲を増加させます)を清潔にします。

義歯があるときはきちんと装着し、必要に応じてナプキンやエプロンを用意します。

 

(4)安全で的確な食事介助の方法

 

食事中・食後の介助は、以下のような点に注意して行います。

 

・介護者は、利用者と同じ高さになるようにいすなどに座り、食欲が出るように言葉をかけます。

・最初は、水分で口の中をうるおし唾液の分泌を促すよう、汁物を薦めます。

・利用者のペースに合わせて、嚥下するのを確認しながら、一口ずつ口に運びます。

・流動食は、利用者の口角から注ぎます。

・片麻痺がある場合は、利用者の健側に座り、健側の口角に下か横から食べ物を入れると誤嚥しにくくなります(上方向からでは誤嚥しやすい)。

・低栄養や脱水を防止するため、食事や水分の摂取量を確認します。

・食後はお茶などを勧めて、口の中をすすぐと同時に食事が終了した雰囲気を出します。

・歯磨き、または洗口(含嗽)を行い、口の中を清潔にします。

・消化を助けるために、食後30分程度は安楽な姿勢を保ちます。

 

自立に向けた移動の介護2

(5)安全で的確な移動・移乗の介護の技法2

 

●移乗の介助

 

ベッドから車いす、車いすから自動車など、移乗の介助を行う際には、利用者・介護従事者の両方にとって、負担が少なく安全である必要があります。そのためには、ボディメカニクスを活用することが重要です。

 

ボディメカニクスを活用した移乗の介護では、支持基底面を広くとり、重心が基底面の中に入るようにします。 支持基底面とは、両足で立った場合の左右の足とその間の面のことです。つまり足を拡げれば指示基底面は広くなりますし、足をそろえれば指示基底面は狭くなります。

指示基底面を広くとり重心を低くすると、安定して利用者を支えることができます。

 

これとは逆に利用者が立ち上がる場合は、指示基底面を小さくし、前かがみになって重心を指示基底面の外に出してもらいます。このようにすると、動きがスムーズになり、立ち上がりやすくなります。

 

利用者が片麻痺の場合は、健側を活用できるよう、車いすを20~30度の角度で健側につけ、介護従事者は麻痺側を支え、保護します。 車いすからベッドに移乗する場合は、ベッドが健側になるように近づきます(健側接近)。

乗るときと降りるときでは逆になりますので注意しましょう。

全介助の場合は、利用者の足の間に介護者の片足を入れ、身体全体を抱えるようにして移乗します。

 

ボディメカニクスの要点をまとめると以下のようになります。

 

・支持基底面積を広くする

介護従事者の足を前後・左右に広くとることで安定する

 

・重心を低くする

膝を曲げて腰を落とすことで安定する

 

・利用者にできる限り接近する

接近することで重心が近づき容易に介護できる

 

・水平に移動する

利用者を持ち上げるのではなく、横に水平移動することで負担が軽減する

 

・てこの原理を使う

肘や膝を支点にして、てこの原理を使うことで負担が軽減する

 

・身体を小さくまとめる

利用者が両手両足を組みできるだけ小さくまとめることによって、摩擦が減り移動しやすくなる

 

・大きな筋群を使う

腕や手先の力だけを使うのではなく、大きな筋肉を使うことで大きな力が出せ効率的である

 

●ベッド上での体位

ギャッジベッドの背上げ機能を利用して座位をとるためには、先に足上げ機能を使用して膝を上げてから背上げ機能を使って上体を起こし、膝の下や両脇にクッションなどを入れることで、ずり落ちせずに安定した座位をとることができます。

 

自分で身体を動かすことが困難な利用者には、安楽な体位を保つことで、身体的なくつろぎや、精神的な安定を得ることができます。

安楽な体位を保つためには、指示基底面を広くし体圧を分散させる、四肢は自然な湾曲が保てるようにする、身体とベッドの間にクッションを入れる、などを行います。

 

仰臥位での褥瘡の好発部位は、仙骨部、肩甲部、後頭部、後肘部、踵部などです。

側臥位では、大転子部、腸骨部、肩関節部、膝関節部、耳介部、踵部など、

座位では、坐骨部、仙骨部、尾骨部、肩甲部、後頭部などです。

 

褥瘡は、同一部位への長時間の圧迫や摩擦による血流循環障害や低栄養、尿失禁などによる皮膚の湿潤が発生原因となります。

はじめに皮膚の発赤が起こり、水泡やびらんへと進み、皮膚・皮下組織の壊死、潰瘍と進行していきます。

 

予防のためには、以下のような方法があげられます。

①最低2時間ごとに体位交換をする(90°側臥位は避け、30°程度にする)

②座位では、床面に足がしっかりとつき、90°座位が保てるようにする

③寝衣・寝具の湿潤を避けて、身体・寝衣・寝具を清潔に保つ

④シーツ・寝衣のしわを作らない、のりづけしない

⑤摩擦を防ぐ

⑥たんぱく質・ビタミンの多い食事を摂り、栄養状態を維持する

 

(6)利用者の状態・状況に応じた移動の介助の留意点

 

●片麻痺のある人の移動の介助

 

利用者に片麻痺がある場合、多くの人は、健側の機能は障害を受けていませんので、全面的に介助するのではなく、健側の機能を活用し、介護従事者は麻痺側を補助するように介助します。 一部介助の場合は、麻痺側に立って麻痺側を支え、保護しながら介助します。

 

片麻痺のある人で、尖足や下垂足などでつま先が上がらず、歩行が困難な人には短下肢装具がよく用いられます。

短下肢装具は、下腿部から足部までの構造になっていて、足関節の動きを制限し尖足にならずに歩きやすくする装具です。

 

●視覚機能が低下している人の移動の介助

 

視覚障害者は、聴覚や触覚を用いて日常生活動作を行っています。

介護従事者は、利用者の聴覚・触覚に情報を与え、周囲の状況がわかるように支援します。

 

視覚障害者が安全に移動できるためには、居住環境の整備が必要です。

段差の解消や手すり、すべり止めの設置、移動する場所に物を置かないなど、整理整頓しておくことも重要です。

 

視覚障害者の手引き歩行はガイドヘルプと呼ばれています。ガイドヘルプは以下の手順で行います。

 

①介護従事者は、利用者が白杖(はくじょう:視覚障碍者の歩行補助具で、杖先で障害物を確認しながら歩行する)を持っていない方の側で、利用者の半歩手前に立つ。

②歩行を始める合図として、介護従事者は声をかけながらした手の甲で利用者の手の甲に触れる。

③歩行時は、利用者に介護従事者の肘の少し上を握ってもらい、半歩手前を歩く。

④介護従事者は、利用者のペースに合わせて状況説明をしながら歩行する。

⑤曲がり角では、いったん立ち止まり、行く方向を説明してから方向を変える。

⑥階段を昇降する際は、手前で階段に対して直角に止まり、状況を説明。利用者の足先が階段に触れたのを確認してからゆっくりと上り下りする。

⑦椅子へ誘導する際は、利用者の手を椅子の背もたれや肘掛などに触れさせる。利用者は自分で椅子の状態を確認してから座る。

 

自立に向けた移動の介護1

(1)移動の意義と目的

 

人が食事、排泄、更衣、入浴などの日常生活動作を行う際に、移動することなくこれらの行為を行うことはできません。

また、移動可能な範囲が広く自立しているほど、生活範囲が広がり、より豊かな生活を送ることができます。

介護従事者は、利用者が安全でできるだけ楽に移動できるよう支援することが大切です。

 

人がベッド上で動かずにいると、筋力は1週間で10~15%、1か月で50%ほど減少します。身体活動や精神活動を行わないことによる廃用症候群を予防し、寝たきりにさせないような支援が必要です。

 

移動などの生活行為の自立を促すためには、身体機能だけに着目するのではなく、移動しやすい環境、意欲や安心感などの心理的な側面も重要です。

 

(2)体位について

 

移動の介護では、利用者の体位が大きく影響します。ここでは、体位の種類と意味を理解しておきましょう。

 

・立位

立っている姿勢 ・椅座位  椅子に腰かけた姿勢 ・端座位  背中をもたれずに、ベッドの端などに腰かけた姿勢

 

・半座位

上半身を45度に起こした姿勢、ファーラー位ともいう(セミファーラー位は15~30度起こした姿勢)

 

・長座位

ベッド上などで足を伸ばして座った姿勢

 

・起座位

机の上にクッションなどを置き、それを抱えるようにうつ伏せにする姿勢  心疾患や喘息発作の場合に、血液循環の負担を軽減し、呼吸を楽にする姿勢

 

・仰臥位

仰向けに寝た姿勢

 

・側臥位

左右のどちらかを下にして横向きに寝ている姿勢

 

・腹臥位  うつ伏せに寝ている姿勢

 

(3)移動に関する利用者のアセスメント

 

移動の介護を行うためには、利用者がどのような状態にあるか、課題や支援方法についてアセスメントします。

ICFの視点に立って、移動という生活機能の中の「活動」に対し、他の生活機能や「健康状態」、「環境因子」「個人因子」がどのように相互作用を及ぼしているかをアセスメントします。

 

麻痺の種類には、以下のようなものがあります。

 

・四肢麻痺

左右の上下肢に麻痺が生じるもの。主な原因疾患は、頸髄損傷、脳性麻痺がある。

 

・対麻痺

両上肢、または両下肢の麻痺をいう。通常は腰髄損傷等による両下肢麻痺をいう。

 

・片麻痺

右または左の半身に麻痺が生じるもの。主な原因疾患は脳血管疾患がある。

 

・その他

四肢のうち1つが麻痺を起している単麻痺、四肢のうち3つが麻痺を起こしている三肢麻痺がある。

 

人間の身体の関節は、一定の範囲内(関節可動域)で動かすことができますが、無理な動きをすると、関節を外したり、骨折することもあります。

 

関節の動きが悪くなった場合、日常生活動作に支障の少ない手足の位置や関節の角度をとる姿勢のことを「良肢位」といいます。移動・移乗に関するアセスメントにおいても、良肢位を確認することが大切です。

 

(4)安全で気兼ねなく動けることを支える介護

 

安全に移動・移乗を行うためには、利用者・介護者の両方にとって安全で安楽な方法であることが必要です。

 

そのためには、利用者の身体の各部分の自然な動きや使い方を理解し、運動力学を応用して合理的な方法で介護を行います。その際、利用者の身体状況に応じて、残存機能を活かしてできるだけ自立できるよう支援することが大切です。

 

ボディメカニクスを活用した介助の方法は、介護者の腰痛防止に有効であるとともに、利用者にとっても安全で楽な方法となります。

 

外出の支援をする際は、介護従事者が外出をスムーズに行える方法を知ることによって、利用者が気兼ねなく外出できるように支援します。

 

そのためには、交通量が少ない、段差が少ないなど移動に支障のない道を選び、トイレやエレベーターなどの設備を確認し、必要に応じて他人の手を借りるなどがポイントになります。

 

(5)安全で的確な移動・移乗の介護の技法1

 

●歩行の介助

 

歩行の介助を行う際のポイントは以下のとおりです。

 

・介護従事者は、歩行パターンの特徴を把握して、利用者の斜め後ろに立ち、利用者のペースに合わせて歩行し、ふらつきや転倒に対応します。

 

・杖歩行をする場合は、健側の手で杖を持ち、杖→患側→健側、または杖と患側を同時に出す→健側の順で歩行します。介護従事者は患側の斜め後ろに立って介助します。

 

・階段の昇降をする場合、昇りは 杖→健側→患側、下りは 杖→患側→健側の順になります。

 

・障害物をまたいで超える場合は、まず杖を障害物の先に出し、患側で障害物をまたぎ、次に健側を出して患側の足に揃えます。

 

・階段を昇る場合だけ、健側が先になり、その他は患側が先です。これだけ覚えておけばほとんど大丈夫です。

 

・杖の長さは、床から大転子部までの長さで、杖をついた時の肘関節の角度が150度前後になる長さのものを使用します。杖先のゴムが減っていないかにも注意します。

 

●車いすの介助

 

車いすは、歩行が困難な人の移動手段として使用しますが、さまざまな生活場面で使用する福祉用具ですので、本人の身体に合った車いすを選ぶことが必要です。

 

利用者の身体に合わない車いすを使用すると、姿勢が悪くなり褥瘡の原因にもなります。股関節、膝関節、足関節がそれぞれ90度になる車いすが適しています。

車いすの座面や背もたれの高さや角度などを、利用者の身体の状態に合わせて調整することをシーティングといいます。

 

車いすでの移動介助のポイントは以下の通りです。

・砂利敷きの場所を通るときは、車いすのキャスター(前輪)を上げる。

砂利やぬかるみなど、通路面の整備が悪い場所では、ティッピングバーを踏みキャスターを上げて通行します。

 

・段差では、段差の手前でキャスターを上げ、前輪が段差に載ったら前進して後輪を載せる。

 

・下り坂では、後ろむきで、介護従事者が身体全体で支えながら、ゆっくりと降りる。

 

・電車に乗るときは、段差と同様の方法で、電車に対して直角で前向きに乗車する。

 

・エスカレーターでは、上りは前向き、下りは後ろ向きでキャスターを上げて乗り、すぐに動けるようにブレーキはかけない。

 

・車いすを止めるときは、必ずブレーキをかける。

 

ベッドから車いすへ移乗するときは、ベッドを車いすの座面と同じ高さに調節し、ベッドの側面に対し、15~30度の角度に車いすを置きます。片麻痺がある場合は、利用者の健側に設置します。

※これはあくまでも原則です。部屋の状態などによっては、正しい位置に車いすが置けない場合があります。実技試験などで慌てることがないよう、理想的な位置に置けなくても安全な介助ができるようにしておきましょう。

自立に向けた身じたくの介護3

(6)利用者の状態・状況に応じた身じたくの介助の留意点

 

●感覚機能が低下している人に対する介助の留意点

 

・視覚や聴覚など、感覚機能が低下している利用者を介助する場合は、残された感覚機能を活用して支援することが大切です。

 

・視覚障害のある利用者の身じたくの介助では、移動する場所の床には物を置かないこと、使用する物品がいつも同じ場所にあること、などが必要です。 利用者にわかるように点字や印をつけておき、置き場所を移動する場合は、必ず本人の確認をとることが必要です。

 

・介護従事者は、危険がないように見守りを行い、必要に応じて介助します。

 

●運動機能が低下している人に対する介助の留意点

・下肢の機能が低下している人は、移動が困難ですので手すりや歩行補助杖、車いすなどで移動しやすいように環境を整備します。  また、立って更衣をすることが困難な場合は、座ったままで着脱できるように支援します。

 

・上肢の機能が低下している人は、身じたくが非常に困難になりますが、ボタンエイドやソックスエイドなどの手指が不自由でも使える補助具を使用して、できるだけ自分で行えるよう支援します。

 

・片麻痺のある人の更衣は、麻痺の状態や可動域を確認し、健側の機能を活用して、できるだけ自分で行えるよう支援します。

 

・片麻痺のある利用者は、半側空間無視(左右どちらかの空間しか認識できない状態、多くは左半側が認識できない)麻痺側に食物残差が停滞して、口腔清掃が適切にできていないこともあります。  片麻痺のある人には、鏡を使うなどして、できるだけ麻痺側を意識してもらうような支援が必要です。

 

・経管栄養の利用者は、口腔機能が低下している場合が多く、口腔ケアを行う際には、誤嚥しないよう、座位や側臥位など姿勢に配慮するとともに、チューブなどに異常がみられる場合は、速やかに医療職に報告し、対処します。

 

●認知・知覚機能が低下している人に対する介助の留意点

 

・認知症などで認知・知覚機能が低下していると、身じたくを行うことの意味がわからなくなったり、気候に合わせて適切な衣類を選択することが困難になったりします。また、介助の意味が理解できずに抵抗する場合もあります。

 

・利用者の意見を聞きながら受容・共感し、安心感を与えるような援助を行い、できるだけふさわしい整容を行うことができるよう支援します。

 

・言葉による説明が困難な場合は、介護従事者が同じ動作を行うなどして、残された能力を活用できるよう援助します。

 

(7)他の職種の役割と連携

 

●医療職との連携

 

・身じたくの介助を決行うときは、利用者の皮膚や口腔、全身状態を観察するよい機会となります。異常を見つけた場合は、早急に医療職に報告して対処します。

 

・身じたくの動作では、思わぬけがや感染、状態が悪化する可能性もあります。日ごろから医療職と連携し、利用者の疾患に関する情報提供やアドバイスを受けておくことが大切です。

 

●理学療法士・作業療法士との連携

 

・理学療法士による身体機能の回復や座位の安定を図るためのリハビリテーションや、作業療法士による身じたくに必要な動作の訓練などは、身じたくの動作を安定して行うために有効な手段です。

 

・介護従事者は、利用者の普段の動作を把握していますので、理学療法士・作業療法士と連携することによって、より効果的に利用者の身じたくに関する動作の自立を促すことが可能です。

 

●介護支援専門員との連携

 

・介護保険制度において、介護支援専門員は、利用者の生活全般を支え、社会参加意欲を高めるようにケアプランを作成します。一方、介護従事者は、利用者の身じたくの動作を通じて社会参加への可能性を把握することが可能です。

 

・介護従事者と介護支援専門員が、ケアカンファレンスなどで、お互いの情報を共有することによって、利用者の身じたくを支援し社会参加を促して、利用者のQOLを高める支援を行うことが可能となります。

 

自立に向けた身じたくの介護2

(4)口腔ケアの介助

 

●口腔ケアの目的

 

口腔機能には、咀嚼・嚥下・発音・呼吸などがあり、口腔ケアを行うことによって、これらの機能の改善や悪化を防止することができます。口腔ケアの目的と効果は、以下の通りです。

・虫歯、歯周病、口腔粘膜疾患などを予防する

・細菌の繁殖を防止し、誤嚥性肺炎や感染症を予防する

・口臭や不快感を除去し、気分を爽快にする

・唾液の分泌を促進し、口腔内の自浄作用の促進や乾燥を防ぐ

・ブラッシングによって、血行をよくする

・味覚を保ち、食欲を増進する

・口腔機能を維持し、嚥下障害等を予防する

 

この他、上肢や手指の機能の維持・向上、生活リズムを作る、対人関係を円滑にして社会参加を促すなど、二次的な効果もあります。

 

●利用者の状況に応じた口腔ケア

 

口腔ケアを実施する際には、歯や歯肉、粘膜、舌などの口腔の状態だけでなく、全身の状態や精神状態などを総合的に把握して行う必要があります。

 

高齢者は、唾液の分泌量が低下し、口腔内が乾燥して細菌が繁殖しやすく(ドライマウス)、口臭や歯肉炎、口内炎の原因となります。経管栄養を行っている場合は、さらに唾液の分泌量が低下しますので、丁寧な口腔ケアが必要です。 また、義歯を使用している場合も、細菌が繁殖しやすくなります。

 

片麻痺の場合は、麻痺側の感覚が鈍く、食べかすが溜まりやすい状態になっているため、麻痺側の洗浄を十分に行います。

 

●基本的な口腔ケアの方法

 

・ブラッシング法

歯ブラシを使用して歯と歯肉のブラッシングを行い、口腔内の清掃を行う方法。口腔内の清掃だけでなく、適切なブラッシングを行うことによって、虫歯や週病、口臭の予防が可能となる。

 

・口腔清拭法

急性期など全身的な衰弱の激しい利用者や口腔内の炎症が激しい利用者など、歯ブラシによる口腔清掃が困難な場合に、スポンジブラシや巻綿糸・綿棒、ガーゼなどを用いて口腔内の清拭を行う方法。口腔清掃に比べて歯垢除去の効果は低いが、誤嚥や口腔内乾燥の防止、口臭予防には安全な方法である。

 

・含嗽(がんそう)法

含嗽剤や水などの液体を口に含み、口をすすいで吐き出すことによって、食物残渣の除去や口腔内の保湿、爽快感を得る方法。  頬を動かすことにより、口腔周囲筋の訓練効果もある。

 

・口腔粘膜の清掃法・マッサージ

口腔粘膜や舌を軟らかい歯ブラシやスポンジブラシ、専用の舌ブラシを用いて清掃する方法。

実施する際は、誤嚥を防止するため、奥から手前に行うことが基本。口腔内が乾燥していると、舌苔の除去が困難となったり、表面を傷つける原因ともなるので、舌の表面を保湿して行う。

 

・義歯の清掃法

義歯は毎食後はずし、義歯用歯ブラシを使い、流水で洗浄する。義歯の変形や摩耗を防ぐため、熱湯や歯磨き剤、漂白剤などは使用しない。  洗浄後は、割れやひずみを防ぐため、水などにつけて蓋つき容器に保管する。

 

(5)衣類に関する介助

 

●衣類着脱の目的

 

衣類着脱の目的は、①気温の変化に対する体温調節、②外部からの刺激から身を守る皮膚の保護、衛生的機能、③日常生活のそれぞれの場面に合わせた快適な生活の維持、④個性を表現し、社会生活への適応機能、などがあります。

利用者の好みや価値観、生活習慣を尊重し、楽しみや生活の張り合いが持てるように支援することが大切です。

 

●衣類の選択

 

衣類を選択する場合は、以下のような点に留意します。

・利用者の好みや生活習慣に配慮し、身体状況や生活の場面に応じた形状や材質のものを選択する。

・汚れが目立つように、淡い色調の衣類を選ぶ。

・下着には、アレルギー反応が少なく、通気性と吸湿性に優れた、綿や絹のものを選ぶ。

・寝たきりの利用者の場合は、褥瘡予防のため背縫いがなく、衣類を自由に動かすことのできる前開きの寝巻が適している。

・上肢の拘縮や痛みがある場合は、伸縮性があり、袖ぐりの大きな衣類を選ぶ。

 

●衣類着脱の介助

 

衣類着脱の介助では、以下のような点に注意します。

・衣類着脱の介助での最も重要なポイントは、残存機能の活用と片麻痺の場合の「脱健着患」です。衣類を着るときは麻痺側から着せ、脱ぐときは健側から脱がせるように介助します。実技とともに試験にはよく出ますので、必ず覚えましょう。

・一部介助を必要とする利用者の場合は、自分で袖を通せるよう肩口を下げるなど、できるだけ自力で着脱ができるよう、利用者の状態に合わせて援助します。たとえ寝たきりであっても、自分でできる範囲を広げるような工夫が必要です。

・部屋を暖め保温を図る他、介護者の手も温めておきます。

・和式の寝巻は、右前(左が上)になるように、紐は縦結びにならないように着せます。

・下着は、体内からの汗や排泄物、血液、吐物などで汚れます。できるだけ毎日着替えるようにして、すぐに洗濯します。のりづけは、皮膚を傷つけたりアレルギーの原因となるため使わないようにし、柔軟剤の使用も皮膚障害を起こす可能性があるので注意します。

・成人が一晩で発汗する汗や不感蒸泄(肺からの呼気や皮膚から自然に蒸発する水分)は約200mlで、ほとんどが寝具に吸収されます。  3~4日に1回程度は、午前10時から午後2時前後の間に日光にあてるようにします。

・靴は、軽くて履きやすく、圧迫感のないものを選びます。車いすの利用者であっても、足の保護のため、外出時には靴を履くようにします。

 

自立に向けた身じたくの介護1

(1)身じたくの意義と目的

 

身支度とは、洗顔、歯磨き、整髪、爪の手入れ、着替え、化粧などのことを指し、外部環境や危険物から身を守る、体温調節、清潔保持などの意義があります。

この他、生活のリズムを作ることや、自己表現の手段となるなど、精神面にも大きく影響します。

 

身支度の介護を行う際には、利用者の個別性を尊重し、「できること」「できるであろうこと」を利用者とともに考え、その人らしい健康な生き方ができるよう、支援することが大切です。

 

(2)身じたくに関する利用者のアセスメント

 

身じたくに関するアセスメントを行う際にもICFの視点に立ち、目的・目標(する活動・したい活動)、現状(している活動)、能力(できる活動)を把握します。

 

また、「身じたく」という行為自体は生活機能の中の「活動」に該当しますが、「心身機能・身体構造」や「参加」、「個人因子」や「環境因子」、「健康状態」とどのようにかかわっているかを総合的に評価することが必要です。

 

(3)整容に関する介護

 

整容の行為の自立には、座位の安定と上肢のスムーズな動きが必要です。どちらかに障害がある場合は一部介助が必要となりますが、利用者の残存機能を活かし、できるところはやってもらいながら介助します。寝たきりや認知機能の障害などで、全介助が必要な場合も、できるだけ利用者がかかわれるように支援します。

 

●洗面の介助

洗面には、顔面の皮脂や汚れを落とし清潔を保持するとともに、血流を促進する効果があり、爽快感をもたらします。また、生活のリズムを整えることにも役立ちます。

洗面台での洗面ができない場合は、熱め(40℃前後)の湯でしぼったハンドタオルを利用者に渡し、できるだけ自分でできるよう促し、拭き残しがないよう声掛けをします。 全介助の場合は、本人の意向を聞きながら行いますが、目や鼻の周囲は皮脂がつきやすいので丁寧に行います。 介助を行う際は、目頭から目尻にかけて行うと、感染予防になります。 洗面後は、必要に応じてローションやクリームを使い、皮膚を保護します。

 

●ひげそり

ひげは、1日に約0.4㎜伸び、日本人の男性では、1日に1回ひげを剃ることが一般的ですが、ひげを伸ばすかどうかや剃る方法は人それぞれ好みが違いますので、できるだけ利用者の希望に沿うようにします。

ひげそりの介助をする場合は、以下の点に注意します。 ・電動ひげそりを使うか、かみそりを使うか、など利用者の好みを聞く。 ・電動ひげそりは、伸びすぎたひげや顔のくぼんだ部分はそりにくいことがある。 ・かみそりを使う場合は、蒸しタオルでひげを柔らかくしてから行い、シェービングクリーム等をひげにつける。 ・ひげそりは、皮膚を伸ばし、傷つけないように細心の注意を払う。 ・電動、手動ともかみそり負けをしやすいので、ひげそり後にはクリーム等で皮膚を保護する。

 

●爪切り

爪は切らずにいると、巻き爪や爪肥厚など変形の原因となり、指先の動作や歩行の障害になったり、皮膚や衣類を傷つけたりすることもあります。また、爪が伸びていると不衛生になり、爪白癬(爪の水虫)の原因にもなります。

高齢者の爪は、もろくて割れやすいため、力を入れすぎず、切り過ぎないことが大切です。また、入浴(指浴・足浴)後や蒸しタオルを当てた後は、爪が柔らかくなり、安全に行うことができます。

足の爪は、まっすぐ横に角を残して切ると巻き爪になりにくくなりますが、手の爪は、角をなくした方が指を使いやすくなります。

爪切りは、介護職にも認められるようになりましたが、爪や皮膚状態に異常が認められる場合は、速やかに医療職に報告する必要があります。

 

●整髪

整髪は、頭髪・頭皮の健康維持の他、気分転換や社会性の維持のために大切な行為です。高齢者や障害のある人は、整髪がおろそかになりやすい傾向にあるので、起床時や入浴後、外出時など、適宜観察し、声をかけるようにします。

整髪の介助は、利用者の意向を聴きながら丁寧に行います。一部介助が必要な場合は、できるだけ利用者に行ってもらい、できない部分を整えます。可能であれば鏡を見てもらい、確認しながら行うようにします。

自立に向けた居住空間の整備2

(4)安全で心地よい生活の場づくり

 

WHO(世界保健機関)では、快適で健康的な居住空間の概念を「快適で健康的な住環境とは、住居が構造的に心地よく、事故による危険性が少なくあたりまえの住生活を送ることができる十分な空間が保障されている環境である」としています。

 

本人の生活習慣を尊重しながら、その時々のADLに適した環境や十分な広さを確保し、安全性の高い住環境を整備することは、利用者のQOLを高め、介護負担の軽減にもつながります。 家族と同居している場合は、利用者のみでなく、家族にとっても快適で生活しやすい環境をつくることが大切です。

 

また、高齢者や障害者は、災害時に避難行動が困難となり、援護が必要になります。できるだけ被害が少なくて済むよう、下記のような対策をとることが必要です。

・カーテンや内装材は不燃材料を使用する。

・大きな家具類は固定し、落下する危険のあるものは高いところに置かない。

・避難路を確保しておく(通行を妨げるものは置かない)。

 

安全で心地よい生活の場をつくるポイントを以下に示します。

 

●居室

・場所は1階が望ましく、風通しや日当たりがよいこと

・トイレ、浴室、洗面所などに近いこと

・食堂や居間に近く、家族とのだんらんがしやすいこと

・良好な室内気候(室内の温度・湿度・気流)を保つ(温度:22℃±2℃、湿度:40~60%、気流:0.5m/秒以下)

・部屋の出入り口に段差がないこと

・適度な照明(200ルクス程度)があること

 

●玄関、廊下、階段

・扉は引き戸が望ましい

・段差を極力少なくする、上がり框(かまち)が高くなく段差がわかりやすいこと

・移動方法に応じたスペースがある   (車いすは直進で80㎝以上、直角に曲がる場合は85㎝以上必要)

・手すりが設置してあること   (太さ28~40㎝、高さ75~80㎝)

・十分な明るさの照明と足元灯があること

・滑りにくい床材であること

・玄関に靴を履くいす等があること

・階段の段差は、15~18㎝、踏面は24㎝以上あること

・階段は勾配ば緩やかで(30~35度)滑り止めがあること

 

●トイレ、浴室

・トイレは居室から近いこと

・プライバシーが保てる空間であること

・ドアは引き戸か外開きまたはアコーディオンカーテンであること、内開きのドアは中で倒れていると開けられない

・鍵が外から開けられること

・洋式トイレで便座の高さが身体に合っていること

・動作がしやすい位置に手すりがあること

・浴室は滑りにくい床材であること

・室温が暖かく脱衣所との温度差がないこと

・浴槽の淵が高くないこと(40㎝程度)

・バスボード、シャワーチェアなどを利用する

 

●設備

・温度や湿度が調整できる設備を設置すること

・火災報知器やガス漏れ警報器を設置すること

・たこ足配線にならないように、十分な数のコンセントを設置すること

 

●介護用ベッド(特殊寝台)

・寝ていることが多い人や身体に障害のある人にとっては、和式の布団よりベッドの方が望ましい

・ベッドの高さは、端座位で足のつく40~45㎝が望ましいが、介護をするには負担の少ない65㎝程度がよい

・介護用ベッドには、背上げ・脚上げ機能、高さ調整機能、それらを組み合わせた機能のついたものがある

・敷き布団はやや硬く吸湿性の高いもの、かけ布団は軽くて保湿性の高いものが適している

・褥瘡予防には、エアマットや除圧マットレスを使用する

 

●衛生的な環境の保持

・新建材や家具などに含まれる化学物質が影響する健康障害に「シックハウス症候群」があり、住宅の高気密化などに伴い増加している。 喘息や皮膚炎などが悪化する場合もあるため、十分な換気が行えるような対策が必要である。

・シックハウスの中で、ハウスダストに含まれるカビやダニによるアレルギー性疾患も増加している。 居室の清掃や、衣類・寝具などを清潔に保つことで、カビやダニが繁殖しないような環境を整備する必要がある。

 

(5)施設での集住の場合の工夫・留意点

 

施設には、様々なタイプのものがありますが、いずれも利用者がそこで生活を営んでいます。施設での生活を支援する場合は、そこが利用者の「暮らしの場」であることを基本に考えなければなりません。

 

施設では、生活習慣や価値観の違う個人が集まり、お互いの暮らしを認め合いながら共同生活をする場所です。かつては集団処遇が当たり前でしたが、現在では、利用者中心の「個別ケア」が基本的な考えとなっています。

 

また近年は、生活単位と介護単位をできるだけ近づけ、10人程度の小規模な集団で生活するユニットケアが主流となってきており、介護保険施設やグループホーム、小規模多機能型施設などで実践されています。

 

施設には、下記のような4種類の空間がありますが、プライベート空間では、他の利用者が立ち入らないような配慮やカーテンや間仕切りを設置するなど、利用者のプライバシーを確保する必要があります。

・プライベート空間  入所者個人の所有物を持ち込み管理する空間。居室・ベッド周辺。

・セミプライベート空間  プライベート空間の外側で、限られた複数の利用者が共同利用する空間、廊下も含む。

・セミパブリック空間  食事やレクリエーションなど、比較的大人数で集団的なプログラムなどを行う空間。

・パブリック空間  地域住民など外部の人にも開かれた空間。地域交流スペースや玄関のラウンジなど。

 

(6)他の職種の役割と協働

 

障害者や高齢者が、住み慣れた地域や家で自立した生活を営むことを支援するには、保健・医療・福祉の様々な専門職や、建築関係の専門職などが連携をとることが重要です。

 

医師、看護師、保健師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護支援専門員などの他、福祉用具専門相談員(福祉用具の選び方や使い方をアドバイスする)、福祉住環境コーディネーター(住環境整備のために必要な改修内容、福祉用具の選択などについてアドバイスする)などの専門職がチームを組んで支援することが有効になります。

 

既存の住宅を高齢者対応住宅にリフォームするための相談・支援を行うことを目的に、市町村によっては、「住宅リフォームヘルパー制度」や「リフォーム相談員」を設けているところもあります。

 

自立に向けた居住空間の整備1

(1)居住空間整備の意義と目的

 

住居の役割には、以下のようなことがあげられます。

①暑さ寒さから身を守り、災害から命を守る

②食事や睡眠、排泄などの生理的欲求を満たす

③家族の人間関係を通して、精神的な安心感をもたらす

④生活の価値観やこだわりなど文化的な欲求を満たす

⑤プライバシーを守る

⑥家族や近隣との社会的交流の場となる

 

居住空間の整備では、福祉用具の活用や利用者の日常生活動作を行いやすくし、転倒や転落などの事故を防止すること、プライバシーを守り、家族との交流や社会参加ができる環境づくりをすることなどが大切です。

 

(2)生活空間と介護

 

居住空間とは人の生活が営まれる場所であり、居宅であっても施設であっても、その人らしく生活ができ、安心できる「居場所」といえる様な空間を整備することが大切です。

 

また、高齢者にとって、住み慣れた地域や家で生活することは、その人の生活史や生活習慣の継続や地域とのかかわりなど、重要な意味をもっています。施設での生活あってもそれまでの生活との継続性が保てるようにすることが大切です。

 

介護を必要とする人の生活空間は、利用者と介護従事者がともに活動しやすく、家族や社会との交流を保てることが求められます。

 

そのためには、生活空間がバリアフリーであり、誰にでも使いやすいユニバーサルデザインに配慮したものであることが望ましいといえます。

 

●バリアフリー

バリアフリーとは、障壁のない環境を意味し、障害を持つ人も健康な人と同様、自由に社会参加ができるようにするという考え方です。

高齢になると、2~3㎝の段差でもつまづきやすく、玄関や部屋の出入り口、浴室などの段差をなくし、手すりなどを付けてバリアフリー化することで、転倒・転落を防止することが重要です。

介護保険制度での、住宅改修や福祉用具貸与なども、バリアフリー化を推進する制度です。

 

●ユニバーサルデザイン

ユニバーサルデザインとは、「すべての人のためのデザイン」という意味で、障害の有無や高齢というだけでなく、文化・言語・国籍や男女の違いにかかわらず、初めからできるだけ多くの人が使えるようにデザインすることです。

「障害者用の」ではなく、「すべての人のため」ということが、バリアフリーとの違いです。

 

ユニバーサルデザインの例としては、丸いドアノブではなくレバー式のドアノブの方が障害者でも障害のない人にも使いやすいものです。また、もともと障害者用に開発された温水洗浄便座もユニバーサルデザインの代表例となっています。

 

ユニバーサルデザインには、以下の7つの原則があります。

①誰でも公平に利用できること

②使う上で自由度が高いこと

③使い方が簡単ですぐわかること

④必要な情報がすぐに理解できること

⑤うっかりミスが危険につながらないデザインであること

⑥無理な姿勢をとることなく,弱い力でも楽に使用できること

⑦利用しやすいスペースと大きさを確保すること

 

(3)居住環境のアセスメント

 

居住環境は、ICFにおける環境因子の中の物的環境に含まれます。物的環境とは、自宅、施設、使用する建物の設計、設備、用具などのことです。

 

居住環境のアセスメントを行う際は、生活史や生活環境、価値観などの個人因子にも注目することが重要であり、環境因子が個人因子と生活機能(心身機能・身体構造、活動、参加)のかかわりの中で、どのような作用を及ぼしているかを評価することが大切です。

 

居住環境のアセスメントのポイントとして、以下のようなものがあげられます。

 

・住宅周囲の環境

災害時に受ける被害、避難経路、避難場所  周辺の道路、建物、日当たり、騒音、外出のしやすさなど

・住宅の構造と間取り

耐震構造、居室や家族のスペース、廊下幅、段差、  利用者の居室の位置(トイレの近く、外出のしやすさなど)

・室内環境と設備

滑りにくい床材、階段のすべり止め、手すりの設置  空調の状態、火災報知機の設置  ドアの状態(引き戸やアコーディオンカーテンなど安全なものか)

・照明

適切な明るさの確保、足元灯

 

 

生活支援2

(4)生活支援とレクリエーション

 

●レクリエーションの目的

 

レクリエーションとは、語源は「RE-CREATE=つくりなおす」という意味ですが、日々の生活を生き生きとしたものに再構築するもの、と捉えることができます。

 

レクリエーションへの参加を通して、利用者の生活機能に働きかけ、生活に楽しみや生きがいを作りだし、質の高い生活を目指して行われるものです。

 

レクリエーションは、単に楽しむことが目的ではなく、生活支援1で述べた日常生活の3つの領域(基礎生活、社会生活、余暇生活)に関わり、利用者自身の選択により、利用者が主体となって行うことによって、生活全体の活性化を図ることが大切です。

例えば基礎生活の領域で、季節の食材をとりいれた食事を提供したり、着る服に彩りを与えたりして、生活そのものを快適にしていくこともレクリエ―ション援助のひとつです。

 

レクリエーションは、生活に楽しみを与えると同時に、レクリエーション療法など、治療的な効果も期待でき、また、身体を動かすことによって筋力が強化され、介護予防の効果もあるといえます。

 

レクリエーション活動を行うに当たっては、①生活の中にレクリエーションを取り入れる(生活のレクリエーション化)、②誰でも楽しめる(障害の種類や程度、高齢、性別などにかかわらず)、③個々のニーズに合った援助を行う、ことが大切です。

 

●レクリエーション援助の技法

 

レクリエーションには個別レクリエーションと集団レクリエーションがあります。

 

個別レクリエーションの援助では、レクリエーションの主体である利用者の個々の状況に応じた計画を立て、最適なプログラムを提供することが大切です。

 

集団レクリエーションは、少人数のグループワークによって行われます。参加者同士の交流が生まれ、参加者の相互作用(グループダイナミクス)が働くことによって、集団としての成長や参加者の社会性の向上につながります。

集団レクリエーションの援助を行う際には、①参加者各々が役割を担えるようにし、集団での活動が適さない人には個別の対応をすること、②複数のプログラムの中から選択できること、③できるだけ同レベルの参加者をそろえること、などにより、レクリエーションの質が高まります。

 

レクリエーション活動における援助者の役割は、どのようなレクリエーションを行うかを利用者が自ら選択し、主体的に参加できるよう支援することです。

利用者が楽しめるということを重視し、利用者のニーズに合っているか、満足できているかなどに留意します。

 

レクリエーションは、社会福祉援助活動のひとつであり、実施にあたっては、レクリエーション活動援助計画を立て、A-PIEプロセスと呼ばれる過程を経て提供されます。

 

A-PIEプロセスとは、他の援助過程とほぼ同様ですが、①A:アセスメント、②P:計画、③I:実施、④E:活動の評価、という過程のことです。

 

(5)生活支援のための福祉用具の活用

 

●福祉用具の定義

 

福祉用具とは、「心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障のある老人又は心身障害者の日常生活上の便宜を図るための用具及びこれらの者の機能訓練のための用具並びに補装具をいう」(福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律)と定義されています。

 

すなわち、日常生活上の便宜を図るための用具、機能訓練のための用具、補装具のことを指し、障害者自立支援法による日常生活用具と補装具、介護保険法による福祉用具貸与と特定福祉用具販売の対象品目が含まれます。

 

●福祉用具の目的と導入時のポイント

 

福祉用具には、利用者の自立支援と介護者の負担軽減という2つの目的があります。

 

利用者は、福祉用具を使用することによって、自分でできることが増え、活動範囲が広がります。

介護者にとっては、利用者が自立することによって介護の量が減少し、福祉用具の使用で、介護者にかかる負担が軽減します。

 

福祉用具導入にあたっては、以下のような視点が重要となります。

 

・利用者の生活動作全体を検討すること

・利用者に適合し、残存機能が活かされているか

・環境との適合を考え、自宅などの使用場所で使用可能か

・介護者にも適合し、使いやすいものであるか

・導入に伴い新たな負担が発生しないか

 

福祉用具導入の流れは以下の通りとなっています。

 

①相談

②アセスメントの上、福祉用具の必要性の判断

③ケアプランの作成

④福祉用具の提供

⑤使用方法の指導

⑥モニタリング

⑦再評価

 

生活支援1

(1)生活の理解

 

生活とは、「生命の維持に不可欠な活動であり、人間として尊厳のある営みが続くこと」と定義されます。

 

人間は社会的な動物であるため、人間の生活には、生物としての営みという側面と、社会的な存在としての側面があり、以下の3つの分類で捉えることができます。

 

①基礎生活

生物としての営みである、食事、排泄、入浴、更衣など、ADL活動。

②社会生活

社会的な営みである、人間関係の維持・構築や、教育、仕事、ボランティア、地域活動などの活動で、IADLを行うことによって実現可能となります。

③余暇生活

自己実現に向けた活動で、趣味、旅行、スポーツ、賭けごと、芸術活動など、生きがいのもてるような活動です。

 

一人ひとりの生活にはそれぞれ違いがあり、利用者本人が主体となって、尊厳のある生活を営むためには、多岐にわたる側面の充実が求められます。

 

自分の価値観に基づいて、自分らしい生活を目指しながら生活していくことを「生活経営」と言います。

 

(2)生活支援とは

 

●生活支援の範囲

 

介護福祉士は、高齢や障害のために日常生活に支障がある人が、その人らしい自立した日常生活を送ることができるよう支援します。

一人ひとりの生活を尊重した支援を行うために、介護福祉士は、利用者の心身の状況に合わせた介護(ADLだけでなく、IADLの向上を目指した介護)を行い、利用者の生活全般にかかわる支援を行うことによって、利用者の生活の自立とQOLの向上を目指していきます。

 

●ICFの視点からの生活支援

 

ICFでは、障害をマイナス要因としてのみとらえるのではなく、「心身機能・身体構造」「活動」「参加」を含む「生活機能」という枠組みでとらえ、「健康状態」との相互作用や「環境因子」「個人因子」という背景との相互作用を重視しています。

つまり、心身機能や身体構造が障害を受けている場合、それと相互に作用する「健康状態」「環境因子」「活動」に対して働きかけを行うということになります。

 

この中の「活動」に関してICFでは、将来どのような活動をしたいかという「する活動」を目標に設定し、その目標に向けて現在行っている「している活動」と持っている能力である「できる活動」をアセスメントします。

その上で、「できない部分を援助する」という考え方でなく、「できる活動」と「している活動」に働きかけ、目標である「する活動」に近づけていくことが重要です。

 

このように、ICFの視点に立った生活支援とは、生活機能を向上させるために、利用者を取り巻く環境や、心身機能・身体構造、活動、参加に働きかけ、利用者のストレングスを活かして、QOLを高めていくよう支援することです。

 

(3)生活支援と介護予防

 

生活機能を向上させる生活支援を行うためには、介護予防の視点が重要です。

 

介護予防とは、

①高齢者が要介護状態となることをできるだけ予防すること、②要介護状態になってもそれ以上悪化しないようにすることを指し、心身機能の維持・改善や環境への働きかけを通して、利用者のQOL(生活の質)を高めるよう、総合的に支援することを目的とします。

 

高齢者が要介護状態となることを予防するには、脳血管疾患など様々な疾病の原因となっている「生活習慣病」の予防や、寝たきりの原因となる「廃用症候群(生活不活発病)の予防が重要です。

 

廃用症候群は、長期の臥床や不活発な生活などにより、身体や精神の機能を使わない状態が続いたことによる機能低下の総称です。 廃用症候群が起こると、関節の拘縮や褥瘡など身体機能の低下だけでなく、知的機能や意欲の低下なども起こり、生活機能全体の低下につながります。

 

主な廃用症候群は以下の通りです。

 

・関節拘縮

長い寝たきりなどで関節が固くなり、自動的にも他動的にも動きが制限された状態。無理に動かすと痛みを伴う。

 

・骨粗鬆症

閉経後の女性に多い病気で、骨のカルシウム量が減少し、骨密度が低下して、骨がもろくなる。また、臥床が続き動かさなくなると、重力などによる刺激も低下して、さらに骨が弱くなる。

 

・筋萎縮・筋力低下

筋萎縮は、筋肉を作っている筋組織が細くなったり縮んだりした状態で、筋肉がやせ細り、筋力低下を起こす。筋肉を使わないことが主な原因。

 

・起立性低血圧

臥位から座位や立位になるときに、血液は下肢や腹部に移行しますが、このときに血圧のコントロールがうまくいかず、低血圧となり、立ちくらみを起こす。吐き気を起こすこともある。

 

・褥瘡

寝たきりなどにより、同一部位の持続的な圧迫があると、その部分の組織が壊死を起こす。仙骨や肩甲骨、踵部など、骨の突出部にできることが多い。

 

・精神機能低下

刺激の少ない状態が続くと、精神的な働きが鈍くなり、知的能力や意欲の低下、依存、自発性低下、食欲低下、睡眠障害などが起こり、感情や行動の異常、認知症に至ることもある。

 

・静脈血栓症

長時間動かずにいると、静脈内で血液が停滞し、血栓ができることがある。この結果、静脈がつまった状態になり、うっ血や浮腫を生じる。

 

介護におけるチームのコミュニケーション2

(2)報告、連絡、相談

 

「報告」「連絡」「相談」は、「ホウレンソウ」と言われ、組織を運営していくうえで、とても重要なことです。

介護現場においても、ケアチーム内のコミュニケーションを円滑にするために必要不可欠なことです。 報告、連絡、相談に関する留意点は以下の通りです。

 

①報告

報告には、上司への報告と、ケアチームのメンバーへの報告があり、自分の行った業務の内容や利用者の状態について相手に知らせるものです。

継続性のある介護を提供するためには、介護従事者の交代や家族への引き継ぎの際に、利用者の状態について、気をつけるべき点などをきちんと申し送ることが大変重要です。

 

・利用者のいつもと違う様子など、報告すべきことは必ず報告する

・いつ、どこで、誰に報告すべきかを確認して報告する

・適切な報告手段(文書・口頭など)で報告する

・報告の筋道と要点を整理し、簡潔に報告する ・客観的事実と自分の考えや判断を整理して報告する

 

②連絡

常に連絡をとりあうことは、ケアチームの連携を確実なものにするために、大変重要なことです。特に、利用者の心身の変化があったときは、できるだけ早く医療関係者に連絡をとることが大切です。

また、利用者の状態について、必要に応じて家族に連絡をすることは、信頼関係の構築にもつながります。

連絡についての注意点は、報告とほぼ同様ですが、他に ・ケアチームや医療機関、家族との連絡方法を確認しておくこと ・5W2Hを念頭において連絡をする などが大切です。

 

③相談

介護従事者が、介護の内容、利用者の状況、自分の能力について疑問や不安がある場合には、上司(必要に応じて他分野の専門職)に相談します。

疑問や不安があるまま、自己判断で行動することは慎まなければなりません。

上司等に相談する場合は、以下のような点に注意して行います。 ・上司の都合に合わせて相談する時間や場所を考える ・相談する内容を整理し、必要に応じて資料などを準備する ・自分なりの考えや対策を考えてから相談する ・相談内容はメモをとる ・相談したことの結果や経過を報告する

 

介護の現場などでの、従業者の監督・指導・支援にはスーパービジョンという方法がよく用いられます。

 

スーパービジョンについても、問題に出されることがありますので、確認しておきましょう。

 

スーパービジョンとは、スーパーバイザー(指導する者)がスーパーバイジー(指導を受ける者)に対し、援助・指導を展開することによって、スーパーバイジーの業務を遂行するための能力を向上させ、また自身を成長させる方法です。

 

スーパービジョンには、次の3つの機能があると言われています。

 

①教育的機能

すでに持っている知識や技術の活用方法を促したり、不足している知識を指摘することによって、自分の癖や欠点などに気づき、能力を高めることができます。

 

②支持的機能

スーパーバイジーが出来ていることを認め、努力しようとする意思を励ますことによって、スーパーバイザーの理解を示し、能力と意欲を高めることができます。

 

③管理的機能

スーパーバイジーの能力を把握し、それに見合う業務を担当させるなかで、スーパーバイジーが業務に対する理解や組織の方針の理解を深めることができ、組織の一員としての能力を高めることができます。

 

(3)会議

 

介護現場における会議は、関係者が集まり、情報を共有して連携を深めたり、参加者の知恵を出し合って、問題を解決したりする場です。

 

会議には、連絡事項を確実に伝えるための「情報共有型の会議」とケアカンファレンス、事例検討、業務改善のためのミーティングなど、職場における検討すべき課題について話し合う「問題解決型の会議」があります。

 

ケースカンファレンス(ケアカンファレンス)では、さまざまな専門職が集まって知識や技術を終結し、よりよいケアが行えるよう検討する場です。 情報を共有し、本人の意向を踏まえた目標に向けて、ケアプラン等の立案、修正、評価などを行います。

 

介護保険制度における、ケアプラン作成等のための会議として、「サービス担当者会議」があります。

サービス担当者会議では、介護支援専門員が中心となり、保健・医療・福祉など各分野から専門職が集まり、専門的な立場からケアプランに対する意見を述べ、サービスの調整を行います。

 

これらの会議に参加する場合は、①事前に資料に目を通し、会議の目的を理解したうえで参加する、②質問や意見を述べる場合は、簡潔に要点を絞って行う、③意見の不一致があっても他人の意見をよく聞き、論議を行って合意点を見出す、などが注意点として挙げられます。

 

介護におけるチームのコミュニケーション1

(1)記録による情報の共有化

 

●記録の意義と目的

 

チームワークで業務を行う介護の現場では、統一した介護を実践するために、記録を介して情報を共有することが重要になります。

 

利用者に関するさまざまな情報をチーム内の介護関係者が共有することにより、利用者に関する理解が深まり、質の高いサービスが提供できるようになります。

 

また、記録は適切な介護を行ったことの証拠(エビデンス)となり、後に介護に関する苦情や照会があった場合に、実践した介護内容を伝えることができます。 訴訟問題に発展した場合でも、証拠として取り扱われるため、介護従事者の身を守るためにも、きちんと記録をとっておくことが必要です。

 

記録には、以下の目的があります。

①利用者の生活の質を向上させる

②利用者により適切な介護サービスを提供する

③介護サービス提供機関や施設の運営管理

④介護福祉士の教育や現任訓練

⑤介護福祉士のスーパービジョン

⑥介護福祉に関する調査や研究

⑦既存の介護福祉の知識の評価や新しい介護の知識を生み出す

⑧介護福祉にかかわる統計や社会福祉全般の向上

 

●介護記録の書き方

 

介護記録の書き方に関する留意点としては、以下のようなことが挙げられます。

 

①事実を客観的に書く

介護記録では、介護従事者の主観的な記述ではなく、だれがみても明らかな、客観的な事実を正確に、必要なことのみを書くことが重要です。

また、「客観的事実」に対し、利用者がどのように思っているかなどの「主観的事実」や、介護従事者が考える「事実に対する援助者の解釈や分析」を記載することも、介護の方法などを考える上で必要となりますが、それらの記述は、「客観的事実」と混同しないように区別して記録することが必要です。

 

②読みやすく、わかりやすく書く

読みやすい記録にするためには、適切な大きさの楷書(活字体)で書き、分の書き始めを1マス空ける、行替え・段落、表題や小見出し、箇条書きや図表を入れるなど、記録全体のレイアウトも読みやすく工夫することが大切です。

わかりやすい記録を書くためには、簡潔に要領よく文章をまとめる、略語などは決められた範囲内で使い、意味の明確な用語を使う、現在形・過去形・未来形を使い分ける、などが必要です。

また、5W1H when(いつ:時間)、where(どこで:場所)、who(誰が:主体)why(なぜ:原因)、what(何を:客体)、how(どのように:状態)を明確にすることもわかりやすい記録のポイントです。場合によっては、how much(いくら:金額)を加え、5W2Hとすることもあります。

 

③記録上の注意点

記録を書く際の注意点としては、修正液は使わない、誰が記録したかわかるように記載者の名前を書く、開示することを考慮して利用者に関する記述には注意を払うことなどが挙げられます。

 

④介護記録の文体

介護記録の文体には以下のようなものがあり、記録の種類や使われる場面によって使い分けられまる。

 

・叙述体

客観的事実や起こった出来事をそのまま記録するときに使われる文体。

時系列順に記録する経過記録などは、全体を短く圧縮した「圧縮叙述体」が使われることが多い。

・逐語体

介護従事者と利用者のやりとりを加工せず、そのまま記録した文体。

・要約体

要点を整理してまとめるときに用いる文体。生活歴の記録、アセスメントの要約、事例検討や各種報告書などによく用いられます。

・説明体

出来事に対する介護従事者を解し、説明するときに用いる文体。「事実」と「事実に対する解釈・意見」とは区別して書くことが重要です。

 

④介護関係記録の種類

介護関係書類の種類には、以下のようなものがあります。それぞれの名称と用途を覚えておきましょう。

 

・フェイスシート

介護記録等の1ページ目となる書類。  利用者に関する基礎的な情報である氏名、生年月日、居住地、家族構成、主訴などが記載されており、フェイスシートを見るだけで、利用者の概要を把握できるように工夫されている。

・アセスメントシート

利用者の課題解決のために、個別援助計画作成の前に行う事前評価(アセスメント)の内容を記載するもの。利用者の心身の状況や環境に関する情報、抱えている課題などが記載されている。

・個別援助計画書

アセスメントによって明らかにされた利用者の課題解決や望む生活の実現に向けて、短期目標と長期目標を決めて、目標達成のために必要な支援の計画書。

・経過記録(介護記録・ケース記録)

利用者ごとの日々の生活や実施した援助、個別援助計画の実施状況などを時間の経過に従って記録する記録。

・介護日誌(業務日誌)

施設や事業所の1日の全体的な業務や行事の内容、特別に変化のあった利用者の状況を簡潔に書いた書式。他に、当日の利用者や出勤職員名、来所者など1日のおおまかな状況が一目でわかるよう記載します。

・ケアカンファレンス記録

利用者に対し、よりよい介護を実践するために、ケアチームのメンバーがカンファレンスを行った記録で、会議の日時、参加者、会議の経過及び結果等を記載し、メンバーが情報を共有する。

 

④援助記録とICT化

IT(情報技術)、ICT(情報通信技術)の発展により、介護関係記録も電子媒体で記録・保存することが多くなってきました。

記録を電子化することにより、情報処理の自動化、情報共有の効率化、情報抽出の効率化などが図られ、書類量の減少や情報共有のしやすさなど、メリットも多いのですが、システム上のトラブルや多量の情報流出などのリスクもあります。

利用者の個人情報を保護するため、情報管理を厳密に行うことが必要です。

 

⑤個人情報保護法

2003(平成15)年に、個人情報保護法(行政機関については行政機関個人情報保護法を適用)が制定され、個人情報取扱事業者に対し、利用目的の特定、適正な取得、管理、苦情処理等が規定されました。

個人情報保護法に基づき、介護保険法においても、「利用者及び家族の個人情報を用いる場合は、あらかじめ文書で当事者の同意を得ておかなければならない」と規定されています。

また、事例研究や学術発表の場などで、利用者の事例を報告する場合は、匿名化を図り、本人が特定できないようにしなければなりません。

個人情報保護法では、データの正確性の確保、安全管理、従業者や委託先の監督など、個人データの取り扱いについても規定されています。

介護場面における利用者・家族とのコミュニケーション5

(2)コミュニケーション障害2

 

●認知・知覚機能が低下している人とのコミュニケーション

 

①認知症の人とのコミュニケーション

 

認知症の人とのコミュニケーション難しさには、以下のような原因があります。

 

・記憶障害により、少し前に話したことを忘れてしまう。

・見当識障害のために、日時、場所、季節、時間などを認識できない。

・幻視・幻聴や作話などがあり、事実と違ったことを話す。

・認知機能の低下により、言葉が理解できない、言おうとする言葉が出てこない。

 

したがって、介護従事者は、利用者が正しい記憶や周囲の認識に基づいて会話をしているという前提には立たず、利用者がそれらとは無関係に、「今ここにある存在」として会話が成り立つように工夫することが必要です。

 

利用者が事実と異なる話をしても、介護従事者は、それを否定したり、無理に肯定したりせず、ありのままを受け入れて、事実かどうかを気にせず会話ができるような工夫をします。

 

認知症の人とのコミュニケーションでは、 ・さりげなく日時や予定を会話の中に入れる ・よく覚えている昔のことを話題にする ・ゆったりと会話をし、相手の言葉を待つ ・言葉が出にくい場合は、話の流れから合う言葉を出してみる など、会話を助ける援助を行い、コミュニケーションを促します。

 

また、認知症では、感情面は低下しないことが多いので、受容、共感的な態度、信頼関係の構築などが重要なポイントです。

特に、若年認知症のある人は、自信を喪失する傾向があるので、若年者特有の心理状態を理解し、本人が役立てる場面を作るなど、自尊心を支えるようなコミュニケーションをとることが大切です。

 

②高次脳機能障害の人とのコミュニケーション

 

高次脳機能障害は、脳梗塞、脳出血などの脳血管障害や、脳の外傷などにより、言語・思考・記憶・行為などの認知機能に生じる障害です。

失認、失行、失語症など、情報の理解や伝達、行動等に障害を受けますので、コミュニケーションをとることは、著しく困難になります。

 

・失認

視覚、聴覚、触覚には障害がないのに、対象を認知することができない状態。  自分の身体を自分のものと認知できない(身体失認、主に左半側失認)、物を見てもなにをみているかわからない(視覚失認)など。

 

・失行

運動障害がないのに、目的に合った動作や行動ができない状態。  服の着方がわからない(着衣失行)、使い慣れている道具が使えないなど。

 

・失語症

言語に関する高次脳機能障害がいくつか同時に合併した状態。  様々な型と特徴があります(次項参照)。

 

・前頭葉症状

いくつかの高次脳機能障害が合併して症候群を形成した状態。  脳が広範囲に障害され、判断や行動が困難になり、日常生活に支障をきたします。  利用者の困難な状態を理解し、尊厳を大切にした支援が必要です。

 

●失語症の人とのコミュニケーション

 

失語症は、脳の言語領域が障害を受けて現れる症状で、「話す」「聞く」「書く」「読む」ことの障害ほか、計算障害も同時に認められます。

 

失語症には、以下のようなタイプがありますが、特に「運動性失語(ブローカ失語)」と「感覚性失語(ウェルニッケ失語)」は問題によく出ますので、覚えておきましょう。

 

・運動性失語(ブローカ失語)

発語に必要な筋を支配し、言葉をつくる言語中枢(ブローカ中枢)が障害された失語症で、話の内容は理解できますが、話すことが流暢でなくなります。  読み書きでは、漢字はできるが仮名を間違えやすくなります。

意思の確認に、閉じられた質問を使うことや、絵カードを使った訓練などが有効です。

 

・感覚性失語(ウェルニッケ失語)

言葉を聞き取り、理解する言語中枢(ウェルニッケ中枢)が障害された失語症で、聞く内容が理解できない、流暢に話すことはできるが、意味不明で支離滅裂な発語(ジャルゴン・スピーチ)をするという特徴があります。

読み書きでは、読み誤りや書き誤りが非常に多くなります。  感覚性失語のある人には、50音表や絵カードは、有効な手段ではありません。

 

・伝導失語

人の話を理解することにはほとんど問題がなく、自発的には適切に話しができるのに、復唱が難しいもの。

 

・失名詞(失名辞)失語

健忘失語ともいわれ、発語は流暢で、聞くことの理解も良好、復唱も良好であるのに、ものの名前が出てこない失語症。

 

・全失語

ブローカ中枢とウェルニッケ中枢を含む広範な病巣があり、すべての言語機能が障害された失語症。

 

失語症のある人には、それぞれのタイプに応じたコミュニケーションの方法を工夫することが必要です。

また、失語症が原因で聴覚機能が低下することはないので、大きな声で話しかけても効果はなく、手話も有効なコミュニケーション手段ではありません。

介護場面における利用者・家族とのコミュニケーション4

(2)コミュニケーション障害1

 

コミュニケーション障害とは、発せられた情報を受け取ることから、その情報を認知・理解するまでのコミュニケーションの過程において、何らかの障害があり、コミュニケーションが達成できない状態をいいます。

 

コミュニケーション障害の要因を、その過程によって分類すると、①情報収集の障害、②情報理解の障害、③情報伝達の障害、④情報管理・維持の障害、に分けることができます。

 

また、このような利用者自身のコミュニケーション機能や能力に障害がある場合のほか、生活環境に問題があって情報収集がうまくできない場合にもコミュニケーション障害が生じることがあります。

 

●視覚機能が低下している人とのコミュニケーション

 

視覚に障害のある利用者は、聴覚機能(耳からの音声情報)や触覚機能(指先などが触れることによる情報)などを活用してコミュニケーションを図ります。

 

視覚障害では、言葉によるコミュニケーションはよくとれますが、非言語的コミュニケ―ションが十分にできません。このため会話に消極的になったり、会話のタイミングがうまくとれなかったりしますので、介護従事者は、利用者が言葉で表現しやすいように留意する必要があります。

 

視覚障害のある人のコミュニケーション手段には、①点字、②音声言語、③ポータブルレコーダー、④ハンドライティング(書字用下敷きを使い文字を書くこと)、⑤視覚補助具、⑥弱視眼鏡、⑦拡大鏡、⑧拡大読書器、⑨パソコンなどがあります。

 

点字は、指先の感覚を使って読む文字のことですが、点字の習得は難しく、点字を完全に使いこなせる人は、視覚障害者の1割程度で、中途障害者では、全く理解しない人もいます。

 

点字器(点字タイプライター含む)、点字図書、点字ディスプレイ(パソコン上の文字を点字化する器具)、拡大読書器、ポータブルレコーダーなどは、障害者総合支援法に基づく日常生活用具の対象品目です。

 

●聴覚機能が低下している人とのコミュニケーション

 

聴覚に障害のある利用者は、視覚による情報収集が重要な手段となります。

 

難聴者とのコミュニケーションのポイントは、利用者の正面に立って合図をする、表情や口の動きが見えるように、はっきり、ゆっくり、ジェスチャーをつけるなど、相手に分かりやすいように話しかけます。閉じられた質問を使って、確認しながらコミュニケーションをとることも有効です。

 

聴覚障害者とのコミュニケーション手段には、手話の他、読話、要約筆記、筆談などがあります。

 

読話とは、相手の口の動きや表情から音声言語を読み取り理解することで、中途失聴者でも訓練によって基礎的な読話は習得可能です。

 

要約筆記とは、会議などで話の内容を文字化して情報を伝える筆記通訳のことです。書く速さより話す速さの方が速いため、内容を要約して筆記します。

 

先天性や言語習得前に聴覚障害者となった人は、言葉を音として認識することが困難な場合が多いため、文章の読み書きが苦手な利用者もいますが、手話が上手く、手話を第一言語として使用している人が多くいます。

 

この反面、言語習得後に聴覚障害となった人(中途失聴者)は、言葉を話すことができたり、文章の理解も十分な人が多くいます。

 

しかし、手話の習得は困難な場合が多く、大人になってからの中途失聴者には、手話よりも筆談や要約筆記の方がコミュニケーションを取りやすい傾向がみられます。

 

●運動機能が低下している人とのコミュニケーション

 

コミュニケーションに関連する運動機能として、口唇、舌、口腔、声帯などの機能があります。この発声器官の機能低下により、発音に支障をきたした状態を「発話障害」といい、構音障害も含まれます。

 

構音障害とは、構音(声を出した後言葉を作り出す)器官の障害により、正確な言葉として伝えることができない状態のことで、器質性構音障害(口蓋裂など構音器官の形態障害によるもの)、運動性構音障害(脳血管障害などで構音にかかわる神経や筋肉が障害を受けたもの)、機能性構音障害(形態異常や神経系の障害がなく言語発達の遅れなどが関連するもの)に分けられます。

 

麻痺性構音障害とは、脳卒中や脳性麻痺などの中枢神経障害により、口唇、舌、軟口蓋、咽頭、喉頭など、発声・発語器官の筋肉や神経の病変によって構音障害が生じ、言語が不明瞭になります。

 

構音障害のある人は、話したいことは明確であるのに、うまく言葉で伝えられず、もどかしさを感じています。介護従事者は、言葉にうなずきながら、ゆっくりと話を聴くことが大切です。閉じられた質問を使い、利用者の意思を確認し、理解することも必要です。

 

構音障害のある人のコミュニケーションの手段には、筆談や五十音表、携帯用会話補助器(キーボードを押すと声が出る装置など、トーキングエイド)などのコミュニケーションエイドがあります。

 

筋萎縮性側索硬化症(ALS)など重度の障害をもち、構音障害も生じている場合には、瞼や指先などのわずかな動きで操作ができる、重度障害者用意思伝達装置というパソコンのソフトが利用できます。

 

介護場面における利用者・家族とのコミュニケーション3

(1)利用者・家族とのコミュニケーションの技法2

 

●意欲を引き出す技法

 

利用者が意欲的に生活を送ることは、利用者の身体的・精神的な力を引き出すうえで大変重要なことです。

 

しかし、高齢者は身体機能や認知機能の低下や様々な喪失体験から、障害を持つ人は思うようにならないもどかしさなどから、意欲を喪失しやすい状況にあるといえます。

 

このような利用者が、意欲的に生活するためには、①共感する、②人間関係を活用する、③自己決定を尊重する、④ストレングスを活かす、というコミュニケーションが重要となります。

 

①共感する

介護従事者は、利用者の意欲低下に陥っている状況に対し、共感的にかかわることが他の技法を活用する際の前提となります。

 

②人間関係を活用する

他人のために役立つ、必要とされるということは、意欲の向上につながります。また、他人と会うために積極的に行動するなど、人間関係の活用によって、意欲を高めることが期待できます。

 

③自己決定の尊重

利用者が自分で物事を決定し、自分が人生の主人公となって主体的に生活することは、意欲の向上につながります。

介護従事者は、さまざまな場面で利用者が自分の意思で決定できるよう、支援することが大切です。

 

④ストレングスの活用 介護従事者は、利用者のストレングス(強さ、強み)を活かし、利用者の意欲を高めることを心がけることが大切です。

それには、利用者の生活歴などから、利用者の関心、願望、長所などの個人のストレングスを見極めることと同時に、家族の力、地域の社会資源やなど、環境のストレングスを活用することも重要です。

 

●利用者と家族の意向の調整を図る技法

 

介護の現場では、利用者と家族の意向の違いに遭遇することがあります。

 

利用者と家族の意向が一致している場合は、利用者が過ごしやすく生活を送ることができますが、相反する場合は、利用者が不利な立場に立たされたり、家族の負担感の増大につながることもあります。

 

このような場合に、介護従事者は利用者と家族の意向を調整することが必要となります。

 

利用者と家族の意向が異なる原因としては、①家族が利用者の状態を正しく理解していない、②家族の価値観で利用者のことを考えている、③家族の利益を第一に考えている、などが考えられます。

 

利用者と家族の意向が異なる場合、まず必要なのは、介護従事者は基本的に中立な立場をとること、家族が利用者の真の意向を理解するよう支援することです。

 

しかし、利用者が自分の意思を表現できない場合、介護従事者は利用者が自分の意向を伝えられるように支援するとともに、それが困難な場合は、利用者の代弁者として、利用者の意向を聴き、家族に伝えることが必要です。

 

介護場面における利用者・家族とのコミュニケーション2

(1)利用者・家族とのコミュニケーションの技法2

 

●質問の技法

 

質問には下記のような技法があります。介護現場では主に、①閉じられた質問と②開かれた質問が使われます。

 

①閉じられた質問(クローズド・クエスチョン)

「はい」「いいえ」または2~3語の短い単語で答えられる質問。「食事はしましたか」「生まれたのはどこですか」など。

事実を確認する場合や、コミュニケーションに障害のある人との会話では有効ですが、利用者が受け身になりやすく、情報量が増えにくいという面もあります。 また、多用すると、利用者の意向を制限したり、尋問のような質問の仕方になり、心を開かなくなることもあるので、注意が必要です。

 

②開かれた質問(オープン・クエスチョン)

相手の自由な応答による質問の方法。自分の選択や決定により、自分の気持ちを自由に語ることができ、多くの情報を得ることができます。また、自分の話を聞いてもらえたことによる満足感を得ることもできます。

介護現場では、開かれた質問を中心に行うことが望ましいのですが、利用者が主体的に話を進める必要があり、負担が大きいので、閉じられた質問を適切に組み合わせて会話を進めることが重要です。

 

③重複する質問

「重複する質問」には、「赤と青のどちらが好きか」など、2つの選択肢を提示する質問と、「どこに住んでいますか、誰と住んでいますか」など、同時に2つの異なった質問を行うものがあります。

選択肢を示す質問は、閉じられた質問とほぼ同様で、答えを制限してしまいますが、答えを明確にする場合などは有効です。

同時に異なった質問をするのは、利用者には答えにくく、戸惑いを与えてしまうことにもなります。

 

④その他の質問

「なぜ」「どうして」という質問は、質問者側の意向が中心となり、相手を防衛的にしてしまうことがあるので、介護の現場ではあまり望ましくありません。

「評価的な質問」は、質問者側の価値判断に基づいて行われる質問であり、利用者との信頼関係を悪化させてしまう危険性があります。

質問に対する答えが返ってこない場合は、緊張している、答えにくい、答えを整理しているなど、さまざまな原因が考えられます。 答えを強要するのではなく、相手の言葉を黙って待つことも大切です。

 

●相談、助言、指導の技法

 

介護従事者は、さまざまな場面で利用者・家族からの相談を受ける立場にあります。

 

社会福祉士及び介護福祉士法においても介護福祉士は「その者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うことを業とする者」と規定されています。

 

面接の場所を設定して行われる場合もありますが、日常生活の中で行う(日常生活面接といいます)場合や、介護の実践を通して行われる場合もあります。

 

介護従事者は、利用者の心身の状況、ニーズや意向を十分に把握し、「バイスティックの7原則」などを活用して、利用者が自己を表現しやすいように、相談・助言等を行う必要があります。

 

家族に対して助言や指導を行う場合、家族のやり方が不適切であっても、すぐに否定したりせず、家族の考え方ややり方を尊重して、よりよい方法を見出していくことが大切です。

 

●バイスティックの7原則 (非常によく出題されます。必ず覚えましょう)

 

①個別化

利用者を個人として捉えること

利用者は、「不特定多数の中の一人」ではなく、「特定の一人の人間」で、抱える問題も固有のものです。  利用者の基本的人権を尊重し、利用者の個別の状況に即した援助を行います。

 

②意図的な感情表出

利用者の感情表出を尊重する

利用者の肯定的感情や否定的感情を表現したいというニーズを確認し、利用者が自由に感情表出ができるよう、意図的にかかわり、その感情表現を大切にする原則。

 

③統制された情緒的関与

援助者が自分の感情を自覚して吟味しながら、利用者の表出した感情を受け止める

利用者の感情を感受性をもって理解し、援助者自身が自分の感情を統制し、適切な情緒的関わりをするという原則。

 

④受容

利用者の言動や態度ををあるがままに受け止めること

利用者の言動や態度を、道徳的・感情論的な立場から、批判したり是認したりせず、利用者の全てを受け入れ、全人格として尊重する原則。

 

⑤非審判的態度

利用者を一方的に評価・判断せず、利用者の価値観や考えを尊重する

利用者や家族等の言動等に対して、一般的な価値基準や援助者自身の価値感によって一方的な評価・判断をするようなことを行わないという原則。

 

⑥自己決定

利用者の自己決定を促し、尊重する

援助者が自分の考えを押し付けるのではなく、利用者が自分の判断をもとに自己決定できるよう、支援する原則。

 

⑦秘密保持

利用者の秘密を保持し、信頼関係を構築する

専門的な援助関係のなかで打ち明けられた利用者の秘密を、援助者が適切に保全するという原則。利用者・家族の情報は、利用者・家族の同意なしでは他者に開示しない。

 

介護場面における利用者・家族とのコミュニケーション1

(1)利用者家族とのコミュニケーションの技法

 

ここでは、よいコミュニケーションをとるために、介護福祉士に必要なコミュニケーション技法について学びます。

下記に、主なコミュニケーション技法を示します。キーワードとその内容をしっかりと覚えましょう。

 

●傾聴

コミュニケーション技法の基本は、まず「傾聴」です。

傾聴とは、単に聴くだけでなく、相手に十分な関心を向け、言葉の裏に隠されている利用者の心情を理解するように聴くことで、利用者から「わかってもらえた」「理解されている」と感じてもらえるような聴き方です。

話には、話し手の経験や行動、感情、価値観が含まれており、これらを総合的に聴き、言葉の内容だけでなく、その背景にある感情を受け止めて理解することが大切です。

 

●共感

「共感」とは、コミュニケーション技法における基本的態度のひとつで、利用者の気持ちに寄り添い、利用者の体験したことや感じていることを共有し、理解しようとすることです。

共感の技法には、下記の2つのレベルがあります。

①第一次共感  基本的共感ともいわれ、話に含まれる感じ方、考え方、思いを受け止め、効き手側の言葉に変えて応答する技法

②第二次共感  深い共感ともいわれ、表出されず心に込められた思いや行動の背景にある感情も含めて応答する技法

「同情」は、聞き手の考えや見方から推測された相手の気持ちであり、相手の立場に立った思いの共有である「共感」とは異なるものです。

 

●納得と同意を得る技法

介護現場では、介護方法の説明など、何らかの説明をし、同意を得るという行為が発生します。

そのような場面では、介護者側の意見を押し付けるのではなく、利用者・家族との共感を基礎として、問題点を明確にしたうえで話をまとめていく必要があります。

下記に納得と同意を得る技法を示します。

①明確化  相手の話しにまとまりがない場合などに、質問をするなどして確認し、内容をはっきりとさせる技法

②言い換え  介護者側が別のよりわかりやすい言葉に言い換える技法

③焦点化  相手との話の中から、介護者側が重要な点を見出して理解し、まとめたうえで相手に返す(フィードバックする)技法

④要約  会話の内容、意味、感情などを総合的に理解し、要点をまとめて相手に伝える技法

 

・直面化  上記のような技法を用いることによって、利用者の考えや疑問が明らかになっていきますが、利用者・家族が、問題に向き合い、取り組めるように促すことを「直面化」といいます。

直面化は、利用者が自分の行動や行動がもたらす影響について、深くとらえられるようなきっかけを設けるとでもありますが、安易に用いると相手を傷つけることにもつながるため、信頼関係の深さなどを考慮するなど注意が必要です。

 

介護におけるコミュニケーションの基本

コミュニケーションに関する問題は、この科目から8問、領域Ⅰの「人間関係とコミュニケーション」から2問出題され、2科目合わせて1つの科目群として扱われています。

 

領域Ⅰの「人間関係とコミュニケーション」と重複するところも多々でてきますが、コミュニケーションの基本的な事項を理解する、コミュニケーションに障害がある人への対応など、基礎的なことをしっかりと理解しましょう。

 

(1)介護におけるコミュニケーションの意義

 

●情報の伝達

 

・情報を伝達するということは、コミュニケーションの基本的な機能のひとつです。  二者間における情報の伝達は、①メッセージを送る人(送り手)が、②伝えたいことを記号化し、③二者間を伝わる情報(メッセージ)を、④メッセージを受け取る相手(受け手)に送り、⑤受け手がメッセージを解読する、という過程により成立します。

 

・送り手は何かしらの伝えたいことを記号化(言葉などにする)し、受け手はそれを自分自身の解釈で理解します。解釈の仕方によっては、その情報が新しい意味を持つことにもなります。  すなわち、介護従事者は、利用者から発せられる情報によって、同時に利用者の心情や体調、認知機能などのアセスメントを行うこともできます。

 

・メッセージを伝えるチャンネル(伝達経路)には、言語的チャンネルと非言語的チャンネルがありますが、非言語的チャンネルが伝達経路の7~8割を占めて(伝わりやすい)います。

 

・コミュニケーションを妨げる要因を「雑音」といい、次の3つがあります。

①物理的雑音:大きな音や耳障りな音の他、不適切な温度、汚れた空気、悪臭など音以外の雑音がある。

②身体的雑音:疾病による聴力の障害、言語の障害、話し言葉の障害などの身体障害の他、義歯や補聴器などの不具合があるためにコミュニケーションが妨げられている場合を示す。

③心理的雑音:心理的防衛機制に加えて、偏見や誤解に基づく先入観などがある。

 

●コミュニケーションの役割

 

・コミュニケーションには、情報の伝達という側面だけでなく、互いに理解を深めてわかり合う「つながりを生む」という機能ももっています。

 

・コミュニケーションは、双方向の意思の交流であり、介護現場においても、介護従事者からの一方的な情報伝達ではなく、利用者の意思を受け止め、ニーズを理解することなど、人と人と全人的なかかわりをもつことで、信頼関係(ラポール)が形成されていきます。

 

・利用者とのコミュニケーションの他、専門職や家族など、ケアチーム内のコミュニケーションが円滑に行われている必要があります。

 

・身体介助などの介護業務は、介助の方法やタイミング、それに対する利用者の反応など、介護の行為自体がコミュニケーションであるといえます。適切で高度な介護技術は、信頼関係を生み出します。

 

・利用者へのアセスメントを通じての計画の立案と援助の過程では、利用者とのコミュニケーションが行われます。  この過程で、利用者が自分の気持ちに気づき、主体的に力を発揮することができたり、介護従事者自身も、自分自身の有効性と満足感を確認できたりと、利用者と介護従事者双方のエンパワメントにつなげることができます。

 

(2)利用者、家族との関係づくり

 

利用者と介護従事者がコミュニケーションをとる際に、お互いが相手の一部分だけを見ていたのでは、憶測から誤解を招くことなどがあり、良い関係を築くことはできません。

よく知っている人でも、「知っている」という先入観から、相手の心情を見えにくくする場合もあります。

よいコミュニケーションをとるには、お互いが「自己開示」をすることが大切です。

 

自己開示とは、自分自身に関する情報を、本人の意思に基づいて、特定の他者に対して知覚可能な形(言語など)で表現することです。

適切に自己開示ができているかを判断する基準として、下記の5つが挙げられます。

 

①量:開示する情報の量

②深さ:開示する内容の深さ

③時:いつ開示するか

④人:誰に開示するか

⑤状況:開示する機会や頻度

 

自分自身のことを、自分あるいは相手が知っているかどうかを、下記の4つの窓になぞらえて分析するモデルを「ジョハリの窓」といいます。

 

①開放の窓:自分が知っていて相手も知っている

②盲目の窓:自分は知らないが相手が知っている

③隠された窓:自分は知っているが相手は知らない

④未知の窓:自分も知らず相手も知らない

 

③の隠された窓を①開放の窓に近づけることが「自己開示」にあたり、①を拡げて共通理解している部分を増やすことが良いコミュニケーションにつながります。

 

コミュニケーションには、言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションがあり、非言語的コミュニケーションでは、無意識のうちに何らかのメッセージを相手に伝えてしまっています。

介護従事者が利用者を知ることにも役立ちますが、介護従事者は、介護という行為自体が非言語的なメッセージを発していることに十分配慮する必要があります。

 

介護従事者は、良いコミュニケーションをとるために、利用者に対し「自分が相手に関心をもっている」ということを伝える必要があります。

 

イーガンは、「関心をもっている」ことを、相手に自然に伝えられる「SOLER(ソーラー)」という5つの動作を示しました。

 

S(Squarely):利用者とまっすぐに向かい合うこと

O(Open):利用者に対して開いた姿勢をとること

L(Lean):利用者の方へ少し体を傾ける

E(Eye contact):利用者と適度に視線を合わせる

R(Relaxed):リラックスして話を聞くこと

介護従事者の安全

(1)介護従事者の健康管理

 

介護従事者自身が健康であることは、質の高い介護を提供するために必要不可欠なことであり、介護従事者の疲労やストレスは、介護の質の低下や事故につながることもあります。

 

このため、介護従事者は、自分自身の心と身体の健康状態を整えておく必要があります。

 

WHO(世界保健機関)では、健康を「健康とは身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない」と定義しています。

 

(2)こころの健康管理

 

精神面での健康管理では、ストレスをためない工夫をし、安定した精神状態を保つことが大切です。そのためには、十分な睡眠、休養をとること、自分に合ったストレス解消法を行う、心配事などを話せる人を持つことなどを普段から心がけるようにしましょう。

 

現在の介護現場は、事故防止、認知症への対応、高度で専門的な介護技術など、業務が拡大・多様化し、ストレスの多い職場であると言われています。

 

そのようなストレスへの対処法や心と身体の管理を行うことをストレスケアマネジメントと言いますが、職場でのストレスケアマネジメントは、個人のストレスを減少させるとともに、事故を未然に防ぐ、リスクマネジメントの一環として考えられています。

 

また、介護従事者など、対人援助サービス従事者に多いのが、「燃え尽き症候群(バーンアウト・シンドローム)」です。燃え尽き症候群は、突然燃え尽きたように、仕事への気力を失い、心身共に疲れ果てた状態になることで、それまで熱心に仕事をしていた人ほど陥りやすくなります。

 

(3)身体の健康管理

 

介護現場では、腰痛症や椎間板ヘルニアなどでの腰痛が大変多くみられます。

 

腰痛症は、特に原因となる病気がない腰部の痛みの総称です。多くは悪い姿勢などを長時間継続して、筋肉の疲労が蓄積することによって起こると考えられています。

 

椎間板ヘルニアとは、重いものを持つなど、強い力が断続的に加わったとき、背骨の骨と骨の間にあってクッションの役割を果たしている椎間板と呼ばれる軟骨が外に飛び出し、神経を圧迫することで激しい腰痛や臀部から足先にかけてのしびれを引き起こす病気です。

 

腰痛を予防するためには、ボディメカニクスの活用、福祉用具や介護機器の活用、良い姿勢の保持、コルセットや幅広ベルトの着用などがあげられます。

また、腰痛体操などで、腹筋や背筋などの筋肉を強化し、身体を柔軟にすることも効果的です。

このほか、十分な睡眠や休養をとる、規則正しい生活、栄養バランスのとれた食事を摂るなども重要です。

 

厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」では、重量物取扱い作業について、人力の負担軽減のために、作業の自動化、機械化、適切な補助機器等の使用を推奨しています。

 

(4)介護従事者の感染症予防

 

介護従事者は、自らが感染症の媒体にならないよう、日ごろから十分な予防対策をとる必要があります。

丁寧な手洗い、うがい、マスクの着用、排泄介助などの他、利用者の血液や体液に触れる可能性がある場合は、手袋、エプロンの着用などが必要です。

 

(5)介護従事者を守る法律

 

①労働基準法

労働基準法は、労働者を保護するため、労働条件の最低基準を規定している法律で、従業者を1人でも使用する事業所に適用されます。

・1週間の労働時間は40時間、1日の労働時間は8時間を超えてはならない

・女性の出産に関して、産前6週間(請求があった場合)と産後8週間は就業させてはならない などが規定されています。

 

②労働安全衛生法

労働安全衛生法は、事業者に対して職場の安全と衛生を確保するための体制づくりを義務付けており、労働基準法と整合性がとられています。

従業員50人以上の事業場には衛生管理者(10人以上50人未満は衛生推進者)、産業医の配置が義務付けられています。

産業医は、衛生管理者に対する指導・助言、従業員の相談に応じ、1000人以上の従業員を使用する事業場には、専属の配置が義務付けられています。

 

③介護労働者法(正式名称:介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律)

介護労働者法は、介護労働者の雇用管理の改善、能力の開発及び向上等に関する措置を講ずることにより、介護関係業務に係る労働力の確保、介護労働者の福祉の増進を図ることを目的とする法律です。

この法律に基づき、介護労働者の雇用管理の改善、能力の開発・向上、その他の福祉の向上を図ることを目的として、平成4年に介護労働安定センターが設立されました。

介護における安全の確保とリスクマネジメント6

(4)非常災害対策

 

特別養護老人ホーム等の福祉施設施では、「非常災害に関する具体的計画を立て、非常災害時の関係機関への通報及び連絡体制を整備し、それらを定期的に周知するとともに、定期的に避難、救出をの他必要な訓練を行わなければならない」と規定されています。

 

火災、風水害、地震に対応する計画を立てること、スプリンクラー、自動火災通報装置等の消防設備の設置、訓練等の実施、防火管理者の配置が義務付けられています。

 

2007(平成19)年に消防法の改正があり、グループホームなどの小規模な施設にも、スプリンクラー、自動火災通報装置の設置や、防火管理者の配置が義務付けられました。

 

高齢者や障害者は、災害時に自分を守り、避難をすることが困難です。 高齢者の住宅火災による死亡者の約6割が逃げ遅れによるものとなっており、火災警報器を設置する、カーテンなどに防火品を使用する、消火器を設置する、近隣との協力体制をつくるなどの対策が重要です。

 

(5)緊急時の対応

 

介護従事者は、利用者の人命にかかわるような緊急事態に遭遇することがあります。 そのような場合に介護従事者は、人命救助、状態悪化の防止、苦痛の軽減に努めなければなりません。

 

緊急時に備え、利用者の氏名、生年月日、病歴、服薬状況などの情報を整理しておくこと、緊急時の連絡体制を確認しておくこと、緊急時の対応方法を知ることなどの準備をしておくことが必要です。

 

緊急時は下記のような対応を行いますが、ひとりで行おうとはせず、大声で周囲の人の協力を求めます。

 

①窒息

食べ物が喉につまった場合は、

・本人に咳をしてもらい自然に吐き出す ・利用者の頭を下げ、肩甲骨の間を強く叩く(背部叩打法)

・利用者の背部からみぞおちのあたりに手をまわして腹部を強く上に圧迫する(ハイムリック法)

・意識がない場合は、清潔なガーゼ等で指を覆い、詰まったものを掻き出す、吸引器を使用する という対応をします。

また、 嘔吐した場合も、吐物で窒息しないように顔を横に向け、嘔吐しやすい体勢にします。

 

②呼吸困難

肺や心臓の疾患があると、軽い運動や安静時にも呼吸困難を起こすことがあります。

・衣服を緩めて起座位(座位より少し前かがみ、机に枕を置いて寄りかかる体勢)にする

・身体を前に押すように背中をさすり、呼吸を促す ・意識がない場合は、あごを上げて気道を確保し、呼吸がなければ人工呼吸を行う

 

③やけど

・まず、水道水等で患部を冷やす(無理に衣服を脱がそうとすると患部の皮膚をはがしてしまうので、着衣のまま冷やす)

・冷やしすぎると低体温症(体温が35℃以下になると生命の危険がある)になることもあり、注意が必要

・広範囲・重度の場合は、患部をタオル等で軽く覆い、病院受診する

・湯たんぽなどでの低温やけどの場合は、冷やしても効果がないので、すぐに病院を受診する

 

④転倒

・全身状態(意識があるか、出血・痛みの有無など)を調べる

・意識がない場合は、安静にして、呼吸・脈拍を調べ、救命処置を行うとともに救急車を手配する

・骨折、脱臼、捻挫などの疑いがある場合は動かさずに患部を固定する

・出血がある場合は止血をし、ガーゼや清潔な布をあてて、傷を保護する

・安静にして医師の診察を受ける(頭部を打った場合は経過観察が必要)

 

(6)一次救命処置(BLS)

一次救命処置(BLS:Basic Life Support)とは、倒れて意識のない人や、窒息を起こした人に対して、その場に居合わせた人が、救急隊や医師に引き継ぐまでに行われる救命処置のことです。

 

基本的な手順は、以下の通りです。

 

①倒れている人を発見した場合は、まず、周囲の安全の確認と意識の有無を確認します。

意識の確認は、肩を叩いて大声で呼びかけるなどして行います。

②意識がない場合は、大声で近くの人に助けを求め、救急通報(119番通報)とAED(自動体外式除細動器)の手配を依頼します。

③呼吸の確認を行います。目視で規則的で正常な呼吸が確認できれば、回復体位にする。

※回復体位とは、身体を横向きにし、あごを上げて気道を確保、膝を曲げ、下側の手を前方に伸ばした体位(嘔吐物による窒息を避ける)。

10秒以内に目視での呼吸を確認できない、死戦期呼吸をしている場合は心停止と判断し、直ちに胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行う。

※死戦期呼吸とは、しゃくりあげるような不規則な呼吸で、心停止直後に起きる呼吸のこと。これを呼吸があると判断してしまうと、救命のチャンスを逃してしまうことになる。

 

④心肺蘇生法(CPR)を行う

・胸骨圧迫(心臓マッサージ)  胸の真中を両手を重ねて強く、速く圧迫を繰り返す(5㎝沈む程度、1分間に100回以上)。

・気道確保  仰向けに寝かせた状態で、額を押さえてあごを持ち上げる。 異物があれば取り除く。

・人工呼吸  鼻を押さえ、息を吹き込む。感染予防のため、ハンカチなどを介して行う。 胸骨圧迫30回に2回が目安であるが、できるだけ胸骨圧迫中断しない(10秒以内)で行う。

※⑥一次救命処置(BLS)ガイドラインで説明していますが、現在は気道確保、人工呼吸より胸椎圧迫を行うことを優先しています。

 

⑤AEDによる除細動

AEDが届いたら、その音声ガイダンスに従って処置を行います。  体が濡れていたらふき取り、AEDの電源を入れ、電極パッドを胸に付けます。

AEDは、電気ショックが必要かどうかを判断し、自動的に作動します。  その後はCPRを2分間行い、AEDの解析(指示があれば電気ショック)を繰り返します。

 

⑥一次救命処置(BLS)ガイドライン

一次救命処置(BLS)には、ガイドライン2005とガイドライン2010があり、方法が少し異なっています。古い参考書だと、ガイドライン2005に準拠した方法が記載されていますので、注意が必要です。

主な違いは以下の通りです。

・処置の手順がA:AIRWAY(気道確保)→B:BREATHING(人工呼吸)→C:CIRCULATION(心臓マッサージ)だったのが、C→A→Bとなっています。

・気道確保、人工呼吸は訓練された救助者以外は、やらなくてよい。

・呼吸の確認方法について、胸の動きを見て、呼吸音を聞いて、頬で息を感じて(見て、聞いて、感じて)を廃止し、目視での呼吸が確認できない、死戦期呼吸が認められる状態であれば、心停止と判断する。

 

これらは、訓練を受けていない者にとって、胸骨圧迫が最も効果が高く、他の処置で中断されることを防ぐためです(胸骨圧迫だけのCPRでもよいとされています)。 また、ガイドライン2005から脈の確認は不要とされています。

 

このほか、

・胸骨圧迫の位置は、「乳頭間線上の胸骨」から「胸骨の下半分」に、

・胸骨圧迫の深さが、4~5㎝から、5㎝以上に、胸骨圧迫のテンポは100回/分程度から、5㎝以上に、胸骨圧迫のテンポが100回/分から100回/分になりました。

介護における安全の確保とリスクマネジメント5 事故防止、安全対策

(3)事故防止、安全対策

 

◆事故防止とリスクマネジメント

 

介護を必要とする人は、身体能力や認知能力に障害があり、事故を起こしやすい状態にあるといえます。 介護従事者は、起こり得る事態を予見して、事故を防止するために適切な介護を行うとともに、事故が発生した場合には、その被害を最小限に食い止めるために、適切な対応をとらなければなりません。

 

介護保険施設等の運営基準では、事故の発生又はその再発を防止するため、

①事故発生の防止のための指針の整備、

②事故やヒヤリ・ハット事例の報告、改善策を従業者に周知徹底する体制を整備すること、

③事故発生の防止のための委員会及び従業者に対する研修を定期的に行うこと、

④事故が発生した場合に速やかに市町村、入所者の家族等に連絡を行うこと、

が義務付けられています。

 

また、介護保険施設等は、事故の状況及び事故に際して採った処置について記録をし。介護サービスの提供により賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行わなければならないとされています。

 

労働災害に関する経験則に「ハインリッヒの法則」というものがありますが、この法則では、1件の重大事故の背景には29件の軽傷事故があり、さらにその背景に300件のヒヤリ・ハット体験があるとしています。

 

介護事故に関してもほぼ同様のことが当てはまり、事故発生の防止のための委員会では、ヒヤリ・ハット事例を分析し、背景要因も含めた原因の究明と再発防止策を検討することが大切です。

 

事故防止のためには、利用者個々の心身の状態やその変化を的確に把握し、できる限りリスクを軽減するようなかかわり方を検討する必要がありますが、事故に関する委員会の他、ケアカンファレンスやサービス担当者会議の場も活用することができます。

 

また、介護事故に関しては、発見者からリーダーに報告し、最終的に施設や事業所管理者に報告する仕組みを整備することが義務付けられています。

 

◆転倒・転落の防止

 

転倒・転落事故は、高齢者の家庭における不慮の事故による死亡事故の原因として、窒息、溺死についで多く報告されています。

 

転倒・転落による事故を防止するためには、利用者の転倒リスクのアセスメントに基づく適切な介助を行う他、段差をなくす、手すりを設置する、床等の滑り止めやベッドを低くするなど、環境の整備が重要です。

 

なお、転倒・転落を防止するための身体拘束は、決して行ってはなりません。 重大な人権侵害であるだけでなく、身体拘束によって体力が衰え、認知症が進み、その結果、ますます転倒などのリスクが高まり、その対応のためにさらに拘束を行う、という悪循環を生みだします。

利用者が自ら行動することによって、転倒・転落事故を起こす場合は、まずはその行動の理由を探り、安全面に配慮した対応を行うことが大切です。

 

◆薬の誤用の防止

 

介護を必要とする人の多くは、日ごろ薬を服用しています。 誤って薬を服用すると、非常に危険ですので、きちんと管理し、正しい方法で服用するようにしなければなりません。

 

・服薬の介助をする場合、医師の指示をきちんと守る。

服用時間(食前、食後、食間、就寝前など時間薬)、量、回数などを守り、自己判断で服薬を中止したり、量を変えたりしてはいけません。  また、飲みにくいからといって、薬剤をカプセルから出して服用すると、薬の効果が変化してしまいます。医師に相談し、別の形状の薬を処方してもらいます。

 

・薬を飲んだことの確認を確実に行う。

欠食によって薬を飲まなかったり、飲んだことを忘れて2度服用したりすることを避けるようにします。 ・薬は正しく保管する  薬は直射日光などで変質することがありますので、基本的には冷暗所に保管します。また、長期間保存する場合は、湿気を避けるなどが必要になります。

 

・処方薬は受診して服用する。

症状が同じようでも、自己判断で以前処方された薬を服用せず、必ず受診します。  また、薬には消費期限があり、保存状態によってはさらに期間が短くなるので、注意 が必要です。 ・点眼を正しく行う。 点眼は、介護者の手や利用者の瞼を清潔にし、容器が触れないように1滴ずつ行います。複数の点眼薬を使用する場合は、5分以上間隔を空けます。

 

・介護従事者が行える服薬介助

「 医師の処方を受け、あらかじめ薬袋等により患者ごとに区分し授与された医薬品について、医師又は歯科医師の処方及び薬剤師の服薬指導の上、看護職員の保健指導・助言を遵守した医薬品の使用を介助すること」とされています。

介護における安全の確保とリスクマネジメント4 感染対策2

◆注意すべき主な感染症

 

●重症急性呼吸器症候群(SARS)

原因:SARSウイルス、感染経路:飛沫感染、接触感染

2002年に、中国広東省に端を発し、その後世界的に流行した。肺炎の症状が前面に出る全身性の感染症。 2003年感染症法の改正に伴い、第一類感染症としての報告が義務づけられるようになった。

 

●腸管出血性大腸菌感染症

原因:O157などのベロ毒素、感染経路:経口感染

O157等のベロ毒素をを産生して下痢などの症状を引き起こすもので、感染力が強く、小児や高齢者が発症すると、合併症を起こし、死に至ることもあります。

 

●肝炎

肝炎とは、何らかの原因で肝臓に炎症が起こった状態のことで、ウイルスによる感染の他、薬剤、アルコール、アレルギーが原因となることもあります。  症状の出方によって、急性肝炎(突然発症し一過性で治癒する)、慢性肝炎(急性肝炎が治りきらずに症状が継続、一部は肝硬変に)、劇症肝炎(急性肝炎が悪化、意識障害を起こし、死に至ることも多い)があります。

 

・A型肝炎

原因:A型肝炎ウイルス、感染経路:経口感染

感染者の糞便中のA型肝炎ウイルスが、何らかの媒介体を通して人の口に入ることで感染します。症状は、発熱、食欲不振、嘔吐などの消化器症状で、通常は特別な治療をしなくても、3ヶ月以内に治癒します。

 

・B型肝炎

原因:B型肝炎ウイルス、感染経路:輸血、事故、性行為、母子感染  輸血などの医療行為などで、汚染された血液が皮膚の傷口等から体内に入り込むことによって感染します。

発症すると、発熱、黄疸、消化器症状、倦怠感などの症状がみられます。  感染予防には、患者の血液や血液の付着物が人に接触しないようにすることで、入浴や使った食器などには、特別な配慮は必要ありません。

 

・C型肝炎

原因:C型肝炎ウイルス、感染経路:輸血、事故、性行為

B型肝炎とほぼ同様の経路で感染しますが、B型より感染力が弱く、症状も軽いのが特徴です。

 

●MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染症

原因:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、感染経路:接触感染

黄色ブドウ球菌は、人の鼻腔や咽頭など、どこにでもあるありふれた菌で、通常は無害ですが、免疫力の低下している人に感染すると、肺炎、腸炎、敗血症、関節炎などの病気を発症します。

通常の黄色ブドウ球菌は抗生物質が効きますが、MRSAは、様々な抗生物質に対する抵抗力があり、薬による効果が得られない感染症です。  感染者との接触や医療器具などを介して、健康な人にも感染しますが、高齢者や手術後など免疫力の低下している人は発症しやすく、院内感染の主な原因菌のひとつになっています。をとらなければなりません。

なお、MRSAのように、からだの抵抗力が落ちて,ふだんは害のないような弱い細菌やウイルスなどに感染してしまうことを「日和見(ひよりみ)感染」といいます。

 

●結核

原因:結核菌、感染経路:(飛沫核感染)

結核菌の感染によって起こり、主に肺に感染し、咳、血痰、喀血、発熱、全身疲労感、体重減少などを引き起こしますが、肺以外にもあらゆる臓器に感染します。  かつては死因の第1位を占める病気でしたが、抗結核薬が開発され、一時は患者数が急速に減少しました。しかし、1997年から再び増加し始め、厚生省(当時)は結核緊急事態を宣言しました。 今日では、集団感染や院内感染、高齢者に結核患者が増えていることなどが問題となっています。

 

●疥癬

原因:疥癬虫、感染経路:接触感染

疥癬は疥癬虫(ヒゼンダニ)が皮膚の最外層である角皮層に寄生することによって感染する感染症です。  指間や腋下など皮膚の柔らかいところに発症し、非常に強い痒みを伴います。

疥癬には通常型の疥癬と、多数のダニが寄生し感染力の強いノルウェー疥癬があります。  ヒゼンダニは、乾燥や高温に弱く、人の皮膚から離れると数時間で死滅しますので、衣類や寝具などの日光消毒や高温の乾燥機などの使用が効果的です。

 

●インフルエンザ

原因:インフルエンザウイルス、感染経路:飛沫感染

インフルエンザウイルスが原因で起こる感染症で、突然の発熱や全身の倦怠感などの症状を伴います。  ヒトに感染するインフルエンザウイルスには、A型・B型・C型があり、現在はA型とB型が流行の中心となっています。

AA型は感染力が強いため大流行を起こしやすく、また、症状が重篤になる傾向があり、ときには死に至ることもあります。B型は、A型よりも症状が軽く、流行も限定的です。 2009年に世界中で流行した「新型インフルエンザ」は、A型で、H1N1亜型というものでした。 WHO(世界保健機構)により「パンデミック」とされましたが、現在は通常のインフルエンザとして取り扱われています。

 

●ノロウイルス感染症

原因:ノロウイルス、感染経路:経口感染、接触感染

カキ等のウイルスに汚染された二枚貝を十分加熱せずに食べたり、調理器具の汚染や感染した人が食品を取り扱うことにより、二次的に汚染された食品を食べたりした場合に感染します。

症状は、下痢、嘔吐などで、一般に症状は軽症ですが、高齢者や乳児など免疫力の低下した人では重症化して死亡することもあります。  ノロウイルスは、感染者の糞便や嘔吐物によってウイルスが排出され、非常に感染力が強いので、その処理には十分な注意が必要です。

なお、現在効果のある抗ウイルス剤はなく、下痢や嘔吐により大量の水分を失いますので、脱水予防のため、イオン飲料等での水分補給が有効です。

介護における安全の確保とリスクマネジメント3 感染対策1

(2)感染対策

 

◆感染症とは

 

介護を必要とする利用者は、免疫力や体力が低下しており、感染症にかかりやすくなっています。 介護従事者は、利用者への感染防止、感染した場合の拡大防止に努めることが必要です。

 

感染症とは、細菌やウイルスなどの病原性の微生物が体内に入り込むことによって発症する疾患のことをいいます。

この微生物を病原体といい、病原体が体内に定着・増殖すると感染が起こりますが、感染しても症状が出る場合とでない場合があります。

症状が現れる場合を「顕性感染」現れない場合を「不顕性感染」と呼びますが、症状が現れなくても「保菌者(キャリア)」となり、感染を拡大させる可能性もありますので、注意が必要です。

 

◆感染対策の原則

 

感染対策の3原則には、①感染源(病原体)の排除、②感染経路の遮断、③宿主(人間)の抵抗力の増強・向上が挙げられます。

 

アメリカの感染症対策の標準とされているCDC(標準予防策)ガイドラインでは、「感染の有無にかかわらず、すべての患者の血液、体液、汗を除く分泌物、排泄物、損傷皮膚、粘膜などは、感染する危険性があるものとして取り扱わな得ればならない」としており、この考え方は、日本でも広く採用されています。

 

感染症の感染経路には、①経口感染(病原体を含む食品などを飲食する)、②飛沫感染(保菌者の咳やくしゃみからの感染)、③空気感染(空気中に飛散した飛沫核を吸い込む)、④接触感染(皮膚や粘膜、食品などに触れる)、⑤血液感染(傷口などから病原体が直接血液に入る)があります。

 

感染経路別の主な感染症は以下のとおりです。

①経口感染:赤痢、腸チフス、A型肝炎、ノロウイルスなど

②飛沫感染:インフルエンザなど

③空気感染:結核、麻疹など

④接触感染:疥癬、MRSA、ノロウイルスなど

⑤血液感染:HIV、B型肝炎など

 

感染経路の遮断には、①感染源を持ち込まない、②感染源を拡げない、③感染源を持ち出さない、の3つがあります。 そのためには、手洗いの徹底やうがいの励行、マスクや手袋の着用、環境の清掃などが重要になります。

 

血液、体液、排泄物などは、感染源となる可能性が高いので、直接触れるような介助の際には、素手で触らず、手袋、マスク、場合によってはガウン、ゴーグルなどを使用します。ケア終了後は、手袋を裏返して外すなど、感染源が飛散しないよう配慮するとともに、必ず手洗い・手指消毒を行います。

 

感染症に感染している利用者の衣類等は、他の利用者の衣類とは別にして、消毒を行った後に洗濯します。

 

◆感染管理

 

免疫力や抵抗力が低下し、感染症に罹患しやすい状態にある高齢者が集団で生活する高齢者介護施設では、ひとたび感染症が発症すると急速に拡大し、集団感染につながる危険性があります。

 

介護保険施設では、指定基準に①感染症又は食中毒の予防及びまん延の防止のための対策を検討する委員会を概ね3月に1回以上開催すること、②指針を整備すること、③研修を定期的に実施すること、などが定められています。

 

また、施設において同一の感染症又は食中毒で死亡者又は重篤患者が2名以上発生した場合や、10名又は利用者の半数以上に発症した場合などは、市町村及び保健所に報告し、指示を仰ぐこととされています。

 

介護における安全の確保とリスクマネジメント2 介護における安全の確保2

◆利用者の観察ポイント

 

介護現場において、安全を確保するには、利用者の状態をよく観察し、いつもと違う状況を速やかに発見することが大切です。

 

特に利用者が高齢者の場合は、典型的な症状が出ないことや、異常に対する自覚に乏しい、異常を訴えることができないなどがあります。

 

利用者に身近に接する介護従事者は、利用者の状況を注意深く観察し、異常を発見した場合は、安易に自己判断せず、医療関係者等に報告し、指示を仰ぐようにしましょう。

 

 

利用者の観察ポイントには、以下のような点があげられます。

 

①皮膚の観察

高齢者の皮膚トラブルには、老人性皮膚掻痒症、真菌症、褥瘡、疥癬などさまざまなものがあります。  衣類の着脱や入浴・排泄介助時によく観察し、異常があれば医療関係者に報告します。

 

②脱水症状

特に高齢者は、体内の水分量が少ない上、排尿を気にして水分摂取量を制限したり、発熱や下痢などでも脱水状態に陥りやすくなっています。

しかし、高齢者は、脱水症状に気づかないことも多く、介護従事者の観察(肌や唇・舌、腋下の乾き具合、尿量、体温など)が重要になります  尿量が少ない場合は、脱水の他、腎機能の障害も考えられます。水分摂取量と尿量のバランスにも注意が必要です。

脱水予防には、1日2500ml(食事から1000ml、飲料水から1500ml)が必要であるといわれています。

 

③嚥下障害

高齢者は、歯の欠損、唾液分泌の低下、口腔内の麻痺などにより、嚥下障害を起こしやすくなっています。

食事の際には、飲み込みやすい食事形態を準備し、姿勢に配慮し、麻痺のない側から飲食物を入れ、嚥下を確認しながら介助するなどの注意が必要です。

 

④呼吸

呼吸の観察は、回数(15~20/分が標準)、深さ、リズム、喘鳴が聞こえるかなどに注意が必要です。

異常を感じた場合は、速やかに医療関係者に報告し、指示を受けるようにしましょう。

なお、呼吸は自分でコントロールすることが可能ですので、観察の際には、相手に気づかれないように行う必要があります。

 

⑤体温

成人の体温は、腋下で36°~37°が標準ですが、個人差や日内変動(朝低く夕方に高くなる、差は1°以内)がありますので、平常時の体温を把握しておくことが重要です。

体温は、測定する場所によって差があり、直腸内体温(肛門に体温計を入れる)は腋下より0.5°、口腔舌下体温(舌の下に体温計を入れる)は0.3°程度高くなります。

高熱の場合は、感染症や脱水症が疑われます。また、35°以下の低体温の場合も、危険な場合がありますので、医療関係者への相談が必要です。

 

⑥脈拍

脈拍は、心臓の鼓動を伝えるもので、通常60~80回/分です。 脈拍は、運動や姿勢、緊張、食事などによっても変化しますので、測定時はリラックスして安楽な姿勢をとります。

1分間の脈拍数が90~100以上を頻脈、50以下を除脈、乱れがある場合を不整脈といいます。 脈拍に乱れがある場合は、重大な病気の可能性もありますので、医療関係者への報告が必要です。 脈拍の測定は、通常安定した状態で、脛骨(けいこつ、手首の親指側)に3本指を当てて測ります。脈拍数だけでなく、リズムや大小にも注意が必要です。

 

⑦血圧

血圧は、最高血圧(収縮期血圧)と最低血圧(拡張期血圧)を測定しますが、最高血圧が140mmHg、最低血圧が90mmHg以上の場合、高血圧と診断されます。 血圧は、運動や食事、入浴などにより高くなりますので、測定はこのようなときの後は避けるようにします。

また、精神的な緊張やストレスなどによっても高くなりますので、リラックスした状態で行うことが必要です。

高血圧は、脳卒中や心筋梗塞 など動脈硬化による様々な病気の原因となります。

 

⑧精神的な変化

利用者の観察は、身体的な変化だけでなく、精神的な変化にも注意が必要です。

特に高齢者の場合は、うつ状態や認知機能の低下がよくみられる症状です。

うつ病は、食欲不振、頭痛、不眠など身体症状に出やすく、意欲低下による身体機能の低下も心配されます。

認知力の低下には、何ができて何ができなくなってしまったのか、行動の原因は何かなどを考えながら観察することが大切です。

介護における安全の確保とリスクマネジメント1 介護における安全の確保1

 

(1)介護における安全の確保

 

「リスクマネジメント」は、「危機管理」と訳され、その目的は、事故の発生を未然に防止することや、発生した事故を速やかに解決することによって、組織の損失を最小限に抑えることです。

 

リスクマネジメントは、「人はエラーを犯すもの」という前提に立ち、その上で、エラーが事故につながらないようにしていく、問題解決のプロセスであるということができます。

 

医療安全のシステムづくりには、3つのステップが必要であるといわれています。

①リスクマネジメント

②セーフティマネジメント:事故の発生そのものを未然に防ぐ

③クォリティマネジメント:質の向上によって事故を防止する

リスクマネジメントはその1番目のステップで、この考え方は介護現場にも応用できます。

 

介護現場では、「介護事故を未然に防ぐとともに、万一事故が発生した場合は、迅速・的確に対応を行い、被害を最小限に留める仕組み」ということができます。

 

介護保険の施設や事業所の運営基準においても、事故防止のための指針の整備や従業者に対する研修を行うことなどが定められており、介護従事者には、事故を未然に防ぐ技術や事故発生時の対応などを見に付けておく必要があります。

 

◆リスクマネジメントに必要な要素

 

介護現場におけるリスクマネジメントには、以下のような点を重視する必要があります。

 

①個々の介護従事者の技術

利用者をよく観察し、状態を把握、正確で安全な技術で介護することが求められています。

 

②多職種連携

介護はチームによって行われるため、誰かが異常を発見したら、チーム全体で情報を共有する体制が必要です。

情報の共有には、他の専門職も適切な対応ができるよう、利用者の様子や変化がわかるような記録が重要です。

また、ヒヤリハット報告書、事故報告書などを整備することにより、事故の要因分析や再発の防止に役立てることができます。

 

③組織におけるリスクマネジメント体制

介護保険施設や事業所には、事故対策委員会、リスクマネジメント委員会などの、事故の予防や安全対策を検討・実施する組織が設置されています。

そのような組織を活用し、日ごろからどのようなリスクが存在するかを把握し、回避する努力を行うことが重要です。 その他、利用者や家族とのコミュニケーションを十分にとり、信頼関係を築いておくことも必要です。

 

◆事故発生時の対応

 

介護事故が発生した場合、まず、利用者の状態を観察・把握し、応急処置を行うとともに、二次的な被害が起こらないように配慮します。 協力できる人がいれば協力してもらい、必要であれば救急車等を手配します。

 

介護事業者の運営基準には、介護サービス提供による事故が発生した場合は、速やかに市町村、家族に連絡を行うとともに必要な措置を講じなければならないことが定められています。

 

事故の状況と行った対応は、正確に記録に残しておきます。記録を残すことも義務付けられており、家族や市町村への報告、賠償責任の確認のためなどに必要です。

 

◆事故防止と安全対策

 

介護現場で発生頻度が高い事故として、転倒、ベッドからの転落、食事中の誤嚥、誤飲、誤薬などがあります。

 

事故を防止するためには、利用者の行動を理解すること、利用者の普段の様子をきちんと把握し「いつもと違う」ことを察知することが必要です。

 

また、福祉用具の活用や利用者の状態に合わせた環境整備を行うことは、安全対策の基本であるといえます。

 

介護従事者の倫理

介護従事者の倫理については、毎回必ず出題されていますが、社会福祉士及び介護福祉士法の義務規定または、日本介護福祉士会の倫理綱領から出題されると思われます。 このふたつはしっかりと抑えておきましょう。

第25回試験では、社会福祉士及び介護福祉士法の義務規定が出題されましたね。

 

社会福祉士及び介護福祉士法では、介護福祉士に求められる義務等として、「誠実義務」「信用失墜行為の禁止」「秘密保持義務」「連携」「資質向上の責務」が規定されています。

(内容については、介護福祉士の役割と機能を支えるしくみ2で確認してください)

 

日本介護福祉士会では、1995(平成7)年に「日本介護福祉士会倫理綱領」を掲げ、介護福祉士が守るべき基本的な倫理を示しました。

 

第1条 利用者本位、自立支援

第2条 専門的サービスの提供

第3条 プライバシーの保護

第4条 総合的サービスの提供と積極的な連携、協力

第5条 利用者ニーズの代弁

第6条 地域福祉の推進

第7条 後継者の育成

全文は「日本介護福祉士会倫理綱領」を参照してください。

 

●利用者本位・自立支援

利用者が、その人らしく暮らせるよう、それまでの生活習慣や、価値観、思いを尊重し、その利用者本位の立場から、自分で選択・決定して、自ら主体的に行動できるよう、また、身体機能の維持・向上のサポートも行い、利用者の自立を支援することが重要です。

また、介護従事者は、利用者の自己実現のために、様々なバリアを乗り越えて、社会参加ができるように支援することも大切です。

 

高齢者や障害者等の社会参加を困難にしているバリア(障壁)には、物理的バリア、制度的バリア、心理的バリアがあるといわれています。

 

・物理的バリア:道路や建築物、車いすでは使えない設備など

・制度的バリア:資格試験、入学、就職等を制限される、住宅の入居制限、身体障害者補助犬の入れないレストランなど

・心理的バリア:無知や無関心から生じる偏見や差別意識、憐れみ、同情などの障害者観、本人の遠慮など

 

●利用者の権利の尊重、人権擁護

支援を必要とする利用者は、社会的に弱い立場に陥りやすく、自分を主張することが困難であったり、ときには虐待の対象になったりもします。 利用者の基本的人権を尊重し、不当に不利な状況に陥らないよう、配慮することが必要です。

認知症高齢者など、サービスの利用に際し、不利が生じる恐れのある利用者のためには、「福祉サービス利用援助事業」「成年後見制度」の活用に向けた支援を行うことも必要です。

 

(福祉サービス利用援助事業) 都道府県社会福祉協議会が主体となって行う、日常生活自立支援事業に位置付けられている、判断能力の不十分な人に対し、無料・低額で、福祉サービスの利用援助とこれに伴う金銭管理等を行う事業。社会福祉法により第2種社会福祉事業に位置付けられている。

 

●プライバシーの保護

介護従事者は、利用者や家族のプライバシーに深くかかわり、個人情報も容易に知り得る立場にいます。

利用者等との信頼関係を築くためにも、プライバシーや個人情報の保護は、必ず守らなければならない義務です。

 

初回福祉士及び介護福祉士法においては、「秘密保持義務」が規定され、個人情報保護法においても、様々な個人情報の取り扱いについて規定されています。

 

チームケアを行うには、個人情報の共有も必要ですが、これらの法律を順守し、

①利用目的を特定し利用者に通知する

②正確な情報を適切に取得する

③安全に管理する

④同意を得ずに第三者に提供しない

など、個人情報を適切に取り扱うことが必要です。

 

尚、個人情報保護法では、本人の同意がない場合、全面的に個人情報の第三者への提供を禁止しているわけではなく、以下のような例外規定を設けています。

①法令に基づく場合

②人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。

③公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要があ る場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。

 

●利用者のニーズの代弁

「利用者の権利の尊重、人権擁護」で述べたとおり、支援を必要とする人は、容易に自分の意思を表現することができず、不利な立場に置かれがちです。  利用者との信頼関係によって真のニーズを受け止め、代弁者となることも、介護従事者の倫理のひとつです。

 

●自己研鑚

日本介護福祉士会倫理綱領では、第2条「専門的サービスの提供」において、専門職としての知識・技術の研鑚、豊かな感性と的確な判断力、深い洞察力をもってサービスを提供するとともに、自ら実施したサービスに専門職としての責任をもつ、としています。

そのためには、知識・技術の習得に努めるとともに、「自己覚知」や熟練した介護従事者からのスーパービジョンを受けることも必要です。

 

●連携

支援を必要とする人が、自立した生活を送るためには、介護の提供のみでなく、様々な角度から総合的な支援を行うことが必要です。

そのためには、福祉・医療・保健その他の専門職等でチームを組み、積極的に連携を図ることが有効となります。

 

介護実践における連携2 地域連携

(2)地域連携

 

チームアプローチを実践していくためには、地域の専門職や専門機関、施設等の社会資源の他、地域住民やボランティアなど、地域全体で連携をとることが必要です。

 

地域は、①自治会圏域、②学区圏域、③市町村支所圏域、④市町村全域、⑤県域・広域といった、いくつもの福祉圏域に分けることができます。これらがそれぞれの特性に合った連携を行い、重層的に関わり合ってチームアプローチが行われます。

 

このうち、住民に最も身近な①自治会圏域等では、地域住民やボランティアなどによる、一人ひとりの気持ちに寄り添ったきめ細かな支援をすることができます。

 

これとは別に、2005(平成17)年の介護保険改正により、要介護高齢者等が住み慣れた地域においてサービス利用を可能とする観点から、「日常生活圏域」が設定されるようになりました。

 

この日常生活圏域は、市町村介護保険事業計画を作成する基本的な単位で、地域密着型サービスや地域包括支援センターを中心とした介護の基盤整備の単位となっています(現状では完全には整備をされているとはいえません)。

自治体によって違いはありますが、上記の②学区圏域~③市町村支所圏域で設定しているところが多いようです。

 

④について、市町村は、介護保険制度の保険者であり、地域密着型サービスの指定・監督、地域包括支援センターの設置、障害者自立支援法の給付など、社会福祉制度を実施する中心的な行政機関となっています。

 

●地域連携にかかわる地域福祉関係機関

 

・民生委員

民生委員法に基づき、都道府県知事(又は政令指定都市、中核市長)の推薦によって厚生労働大臣が委嘱し、任期は3年です。児童福祉法の規定により、児童委員も兼務することとなっています。  地区を担当して相談活動を行い、地域の声を吸い上げ、状況を把握、関係機関につなぐ役割をもっています。

 

・NPО法人

民間の公益に資するサービスを提供し、営利を目的としない団体で、特定非営利活動促進法(NPО法)に基づいて法人格を取得した団体をNPО法人といいます。 NPО法では、17の活動分野が規定されていますが、そのうち「保健・医療、福祉関連」の団体が最も多くなっています。 介護保険事業所の他、さまざまなきめ細かいサービスを運営しています。

 

・社会福祉協議会

社会福祉協議会は、社会福祉法に規定される、民間の社会福祉活動を推進することを目的とした非営利の民間組織です。

社会福祉協議会は、全国、都道府県、市区町村、地区の行政単位ごとに設置されており、民生委員・児童委員、社会福祉施設等の社会福祉関係者、保健・医療・教育など関係機関と連携し、地域福祉の推進に取り組んでいます。

介護保険事業所など各種の福祉サービスや相談活動、ボランティアや市民活動の支援、共同募金運動への協力など、地域福祉活動を行っています。  都道府県社会福祉協議会では、「日常生活自立支援事業」を行っています。

 

・福祉事務所

社会福祉法に規定されている「福祉に関する事務所」をいい、都道府県及び市(特別区を含む)に設置が義務付けられています(町村は任意)。 福祉六法(生活保護法、児童福祉法、母子及び寡婦福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法及び知的障害者福祉法)に定める援護、育成又は更生の措置に関する事務を行う「社会福祉専門行政機関」です。 老人福祉、身体障害者福祉、知的障害者福祉分野では、施設入所措置事務などが都道府県から町村へ移譲され、都道府県福祉事務所では、福祉三法(生活保護法、児童福祉法、母子及び寡婦福祉法)のみを取り扱っています。

自治体によって「福祉事務所」の名称を使っていないところもあります。

 

・地域包括支援センター

2005(平成17)年の介護保険法改正で新たに設置された、地域包括ケアの中核となる機関です。  包括的支援事業(介護予防ケアマネジメント業務、総合相談支援業務、権利擁護業務、包括的・継続的ケアマネジメント業務)、指定介護予防支援事業者としての介護予防計画の作成、任意事業としての家族介護支援、二次予防対象者の把握、介護予防に関する普及啓発などを行っています。

 

介護実践における連携1 多職種連携(チームアプローチ)

(1)多職種連携(チームアプローチ)

 

●チームアプローチの概要

 

介護の実践にあたっては、関連する専門職とチームを組み、多職種が連携して様々な角度から支援することが必要です。

これを「チームアプローチ」といいますが、異なる専門性をもつ多職種がそれぞれの専門職の能力を活かして、専門的視点での情報収集やアセスメントなど、多方面からの視点による総合的な援助を行うことができます。

 

チームアプローチを実践するためには、利用者の状態やニーズに関する情報、目標や方針などを共有すること、各職種間の連携により、サービスの重複をなくすなど、効率的な支援をすることが必要です。

 

また、関連する専門職が相互の専門性を理解し、それぞれの業務範囲を尊重することも必要です。

 

情報を共有し、効果的な支援を行うためには、関係者間での話し合いを行うことが必要となります。 これを「ケース・カンファレンス(ケア・カンファレンス)」といい、関係者には、医療関係者や福祉関係者などの他、ケースによって、本人・家族、教育関係者、ボランティアなども含まれます。

 

●医療関係者との連携

 

社会福祉士及び介護福祉士法には、「介護福祉士は、福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない」と規定されています。(「福祉サービス関係者等」とは「福祉サービスを提供する者又は医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者」のことです)

 

連携が必要な医療関係職種は、医師、看護師、保健師、助産師、歯科医師、薬剤師、栄養士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士、視能訓練士、義肢装具士、放射線技師、臨床検査技師などがあげられます。

 

主な医療に関する専門職については、介護実践に関連する諸制度6 医療に関する法的な規制を参照してください。

 

医師法に「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定められており、医師以外が診断、投薬、手術、生理学的検査などの「医行為」を業(不特定多数の者を対象に反復継続して行うこと)としてはならないとされています。

したがって、緊急時の救急救命などは、医師でなくてもできることになります。

また、医行為の一部は診療の補助等として、医師の指示のもと、看護師等の医療従事者が行うことができます。

 

2011(平成23)年の社会福祉士及び介護福祉士法の改正により、一定の要件のもと、介護職員等による喀痰吸引等(限定的な喀痰吸引と経管栄養)の実施が可能となりました。

 

実施できるのは、平成27年度の介護福祉士国家試験合格者(養成課程で実地研修を修了)と介護福祉士以外の介護職員等(現在の介護福祉士を含みます)で、一定の研修を修了し、認定特定行為従事者の認定を受けた者です。

 

連携が必要な社会福祉関係職種には、介護福祉士、社会福祉士、医療ソーシャルワーカー、精神保健福祉士、介護支援専門員、ホームヘルパー、手話通訳士などがあります。

 

このほか、家族・友人、民生委員、ボランティアなどとの連携も重要です。

 

主な社会福祉関係職種

 

・社会福祉士(社会福祉士及び介護福祉士法)

「社会福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供する者又は医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者との連絡及び調整その他の援助を行うことを業とする者をいう」と定義されています。

 

・精神保健福祉士(精神保健福祉士法)

「精神保健福祉士の名称を用いて、精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識及び技術をもって、精神科病院その他の医療施設において精神障害の医療を受け、又は精神障害者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設を利用している者の地域相談支援の利用に関する相談その他の社会復帰に関する相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助を行うことを業とする者をいう」と定義されています。

これらの定義まできちんと覚える必要はありません。社会福祉士は社会福祉全般の相談等の支援、精神保健福祉士は精神科領域での相談等の支援を行う職種です。両方とも試験に合格した上で、登録して初めてその名称が使えます(名称独占)。

 

・介護支援専門員(介護保険法)

「要介護者等からの相談に応じ、要介護者等がその心身の状況等に応じ適切なサービス(居宅、地域密着型、施設、介護予防、地域密着型介護予防)を利用できるよう市町村、居宅サービス事業者等との連絡調整等を行う者であって、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識及び技術を有するものとして介護支援専門員証の交付を受けたものをいう」と定義されています。 国家資格ではなく、都道府県知事から与えられる資格です。

 

・訪問介護員(ホームヘルパー)

(介護保険法) 利用者宅へ出向き、身体介護や生活援助の訪問介護サービスを提供する。介護福祉士の資格をもって訪問介護を提供することができる。

 

2009年に訪問介護員3級課程(3級ヘルパー)が廃止され、訪問介護を提供できるのは、訪問介護員2級課程(2級ヘルパー)修了者以上となりましたが、1・2級ヘルパーと介護職員基礎研修はすでに廃止されました。

2013(平成25)年度からは、訪問介護員1・2級課程と介護職員基礎研修が「介護職員初任者研修」に一元化されています。

また、社会福祉士及び介護福祉士法の改正により、2012(平成24)年度から「実務者研修」が創設され、「介護職員初任者研修→実務者研修→介護福祉士」というキャリアアップのルートができました。

平成27年度(28年1月)の介護福祉士国家試験から、実務経験3年で受験する場合、実務者研修の受講が必要となりました。

 

介護サービス4 介護サービス提供の場の特性3

(2)介護サービス提供の場の特性

 

◆居宅系サービス(障害者)

 

障害者自立支援法のサービス体系は、個々の障害程度や社会活動、介護者、居住等の状況をふまえ、個別に支給決定が行われる「障害福祉サービス」と、市町村の創意工夫により、利用者の方々の状況に応じて柔軟に実施できる「地域生活支援事業」に分かれます。 「障害福祉サービス」には、介護の支援を受ける「介護給付」と訓練等の支援を受ける「訓練等給付」があり、それぞれ利用の際のプロセスが違います。

 

障害者総合支援法では、入所施設のサービスを、昼のサービス(日中活動事業)と夜のサービス(居住支援事業)に分けることにより、施設の中だけですべての支援を行うのではなく、利用者一人一人の個別支援計画に基づいて、サービスの組み合わせを選択できるようになっています。

 

障害者総合支援法における日中活動系のサービスは、自立支援給付の中の介護給付に位置付けられる「生活介護」と「療養介護」です。

 

「生活介護」は、常に介護を必要とする人に、昼間、入浴、排せつ、食事の介護等を行うとともに、創作的活動又は生産活動の機会を提供するサービス、「療養介護」は、医療と常時介護を必要とする人に、医療機関で機能訓練、療養上の管理、看護、介護及び日常生活の世話を行うサービスです。

 

●訪問系サービス

 

障害者総合支援法における、訪問系のサービスは、「居宅介護」「重度訪問介護」「同行援護」など自立支援給付の介護給付によるものと、「移動支援事業」「生活サポート事業」など、地域生活支援事業によるものがあります。

 

障害者に対するホームヘルプサービスを「居宅介護」といいます。 障害程度区分1以上の障害者に対し、自宅で入浴・排泄・食事等の介護を行います。

 

「重度訪問介護」は、障害程度区分が4以上で、重度の肢体不自由者を対象とする、入浴・食事・排泄の介助ほか、外出時の移動介護などを総合的に供与するサービスです。

 

「同行援護」は、2011(平成23)年10月から新設されたサービスで、視覚障害により、移動が著しく困難な障害者に同行し、移動に必要な情報の提供(外出先での代筆・代読を含む)、移動の援護や外出時の排泄・食事等の介助など、必要な便宜を提供するサービスです。

 

「行動援護」は、知的障害または精神障害により、自己判断能力が制限されている人が行動するときに、危険を回避するために必要な支援、外出時の排泄や食事等の介護、その他必要な支援を行います。

 

●通所系サービス

 

障害者総合支援法による通所サービスは、生活介護事業所、自立訓練事業所、就労移行支援事業所などで行われています。 障害者自立支援法施行前にあった、障害者デイサービスという枠組みはなくなりました。

 

2010(平成22)年の障害者自立支援法の改正により、2012(平成24)年4月から、それまで障害者自立支援法に根拠のあった「児童デイサービス」、児童福祉法に根拠のあった知的障害児・肢体不自由児等の通所サービスは、児童福祉法に基づく「障害児通所支援」に一元化されました。

 

◆入所系サービス(障害者)

 

障害者総合支援法による入所サービスは、障害者支援施設で行われる「施設入所支援」、「共同生活介護(ケアホーム)」、「共同生活援助(グループホーム)」で行われています。

 

施設入所支援事業は、在宅生活が困難となった障害者が障害者支援施設に入所し、住まいの提供と日常生活に必要な介助を受ける事業です。施設に入所する人に、夜間や休日、入浴、排せつ、食事の介護等を行います。

 

共同生活介護(ケアホーム)は、障害程度区分が2以上の身体・知的・精神障害者が入所し、夜間や休日、共同生活を行う住居で、入浴、排せつ、食事等のの介護、家事の援助、生活相談・助言、関係機関との連絡調整などを行います。

 

共同生活援助(グループホーム)は、障害程度区分が1以下の身体・知的・精神障碍者が入所し、夜間や休日、共同生活を行う住居で、相談や日常生活上の援助を行います。

 

介護サービス3 介護サービス提供の場の特性2

(2)介護サービス提供の場の特性

 

◆入所系サービス

 

入所系サービスには、介護保険法上の施設である、指定介護老人福祉施設、介護老人保健施設、指定介護療養型医療施設の3種類と、介護保険法上は居宅サービスに分類されますが、特定施設入居者生活介護が利用できる、軽費老人ホーム、養護老人ホーム、有料老人ホームなどがあります。

 

入所施設には、施設の開放やボランティア等の地域住民の受け入れとなど、地域との連携を通して、地域福祉の中核的な存在として機能することが期待されています。

 

また、入所施設は多くの入所者が集団で生活する場ですので、それまでの自宅での生活をそのまま続けることはできませんが、入所者の尊厳を守り、その人らしく生活することを支援するために、生活習慣などを尊重し、できるだけ入所前との継続性をもたせたケアを行うことが大切です。

 

最近の介護保険施設は、個室・ユニットケアを基本としており(地方自治体によって多床室も認められています)、居宅に近い居住環境で、入居者一人ひとりの生活リズムを尊重し、入所者が相互に人間関係を築きながら日常生活を営めるようなケアを行っています。

 

ユニットケアでは、なじみのある家具などをもちこめる個室とリビングなどの共同生活空間のあるユニットで、概ね10人程度のグループで共同生活を行います。

 

●特別養護老人ホーム

 

「特別養護老人ホーム」とは、老人福祉法上の施設ですが、介護保険法に基づく指定を受けると介護保険法上の「指定介護老人福祉施設」となります。 65歳以上の者(第2号被保険者も可です)であって、身体上または精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とする者で、居宅において介護を受けることが困難な人が入所する施設です。 要介護1以上の人が入所でき、2010(平成22)年の平均要介護度は、3.88となっています。

 

●介護老人保健施設

 

「介護老人保健施設」は、介護保険法に根拠を持つ施設で、慢性期・維持期にあり治療を必要としない状態の高齢者が入所し、家庭への復帰を目指すために、医学的管理の下、看護・介護、作業療法士や理学療法士等による機能訓練、日常生活の世話等を行う施設です。

病院と在宅、あるいは福祉施設との中間に位置付けられるため「中間施設」と呼ばれることもあります。

特別養護老人ホームと同様、要介護1以上の人が入所でき、2010(平成22)年の平均要介護度は、3.32です。

 

人員配置は、医師、看護職員、介護職員、理学療法士、作業療法士または言語聴覚士、介護支援専門員、支援相談員などですが、管理者は医師でなければならず、理学療法士等のリハビリテーション専門職が必置となっています。

 

●指定介護療養型医療施設

 

「指定介護療養型医療施設」は、慢性期の病状が安定した、長期にわたる療法が必要な要介護者を受け入れる施設で、医療法の適用を受ける医療施設です。

介護療養型医療施設は、2012年3月末ですべて廃止される方針が示されていましたが、2017年度末まで延期されることとなりました。

廃止される既存の施設は、「介護療養型老人保健施設(転換型老健)」を中核に、他の介護施設への転換がうながされています。

2010(平成22)年の平均要介護度は4.39です。

 

●軽費老人ホーム

 

「軽費老人ホーム」は、老人福祉法に根拠をもつ老人福祉施設で、「無料又は低額な料金で老人を入所させ、食事の提供その他日常生活上必要な便宜を供与することを目的とする施設」とされています。

 

軽費老人ホームには、A型、B型、ケアハウスの3種類がありますが、2008(平成20)年に基準が改正され、ケアハウスの基準に一元化されました。A型、B型については、現存の施設のみで新設はできなくなりました。

 

「ケアハウス」とは、自炊ができない程度の身体機能の低下があるか、高齢のため独立して生活するには不安があり、家族による援助を受けるのが困難な60歳以上の人が対象の施設です。

 

また、2010(平成22)年度から、大都市部における身体機能の低下した低所得者が利用できる住まい対策として、ケアハウスの居室の床面積・職員配置等の基準を緩和し、利用料の低廉化を図った「都市型軽費老人ホーム」(定員20人以下)ができました。

 

●養護老人ホーム

 

養護老人ホームは、老人福祉法に規定される福祉施設で、主に経済的、社会的理由で居宅の生活が困難な高齢者(原則として自立者)を入所させ、養護することを目的とする施設です。

介護保険施設ではありませんが、2006(平成18)年の介護保険改正により、外部サービス利用型の特定施設入居者生活介護の指定を受けることができるようになりました。

 

◆地域密着型サービス(高齢者)

 

2006(平成18)年の介護保険制度改正により、今後増加が見込まれる認知症高齢者や中重度の要介護高齢者等が、できる限り住み慣れた地域で生活を継続できるように、新たなサービス類型として、地域密着型サービスが創設されました。

 

これにより、それまで都道府県が指定等を行ってきた「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」、「認知症対応型通所介護」、及び新たに創設された「小規模多機能型居宅介護」等については、地域密着型サービス(介護予防含む)として市町村が事業者の指定及び指導・監督を行うこととなりした。

 

地域密着型サービスは、施設などの規模が小さいので、利用者のニーズにきめ細かく応えることができます。利用できるのは、原則として事業者が所在する市町村に住んでいる人に限られます。

 

地域密着型サービスには下記のような事業があります。地域密着型サービスも何らかの形で試験にでると思われますので、ぜひ覚えましょう。

 

●定期巡回・随時対応型訪問介護看護

 

2012(平成24)年の介護保険改正により、重度の要介護者でも必要なときに必要なサービスが受けられ、在宅生活を継続できるよう創設されたサービスです。

 

身体介護を中心とした1日複数回のサービスで、看護や生活援助サービスも一体的に提供し、緊急時には24時間の対応が可能です。

 

ひとつの事業所で訪問介護と訪問看護一体的に提供する「介護・看護一体型」と、訪問介護事業所が地域の訪問看護事業所と連携をしてサービスを提供する「介護・看護連携型」2類型があり、要介護者のみを対象とするため、予防給付はありません。

 

●認知症対応型協働生活介護(認知症高齢者グループホーム)

 

1ユニット9人以下(最大2ユニット、一部3ユニット可)の施設で、認知症の人でも理解できる小規模で家庭的な空間で生活します。

 

1日の決まったスケジュールなどはあまりなく、利用者の生活リズムに合わせたケアが行われますので、その人らしさを維持することが可能となります。

 

●小規模多機能型居宅介護

 

登録定員25人以下の利用者が、「通い」を中心に、「訪問」「宿泊」を合わせたサービスを利用します。

 

事業所の同じスタッフが「通い」「訪問」「宿泊」のサービスを提供しますので、ケアの継続性が保たれ、利用者もなじみのスタッフが対応するため、安心してサービスを受けることができます。

 

●複合型サービス

 

2012(平成24)年の介護保険改正により新設されたサービスで、小規模多機能型居宅介護と訪問看護を組み合わせ、介護と看護を一体的に提供することによって、医療ニーズの高い要介護者でも在宅生活が継続できるよう、支援するサービスです。

 

介護報酬は、要介護度別の定額制となっており、利用者の介護・医療ニーズに応じて、柔軟なサービス提供が可能となります。

 

介護サービス2 介護サービス提供の場の特性1

(2)介護サービス提供の場の特性1

 

介護サービスを提供する場には、大きく分けて「施設」と「居宅」があります。また、介護保険法などの制度上は「居宅サービス」に位置付けられていても、通所サービスや短期入所サービスなどのように、実際の介護は「施設」で行われるものもあります。 (老人福祉法では、デイサービスは施設扱いです)

 

ここでは、それぞれの介護を提供する場の特性を見てみます。 今まで勉強したことと重なることが多いので、ここは確認程度でサラっといきましょう。

 

◆居宅系サービス(高齢者)

 

①訪問サービス

 

介護保険制度において、居宅を訪問するサービスには、訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導などがあります。

 

介護保険制度は、施設入所よりも居宅サービスを重視し、これは高齢者にとっても、できるだけ住み慣れ得た地域の住み慣れた家で生活することが、望ましいと考えられますが、居宅で行う介護の特性として、以下の点などに注意が必要です。

 

・居宅は利用者と家族が長年生活してきたプライベートな場所です。介護従事者は、利用者の生活経験や価値観を重んじ、みだりに家族の生活スタイルに踏み込んではいけません。

・利用者の機能障害や残存機能を把握し、できるだけ主体的に行動できるよう援助します。

・本人の思いと家族の思い、家族の介護負担などを把握します。

・住環境にも目を向け、利用者・介護者にとって使いやすい福祉用具の活用や住宅改修等の情報提供をする。ただし、利便性だけを考えるのではなく、利用者の思いや居心地のよさにも配慮します。

・介護従事者は、自分の五感を使って利用者の状態を丁寧に観察し、利用者の「いつもと違う」状態に気付くことが大切です。

 

利用者の異変に気付いた場合は、できるだけ早く医療関係者と連携をとることが大切です。介護従事者は、医療的な判断や医療行為はできません。 ただし、人命にかかわる緊急の場合は、介護従事者であっても、心肺蘇生などの救急救命処置は行わなければなりません。

 

なお、2005(平成17)年に厚生労働省から「原則として医行為ではないと考えられる行為」についての通知が出され、「介護従事者が行うことのできる医療的行為」が示されました。

 

また、2012(平成24)年4月からは、「社会福祉士および介護福祉士法」の改正により、養成課程で知識と技能を習得した介護福祉士(2015年度以降の国家試験合格者)と一定の研修を修了し、都道府県知事から認定を受けた介護職員等は、基準を満たした登録事業者で行うなどの一定の条件のもとに、痰の吸引と経管栄養の医療行為が行えるようになりました。

 

●訪問介護

 

訪問介護は、居宅サービス計画に沿った訪問介護計画に基づいて実施され、生活援助、身体介護、通院等のための乗車・降車の介助が提供されます。

 

生活援助は、調理、掃除、洗濯、買い物等の支援のことで、比較的軽度の人が多く使う傾向にあります。ただし、家事の代行のような援助の仕方ではなく、予防・自立支援の観点から一緒に家事を行うような支援が必要です。 また、同居家族がいる場合は、生活援助サービスは利用できません。

 

身体介護は、食事、排泄、入浴、黒衣、移動等の援助で、比較的重度の人の利用比率が高くなっています。

 

②通所サービス

 

通所サービスには、通所介護と通所リハビリテーションがあります。

 

ともに、居宅サービス計画に沿った通所介護計画、通所リハビリテーション計画に基づいてだービスが提供されます。

 

●通所介護

 

要介護者等が、日中デイサービスセンターなどに通い、入浴・食事・排泄などの介護とレクリエーション・機能訓練・生活相談などのサービスを受けます。

 

通所介護は、身体機能の維持・向上、社会的な孤立感の解消などにより、利用者の日常生活を活発にする効果のほか、介護者に一定の時間、介護から解放される時間を作ることができ、レスパイトケアとしての介護負担の軽減という効果があります。

 

平成24年の介護報酬改定で、通所介護の時間区分が6~8時間→5~7時間と7~9時間に変更になり、また、最大で12時間までの延長が介護給付として認められるようになりました。

 

●通所リハビリテーション

 

介護老人保健施設や、病院・診療所に通って、医師の判断に基づき、維持期のリハビリテーションを受けるサービスです。

 

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など、リハビリテーションの専門職や医師、看護職員、介護職員などが関わり、機能訓練を行うことによって、利用者の心身機能の回復や、軽度要介護者等の重度化の予防が図られます。

 

介護サービス1

介護を必要とする人への介護サービスは、現在介護保険制度と障害者総合支援制度が中心となって行われています。 「社会の理解」の中での介護保険制度や障害者総合支援制度と重なる部分も多くありますが、大事なところなので、もう一度全体的な概要を把握しておきましょう。

 

(1)介護サービスの概要

 

①介護保険制度上の介護サービス

 

高齢者を介護する場合は、介護保険制度を利用することが多くなります。障害者総合支援制度や医療制度とサービスが重なる場合、基本的には介護保険によるサービスが優先されます。

 

介護保険の被保険者は、第1号被保険者(65歳以上で市町村に住所を有する者)と第2号被保険者(40歳以上65歳未満で市町村に住所を有する医療保険加入者)ですが、サービスを受けられるのは要介護状態・要支援状態と認定された人(第2号被保険者は特定疾病により要介護状態等となった人)です。

 

[参考]

介護保険制度4 介護保険制度の概要2

介護保険制度5 介護保険制度の概要3

 

ただし、要介護状態・要支援状態と認定されていない人でも、介護予防を重要視する観点から、2005(平成17)年の介護保険法改正で創設された「地域支援事業」の中の「二次予防事業」(転倒予防教室など)を利用することができます。

 

●介護サービス利用までの手順

 

介護保険のサービスを利用する場合、まず市町村に要介護・要支援認定の申請を行い、訪問調査や主治医意見書をもとに市町村から要介護・要支援認定を受けた後、ケアプランを作成することになります。

 

ケアプランは自己作成も可能ですが、多くの場合、要介護者は居宅介護支援事業所の介護支援専門員が「居宅サービス計画」を、要支援者は地域包括支援センターの担当者が「介護予防サービス計画」を作成します。

 

要介護・要支援に該当しない二次予防事業の利用者も、市町村が必要と認めた場合は、地域包括支援センターで「介護予防サービス計画」を作成します。

 

これらの居宅サービス計画等への本人の同意が得られた後、居宅サービス計画等に基づき、本人が介護サービス事業者等を選択し、契約、サービス利用へとつながります。

 

[参考]

介護保険制度7 介護保険制度の概要5

介護保険制度8 介護保険制度の概要6

 

●居宅サービス計画の作成と介護支援専門員

 

介護支援専門員が居宅サービス計画を作成する場合、まず、アセスメントによって課題を見出し、ニーズを把握して、サービス計画の原案を作成しますが、この際、本人・家族の意向、自立支援・生活の質の向上などにに配慮しながら定められた目標を踏まえて具体的なサービス計画が作成されます。

 

居宅サービス計画に位置付けられる介護サービス等は、本人の自己決定に基づいて事業所等が選択されますが、介護保険制度上のサービスや行政、医療機関などのフォーマルサービスだけでなく、家族、近隣住民、ボランティアなどのインフォーマルサービスも位置付けていくことが重要です。

 

このようにしてできた居宅サービス計画の原案作成後、本人・家族のほか、関係する事業所や主治医が参加してサービス担当者会議を開催し、各担当者の専門的な見地からの意見を踏まえて、居宅サービス計画が作成されます。

 

その後、居宅サービス計画に基づいたサービスが実施されていきますが、介護支援専門員は、モニタリングを行い、必要に応じてサービス計画の変更や事業所との連絡調整を行います。

 

モニタリングにあたっては、少なくとも1月に1回、利用者宅を訪問して本人に面接をして行い、その結果を記録しなければならないとされています。

 

介護支援専門員の資格については、その資質・専門性の向上を図るため、2006(平成17)年の介護保険法改正により、5年毎の資格の更新制と二重指定制(居宅介護支援事業者の指定とは別に介護支援専門員も指定を受け、個々のケアプランをチェック可能とした)の導入、更新時研修の義務化・体系化が行われました。

 

また、同改正において、主任介護支援専門員が創設されました。 主任介護支援専門員は、5年間の実務経験を持つ介護支援専門員が主任介護支援専門員研修を修了することで資格を与えられ、地域包括支援センターへの配置が義務付けられています。

 

②障害者総合支援法上の介護サービス

 

障害者総合支援法に基づくサービスは、「自立支援給付」と「地域生活支援事業」から構成され、自立支援給付には、介護給付、訓練等給付、自立支援医療などがあります。

 

居宅介護(ホームヘルプ)、短期入所(ショートステイ)などの介護サービスは、「介護給付」の対象となります。

 

●障害者総合支援法の介護サービスを受ける手順

 

障害者総合支援法のサービスを利用する場合、市町村に支給決定の申請を行い、調査やサービス利用の意向の確認を行った後、障害程度区分の認定、支給の決定がなされます。

 

その後、受給者証に記載された内容に基づき、事業者と契約をし、サービスの利用を開始しますが、特に計画的な支援が必要な人に対しては、地域活動支援センターなどの相談支援事業者が「サービス利用計画」を作成します。

 

[参考]

障害者総合支援制度1 障害者総合支援制度の概要

障害者総合支援制度2 障害者総合支援制度のサービス

障害者総合支援制度3 障害福祉サービス利用までの流れ

 

介護を必要とする人の理解3

ここでは、ほぼ今まで出てきた内容が多いので、簡単におさらいしておきましょう。

 

(5)介護を必要とする人の社会生活支援

 

①社会参加支援

 

人間は、自然環境や人工的環境、人とのかかわりなど、社会環境と相互に関係し合いながら、生活を営んでいます。 介護従事者は、介護を必要とする人が生活する上での不自由さや心情に配慮し、利用者が主体的に社会参加し、生きがいを感じて生活できるよう支援していきます。

そのためには、身体機能の維持・改善のほか、社会参加しやすい環境を整えることが必要です。

 

②外出支援

 

●バリアフリー新法

2006(平成18)年にバリアフリー新法(正式名称「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」)が制定されました。 この法律は、それまでのハートビル法(高齢者や身体障害者などが安心して利用できる建築物(ハートビル)の建築を促進するための法律)と交通バリアフリー法(公共交通機関や関連施設のバリアフリー化を促す法律)を統合したものです。

 

バリアフリー新法では、従来は身体障害者のみを対象としていたものを、すべての障害者を対象とし、建物や公共交通機関だけだった対象施設等を拡大しました。

 

バリアフリー新法では対象とする以下の施設等について、新設・改良時のバリアフリー化を義務付けています。 ・鉄道、バス、航空機などの車両、 ・駅、バスターミナルなどの旅客施設、 ・学校、病院、百貨店等多数の人が利用する建築物、 ・これらに、道路や屋外駐車場、都市公園が追加されました

 

●身体障害者補助犬法

2002(平成14)年に身体障害者補助犬法が制定されました。 この法律により、公共交通機関や公共施設で身体障害者が補助犬(盲導犬、聴導犬、介助犬)を同伴して利用することを拒否できなくなりました。

また、同法の2007(平成19)年の改正により、一定規模以上の企業で身体障害者が補助犬を使用して勤務することを拒めなくなりました。

 

③ソーシャル・サポート・ネットワーク

ソーシャル・サポート・ネットワークとは、支援を必要とする人が抱える様々な社会生活上の問題に対して、その人を取り巻く人間関係や公的サービス、社会資源などが連携して支援するネットワークのことをいいます。

 

このネットワークを構成するのは、行政や介護保険・障害者総合支援制度等によるサービス、企業などによるフォーマル・サポートだけでなく、親戚や知人、地域住民、ボランティア等のインフォーマル・サポートも合わせて、利用者の個々の生活状況に応じたネットワークを形成が必要となります。

 

この中で、フォーマル・サポートは、それぞれの専門職が契約によりサービスを提供するため、質の高い安定したサービス提供が期待できます。

 

また、インフォーマル・サポートは制度によらないサポートであるため、フォーマル・サポートでは提供できない部分をカバーし、柔軟で情緒的なサポートを行うことが期待できます。

 

最近では、この両者の特徴を生かした地域でのソーシャル・サポート・ネットワークの形成が重要視されています。

 

④介護者の状況

 

2010(平成22)年の「国民生活基礎調査」によると、主な介護者の続柄は、6割強が「同居している者」であり、その内訳は、配偶者25.7%、子20.9%、子の配偶者15.2%で、女性が7割近くを占めています。

 

この同居している介護者が1日のうちで介護に要している時間は「必要なときに手を貸す程度」が40.2%、「ほとんど終日」が22.8%となっていますが、要介護3以上では、「ほとんど終日」の割合が最も多くなり、要介護5では、半数以上が「ほとんと終日」となっています。

 

介護を必要とする人の理解2

(4)障害のある人の暮らしの実態

 

障害のある人が社会に参加し、自立した生活を送るためには、各種のサービスや社会資源を活用していくことが必要になりますが、障害者がひとりでそれを実現していくことは困難です。 介護福祉士は、障害者が自己選択・自己決定の基づいた身体的・精神的・経済的自立を果たし、障害があってもそうでない人と同じように普通の生活ができるよう、ノーマライゼーションの理念を実現させていくような支援を行う必要があります。

 

ここでは、障害のある人の実態を把握しましょう。

 

●障害者の数

①身体障害児・者の数

・身体障害児・者の総数は、約366万人と推計されている(平成23年)。

・このうち、在宅の身体障害児・者は約358万人と推計されている。

・在宅の身体障害児・者の障害の種類では、肢体不自由が50.5%と最も多く、次いで内部障害30.7%、聴覚・言語障害9.8%、視覚障害と重複障害8.9%などととなっている。

・在宅の身体障害児・者のうち、63.5%が65歳以上の高齢者であり、この割合は年々増加している。

・在宅の身体障害児・者のうち、48.1%が1・2級の重度身体障害者であり、この割合も増加している。

 

②知的障害児・者の数

・知的障害児・者の総数は、約54.7万人と推計されている。

・このうち、在宅の知的障害児・者は、約41.9万人と推計されている。

・施設入所者は12.8万人(23.4%)と推計され、他の障害に比べ施設入所者の割合が高い。

 

③精神障害者の数

・精神障害者の総数は約323万人と推計され(平成20年)、平成17年調査時より約20万人増加している。

・このうち、在宅の精神障害者は290万人と推計され、施設入所者は約1割である。

・疾患別の内訳では、入院入院患者の約6割が統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害、外来患者の約35%がうつ病などの気分(感情)障害となっている。

 

●障害者がある人の生活ニーズ

・2006(平成18)年の調査によると、身体障害児・者のニーズは、「年金や手当などの所得保障の充実」た42.9%と最も多く、次いで「医療費の負担軽減」「在宅福祉サービスの充実」となっている。介助の必要度については、「日常の買い物」「外出」の割合が高くなっている。

・2005(平成17)年の調査によると、知的障害児・者のニーズは、「障害に対する周りの理解」が42.1%と高く、次いで「必要な施設を利用できる制度」「経済的な援助」となている。

・在宅の精神障害者のADL能力で、「食事」は自立が約96%と高くなっているが、「炊事等」は自立が52.1%、「買物」72.0%となっており、「日常生活行動や生活の仕方」「社会の人々とのつきあい方への助言」「安心感をもたせる支援」などが求められている。

 

●障害のある人の生活の保障

①年金

・初診日に国民年金の被保険者であることや受給資格期間を満たしているなどの一定の要件を満たしている場合、障害基礎年金を受給することができる。

・障害厚生年金などは、障害基礎年金に上乗せして支給される。障害基礎年金が1・2級の者に支給されるのに対し、障害厚生年金は3級の者にも支給される。

・障害基礎年金の額は、障害等級によって定められているが、これは身体障害者手帳の等級ではなく、国民年金法施行令に規定されている等級である。

 

②手当等

・20歳未満の在宅の重度障害児(1・2級)を看護している父母または養育者に対し、「特別児童扶養手当」が支給される。

・20歳以上の在宅の重度障害者に対して、「特別あ知障害者手当」が支給される。

・20歳未満の在宅の重度障害児に対して、「障害児福祉手当」が支給される。ただし、前年の所得が一定額以上の場合は除外される。

・納税者自身又は控除対象配偶者や扶養親族が障害者に当たる場合には所得税法上の障害者控除が受けられる。

 

③雇用促進対策

・15歳以上64歳以下の障害者の就業率は、身体障害者43.0%、知的障害者52.6%、精神障害者17.3%と低迷している(平成18年)。

・障害者雇用促進法(1960(昭和35)年成立)により、民間企業は、常用労働者の1.8%以上の障害者を雇用しなければならないとされているが、未だに達成されていない(改善はされてきている)。

・2006(平成18)年の同法改正により、対象となる障害者について、それまでの身体障害者、知的障害者に精神障害者が加えられた。

・障害者の雇用促進は、障害者自立支援法の重点施策である。

・一般企業で働くことができない障害者のために働く場を提供し、社会参加やリハビリテーションの意味も含めた、福祉的就労が行われている。

・福祉的就労は、授産施設、福祉工場、作業所で行われるが、賃金が低いのが実情である。

 

④生活保護制度

・2010(平成22)年度の被保護世帯のうち、33%が障害者世帯・傷病者世帯である。

・身体障害者手帳1~3級などの場合は、生活保護制度における障害者加算を受けることができる。

 

介護を必要とする人の理解1

よい支援を行うには、対象となる人の状態をよく理解する必要があります。ここでは、介護を必要とする人の特徴やおかれている状況を理解しましょう。

 

(1)人間の多様性・複雑性の理解

 

人間は、誕生から老年期、死に至るまでのライフサイクルを経験しながら生きていき、その各時期にそれぞれの発達課題があるとされています。

 

この発達課題は、人が生きてきた環境や文化的背景などの社会との相互作用により、人それぞれ違いがあり、ライフサイクルの個性化が生じてきています。

 

介護福祉士は、この個別性を理解し、一人ひとりの価値観や志向を踏まえて、どのようなことが生活上の支障となっているかを見極めた、「個別ケア」の視点を持つことが重要です。

 

また、利用者を主体的な存在ととらえ、心理的・社会的側面にも配慮し、「その人らしさ」を尊重して援助に当たることが必要です。

 

(2)生活障害と生活ニーズ

 

生活障害とは、病気や障害、加齢などによって、それまでできていた生活動作が困難になることを指します。

 

生活障害を考える場合、単に(麻痺や筋力低下など)身体機能の「障害」としてとらえるだけでなく、生活動作(移動や着替え、食事など)にどのような支障が起こっているかという視点をもつことが必要です。

 

利用者に、どのようなことが生活ニーズとなっているかは、一律の基準があるわけではなく、その人の置かれた生活環境・生活歴などの背景や価値観、また地域や時代によっても変わってきます。

 

それを踏まえて、どのようなことが利用者の生活に支障をきたしているかを的確に把握し、解決方法を導き出すことが大切です。

 

(3)高齢者のくらしの実態

 

①健康状態

 

・2012(平成24)年の高齢者の健康に関する意識調査によると、55歳以上調査対象者の過半数が健康状態について「よい」「まあよい」としている。

・ただし、年齢階級別にみると,「よい」は 55~59 歳では 42.7%を占めているが,年齢階級が上がるほど,「よい」の割合は低くなる傾向がみられ、80歳以上では14.6%となっている。

 

・2010(平成22)年の「人口動態調査」によると、高齢者の死亡場所別の構成割合は、病院77.9%、自宅12.6%、老人ホーム3.5%などとなっている。  また、高齢者の家庭内事故が増加しており、家庭内事故の死亡者数では溺死、窒息が多い。

 

・2011(平成23)年の厚生労働省の調査によると、全国の医療施設での受療患者数は、65歳以上高齢者が入院の約68%、外来の約45%を占めている。

 

・高齢になると身体的・生理的な機能低下が起こり、予備力の低下(とっさのときに反応できない)がみられる。

 

・高齢者は、環境への適応力が低下し、生活環境の変化が心身の健康に影響を及ぼすことが多い。

 

・2010(平成22)年の「国民生活基礎調査」によると、介護が必要となった原因は、脳血管疾患、認知症、高齢による衰弱の順になっている。

 

②世帯

 

我が国では、少子高齢化と核家族化が進み、一人暮らし高齢者と、高齢者のみ世帯の増加が目立っています。

 

・2010(平成22)年の「国民生活基礎調査」によると、65歳以上の高齢者がいる世帯は、世帯全体の4割強に上り、そのうち高齢者単独世帯と、夫婦のみ世帯がそれぞれ半数近くを占めている。

 

・昭和61年には、高齢者の4割以上が子供世帯と同居していたが、平成22年にはその割合は2割以下となっている。

 

・1997(平成9)年以降、「高齢者のいる世帯」は「児童のいる世帯」を上回っています。

 

③高齢者の所得

 

・2010(平成22)年の「国民生活基礎調査」によると、高齢者世帯の1世帯あたりの平均所得金額は、約308万円で、そのうち年金・恩給による収入が最も多く約7割を占め、次いで稼働所得によるものが2割弱となっている。

 

・同調査による所得金額階級別の世帯数分布では、年収250万円未満が母子世帯で55%、高齢者世帯で49%となっている。また、世帯員1人当たりでは、母子世帯で約97万円、高齢者世帯で約198万円となっており、高齢者世帯では、所得格差が大きいことが特徴となっている。

 

・高齢者の生活意識については、「大変苦しい」「やや苦しい」と回答した世帯が51.5%となっている。

 

④レクリエーションと社会活動

 

レクリエーションは高齢者にとって、心身の健康を維持し、QOLを高めるのに有効な手段として、積極的に取り入れられてきています。

 

・2008(平成20)年の「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」では、1年間に高齢者が参加した活動は、「健康・スポーツ」「地域行事」「趣味」などが多く、約6割の人が活動に参加しており、増加傾向にある。

 

・高齢者のためのレクリエーションは、老人クラブを中心に盛んになってきており、高齢者施設においても、機能訓練の一環として活動が行われている。

 

・レクリエーションは、転倒予防、感染予防、閉じこもり予防など、介護予防にも有効であり、日常生活の活性化が重要な視点となる。

 

・高齢者のレクリエーションにおいては、高齢者の多様性に対応したプログラム活動が必要となる。身体機能の維持向上を目的とするもののほか、学習能力向上のためのプログラムも有効である。

 

・高齢者のレクリエーションでは、グループによる活動が有効であるが、その中でも個別性を尊重し、一人ひとりの目標を設定して実施することが必要である。

 

自立に向けた介護3 リハビリテーション2

(2)リハビリテーションの展開過程

 

リハビリテーションは、リハビリテーション計画に基づき、様々な専門職が協働して行います。

その展開過程はケアプランの作成などとほぼ同様ですが、リハビリテーションは、際限なく続くものではなく、目標と期間を決めて計画を立て、目標に到達して終了することを目指すものです。

 

リハビリテーションの展開過程はおおむね以下のようになっています。

①インテーク(受理面接)

②アセスメント(事前評価)

③プランニング(計画策定)

④アプローチ(プログラムの実行)

⑤効果測定(評価)

 

③プランニングの段階では、本人、保護者等(家族)が参加し、最終的に達成したい目標に対する「長期計画」と、それを段階的に達成していくための「短期計画」に基づき、計画の原案を作成し、リハビリテーションカンファレンスによって、各専門職の意見を取り入れて計画を作成します。

 

そのうえで、説明と同意(インフォームド・コンセント)を経て、④アプローチの段階に進みます。

 

⑤の効果測定によって満足できる効果が得られた場合は計画終了となりますが、そうでない場合は、③プランニングに戻り、同様の過程を繰り返します。

 

(6)リハビリテーションの専門職

 

リハビリテーションは、治療や訓練を行う専門職、相談や調整を行う専門職など、様々な専門職によって、チームアプローチで展開されます。

ここでは、リハビリテーションにはどのような専門職が関連しているかを確認しておきましょう。

 

①医師

治療等の医学的処置を行うとともに、各専門職に対して指示を出します。リハビリテーション医学会の認定を受けたリハビリテーションの専門医をリハビリテーション医(正式にはリハビリテーション科専門医)といいます。

 

②看護師

急性期における変形・拘縮・褥瘡の予防のための看護や回復期におけるADL指導、退院に向けた家族指導などを行います。

 

③理学療法士(PT)

医師の指示に基づき、身体に障害のある人の、身体機能の検査・評価を行い、機能回復訓練や日常動作訓練、電気治療、マッサージなどの物理療法を実施し、基本的動作能力の回復を図ります。

 

④作業療法士(OT)

医師の指示に基づき、手芸・工作などの作業を治療手段として、身体に障害がある人への応用動作能力、精神に障害がある人への社会的適応能力の回復を図ります。

 

⑤言語聴覚士(ST)

言語機能、音声機能、聴覚に障害のある人に対し、検査・評価を行い、コミュニケーション能力回復訓練、助言などを行います。 また、嚥下困難者に対する支援も行います。

 

⑥義肢装具士

医師の指示に基づき、四肢切断者に対する義足・義手の作成、麻痺などによる四肢の機能障害等に対し、装具を制作し、身体に適合させます。

 

⑦視能訓練士

医師の指示のもと、眼科での視機能の検査、斜視や弱視などの視機能障害を持つ人に対する、機能を回復させるための視能訓練や治療をを行います。

 

⑧精神保健福祉士

精神保健福祉領域のソーシャルワーカーです。 精神に障害がある人の生活問題や社会問題の解決のための援助や、社会参加に向けての支援を行うため、相談、助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練などの援助を行います。

 

⑨医療ソーシャルワーカー

医療機関における福祉職で、患者や家族の抱える諸問題に対する相談・助言を行ったり、社会復帰や社会資源の活用のための支援を行います。 リハビリテーションチームにおいては、効果的にプログラムが受け入れられるよう、患者・家族と各専門職間の連絡調整を行います。

 

⑩臨床心理士

障害を持った人への心理状態の評価や、心理療法などの心理的サポートを行います。

 

⑪障害者職業カウンセラー

知能性格検査・適職検査などを行い、就職する上で障害となっている問題を解決に導くなど、障害者の適性に合った職業に就けるようサポートします。 地域障害者職業センターに配属され、職業リハビリテーションを行う専門職です。

 

⑫職場適応援助者(ジョブコーチ)

障害者の就職や職場適応を支援する専門職です。 支援計画に基づき、事業所や障害者の家族も対象に支援を行います。 地域障害者職業センターに配置される配置型ジョブコーチのほか、就労支援を行う社会福祉法人、障害者を雇用する企業に雇用されるジョブコーチもあります。

 

以上がリハビリテーションに関わる主な専門職ですが、①~⑧は国家資格です。⑨の医療ソーシャルワーカーは国家資格である社会福祉士が行うことが多いようですが、ソーシャルワーカー自体は国家資格ではありません。

 

このほか介護福祉士も、利用者に応じた介護の提供や家族の指導等で、リハビリテーションとのかかわりをもつ専門職であるといえます。

 

自立に向けた介護2 リハビリテーション1

(1)リハビリテーションとは

 

「リハビリテーション」というと、病院や老人保健施設などで理学療法士などによって行われる、いわゆる「機能回復訓練」であると考えがちですが、障害等のある人が社会的な統合を目指すためのあらゆる手段のことを指します。

 

「リハビリテーション(rehabilitation)」の語源は、re(再び)habilis(適した)ation(~にすること)で、人が人間としてふさわしくない状態に陥ってしまった場合にそれを再びふさわしい状態に戻すということがリハビリテーションの意味するところです。

 

すなわち、身体的な障害を回復させるだけでなく、人が社会に適応しにくい様々な状態を、社会に適応できるよう回復させる「全人的復権」(この言葉は覚えましょう)を目指すものです。

 

このようなことから現在では、リハビリテーションの目的を、「残存能力を最大限に活かして、QOLの向上を目指すこと」と考えられています。

 

そのためには、ADLに着目した援助方法を考えるだけでなく、利用者の主体性を尊重し、社会性活力(SFA=Social Functioning Ability)の獲得が重要だと考えられるようになりました。

 

主なリハビリテーションの分野は以下のとおりです。

 

①医学的リハビリテーション

病院などの医療機関や老人保健施設のほか、訪問リハビリテーションなどで行われるものです。

幅広い専門職種が連携し、ケガや病気などで心身の機能・構造に障害が発生した場合に、機能回復訓練などを通して、障害を改善し、利用者の自立や社会参加を促します。

医学的リハビリテーションでは 急性期・回復期・維持期 に各期のリハビリテーションが行われます。

・急性期

通常は発症より2週間から1ヶ月に行われ、廃用症候群や疾患の悪化を予防します。

・回復期

2週目位から3ヶ月間程度の期間(病気の発症から2か月以内)で、概ね病状が落ち着いた状態から、在宅復帰を目指したプログラムを作成し、日常生活動作の訓練などを行います。 ・維持期

急性期・回復期リハビリテーションによって獲得された機能や能力の維持・改善、社会参加や介護負担の軽減を重点に行われます。

 

②教育リハビリテーション

肢体不自由児、視覚・聴覚障害児、知的障害児、発達障害児などの障害をもった小児に対し、運動機能、情緒、言語などのそれぞれの状態に合わせた教育的支援を行い、身体・精神の自立と社会適応の向上を目指します。

2006(平成18)年の学校教育法の改正により、特別支援教育として障害種別に関わらず、個々のニーズに対応した教育が行われています。

 

③職業リハビリテーション

職業リハビリテーションは、「職業指導、職業訓練、職業選択などの職業的なサービスの提供を含んだ、継続的、総合的なリハビリテーションの一部であって、障害者の適切な就職の確保と継続ができるように計画されたもの」と定義されています(1955年ILO(国際労働機関)勧告)。

職業評価や職業指導・相談、職業訓練、職業紹介などを行います。

 

④社会リハビリテーション

社会リハビリテーションは、「社会性活力を高めることを目的としたプロセスである。社会性活力とは、さまざまな社会的状況の中で自分のニーズを満たし、一人ひとりに最大限の豊かな社会参加を実現する権利を行使する能力を意味する」と定義されています(1986年RI(国際リハビリテーション協会)の定義)

家族関係を含めたさまざまな社会システムで、障害者の社会参加の妨げとなっている要因を排除し、社会参加を実現するためのすべてのアプローチのことを指します。

 

⑤地域リハビリテーション

地域リハビリテーションとは、障害のあるすべての人々のリハビリテーション、機会の均等、社会的統合を地域の中で進めることを目指しています。

地域住民の障害への理解を促進し、地域ぐるみで本人・家族とともに保健医療、教育、職業および社会サービスなど地域の社会資源が一体となって障害のある人との生活を実現する努力を行っていきます。

 

自立に向けた介護1

この科目の重要ポイントは、ICFとリハビリテーションです。特にICFに関する問題は必ず出ると思われますので、考え方や各要素の構成、語句の意味など、何度も読み返してきちんと覚えましょう。

 

(1)自立支援

 

介護において「自立支援」が重要なことは何度も述べています。

 

利用者が、障害等により介護が必要な状態であっても、自己決定、自己選択に基づいて主体的に生きることが重要であり、それを支援するのが自立支援であると言えます。

 

自立には、身体的自立、精神的自立、経済的自立、社会的自立などがあります。介護の場面では、身体的自立が重要視されがちですが、精神的自立、社会的自立があって初めて、自立した生活を送ることができるようになります。

 

自立支援を行っていくためには、手を出す介護ではなく、利用者のもっている力を活用することが大切です。

 

本人のもっている強さや力、能力を「ストレングス」といい、そのストレングスである能力を発揮したり、意欲を引き出すことによって、自ら問題解決する能力を身につけていくことを「エンパワメント」といいます。

今日では、このストレングス、エンパワメントを活用した支援を行うことが重要視されています。

 

(2)個別ケア

 

利用者は、をの身体状況、生活歴、価値観などがすべて違い、一人ひとり個別の存在です。また、高齢になると健康状態の個人差が大きくなり、症状の出方も人によってさまざまです。

 

利用者それぞれが、その人らしい生活を送るためには、一人ひとりのアセスメントをきちんと行い、その人の状況に合わせた個別のケアを行うことが必要です。

 

なお、個別ケアを行うには、疾病や障害に応じた個別の介護技術と生活歴や価値観をふまえた個別の生活支援という2つの視点が必要になります。

 

(3)ICFに基づくケア

 

1980年にWHO(世界保健機構)によりICIDH(国際障害分類)が定められ、障害を3つのレベルに分類しました。

 

ICIDHでは、障害を「機能障害」、「能力障害」、「社会的不利」の3つの側面からとらえています。すなわち、病気や変調ががあると機能障害が起こり、それが原因となって能力障害が生じ、さらも能力障害が社会的不利を引き起こすという考え方です。

 

これに対し、「個人にのみ着目し、環境的要素が含まれていない」「障害をマイナス要因としてのみとらえている」等の様々な指摘があり、「医学モデル」として批判されたICIDHモデルからの脱却を図った「社会モデル」「生活モデル」としてのICFモデルが2001年に定められました。

 

ICF(国際生活機能分類)では、プラス面を重視するようになり、機能障害は「心身機能・構造」、能力障害は「活動」、社会的不利は「参加」という言葉を用いるようになりました。

 

そして、これらをまとめて「生活機能」という枠組みでとらえ、これらが障害された状態のことを、それぞれ「機能・構造障害」、「活動制限」、「参加制約」と呼んでいます。

 

つまりICFでは、生活機能のプラス面を重視するものの、人生を全体像としてとらえ、マイナス面も含んだ中立てきな概念でとらえています。

 

また、ICFのもう一つの重要なポイントは、障害を個人の問題(個人因子)としてだけとらえるのではなく、環境との関係(環境因子)によって影響を受けるものであるとしていることです。

 

ICFは、この個人因子と環境因子を「背景因子」として、生活機能と障害に影響する因子として取り上げ、これらの要素が相互に影響する総合的なモデルとなっています。

 

icf

 

各語句の具体的な意味は下記の通りです。

 

・健康状態:病気や体の変調、怪我、の他高齢・ストレスなども含む。

 

・心身機能:精神機能や身体の生理的機能、運動機能や視覚・聴覚などの感覚機能。

 

・身体構造:器官や肢体がどうなっているかなど、身体の解剖学的な構造。

 

・活動:歩行などの日常生活動作から、家事などのIADL、仕事も含め、行動のことを指す。

※ICFでは、本人が実際に行っている「している行動」と本人の能力である「できる行動」の2つの視点でとらえている。

 

・参加:社会的参加のこと。生活や人生場面へのさまざまなかかわりのことを指す。

 

・環境因子:物的環境(建物の構造、交通機関、福祉用具など)、人的環境(家族、友人、同僚、上司など、周囲の人々の障害者に対する意識も含む)、制度的環境(法律、医療・介護サービスなど)にわけられる。マイナス(阻害因子)だけでなくプラス(促進因子)にもなりうる。

 

・個人因子:個人の人生や生活の特別な背景。年齢、性別、生活歴、価値観、ライフスタイル、などその人の個性ともいえるもの。

 

 

尊厳を支える介護

今まで何度も出てきた介護に関する考え方です。問題に出てきたら必ず正解できるよう、しっかりと身につけましょう。

 

(1)尊厳を支えるケア

 

社会福祉法では「福祉サービスは、個人の尊厳の保持を旨とし」、介護保険法では、「これらの者(要介護状態等の者)が、尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう」などと明記され、「尊厳の保持」は、現在の介護における重要なキーワードとなっています。

 

障害があっても、その人らしい生き方を尊重した、自立した日常生活ができるよう、ADL(日常生活動作)の自立とQOLの向上を図るケアを行うことが必要です。

 

(2)QOL

 

QOL(Quality of Life)は「生活の質」「人生の質」「生命の質」などと訳されます。

 

ADLの向上のみに着目するのではなく、利用者が望む、その人らしい生き方を尊重し、自立した生活が送れるよう支援することが、QOLの向上につながります。

 

QOLに似ている言葉にROL(Respect of Life)があります。「尊厳のある生活」と訳され、利用者が尊厳をもって生きられるよう支援することが重要です。

 

 

(3)ノーマライゼーション

障害のある人も、そうでない人と同じように、住み慣れた地域や家で、普通に生活する権利があります。

この言葉については、「介護における尊厳の保持と自立支援1」に掲載していますので、確認してください。

 

もともと、知的障害の分野で生まれた理念ですが、現在ではあらゆる福祉の分野に共通する普遍的な理念として定着しており、障害をもった人が、様々な社会生活の場面で、障害のない人と同様の権利を与えられることを目指しています。

 

(4)利用者主体

 

介護は、介護者主導で行うのではなく、あくまでも利用者の主体性を尊重して行わなければなりません。

 

そのためには、利用者が自らの意思で自己選択する「自己決定権」を行使できるよう支援し、介護者側は、十分な情報を利用者が理解できるように提供する必要があります。

このような姿勢で介護を行うことが、「尊厳を支える介護」へとつながっていきます。

 

介護福祉士の役割と機能を支えるしくみ2

(3)介護福祉士の義務

 

社会福祉士及び介護福祉士法では、介護福祉士について6つの義務等が規定されています。義務を怠ったときの罰則も含めて覚えておきましょう。 なお、「誠実義務」と「資質向上の義務」は、2007(平成19)年の同法改正により追加されました。

 

①誠実義務

「個人の尊厳を保持し、その有する能力及び適性に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、常にその者の立場に立って、誠実にその業務を行わなければならない。」と規定されています。

 

②信用失墜行為の禁止

「介護福祉士の信用を傷つける行為をしてはならない」と規定されています。 この規定に違反した場合、登録の取り消しまたは期間を定めて介護福祉士の名称の使用の停止を命ずることができます。

 

③秘密保持義務

「正当な理由なく、その業務に関して知りえた人の秘密を漏らしてはならない」と規定されています。これは、介護福祉士でなくなった後も同様です。 この規定に違反した場合、「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられます。 また、信用失墜行為の禁止と同様、登録の取り消しまたは期間を定めて介護福祉士の名称の使用の停止を命ずることができます。

 

④連携

前出の通り「その担当する者に、認知症であること等の心身の状況その他の状況に応じて、福祉サービス及びこれに関連する保健医療サービスその他のサービスが総合的かつ適切に提供されるよう、福祉サービスを提供する者等との連携を保たなければならない。」と規定されています。

 

⑤資質向上の責務

「介護を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、介護等に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。」と規定されています。

 

⑥名称の使用制限

介護福祉士でない者は、介護福祉士という名称を用いてはなりません。 介護福祉士の名称の使用の禁止を命ぜられた期間中に、介護福祉士の名称を使用した場合、30万円以下の罰金に処せられます。

 

また、2011(平成23)年の同法改正により、介護福祉士の業に喀痰吸引等が加えられたことに伴い、その要件を満たさずに、喀痰吸引等の行為を行った場合にも、罰則規定が追加されました。

 

(4)専門職脳団体の活動

 

介護福祉士の職脳団体として、「日本介護福祉士会」があります。

1994(平成6)年に設立され、介護福祉士の職業倫理の向上、介護に関する専門的教育及び研究、介護福祉士の能力向上のための生涯研修制度などを行っています。

 

また、日本介護福祉士会では、「日本介護福祉士会倫理綱領」を定め、「利用者本位・自立支援」「専門的サービスの提供」「プライバシーの保護」「総合的サービスの提供と積極的な連携、協力」「利用者ニーズの代弁」「地域福祉の推進」「後継者の育成」を介護福祉士行動規範として掲げています。

 

ときどきこの倫理綱領から問題が出されることがありますので、何度か読み返しておくとよいでしょう。

日本介護福祉士会倫理綱領

介護福祉士の役割と機能を支えるしくみ1

(1)介護福祉士とは

少子高齢化が進み、高齢者・障害者の福祉ニーズが多様化する中、それに対応できる人材を確保するため、1987(昭和62)年に「社会福祉士及び介護福祉士法」が制定され、国家資格である「介護福祉士」が法律で定められました。

 

介護福祉士の国家試験は、この法律に基づいた試験ですので、必ず出題されます。業務内容、言葉の意味、義務などの要点はしっかりと覚えましょう。

 

この法律で、介護福祉士とは、 「登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、身体上または精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うことを業とする者」 と規定されています。

 

ここでのポイントは、

・登録を受け:試験に合格して、介護福祉士となる資格を有しても、介護福祉士登録簿に厚生労働省令で定める事項を登録しないと介護福祉士ではありません。

・介護福祉士の名称を用いて:「名称独占」であることです。すなわち、介護福祉士でなくても介護の業務はできますが、介護福祉士の名称を使えるのは介護福祉士だけです。 (医師のように資格がないとその業務ができないものは「業務独占」です)

・その者及びその介護者に対して~:本人だけでなくその家族等の介護者に対する指導も介護福祉士の業務とされています。

 

また、下記の欠格事由に該当する者は、社会福祉士または介護福祉士になることはできません。

・成年被後見人または被保佐人

・禁固以上の刑に処せられ、執行が終わってから2年を経過しない者等

・この法律の規定、その他社会福祉・保健医療に関する法律で、罰金刑に処せられ、執行が終わってから2年を経過しない者

・規定により社会福祉士または介護福祉士の登録を取り消され、取り消しの非から2年を経過しない者

 

(2)介護福祉士の職務

 

①心身の状況に応じた日常生活の介護

介護福祉士は、身体上または精神上の障害があるために日常生活を営むのに支障がある者に対し、その心身の状況に応じて、入浴、排せつ、食事などの日常生活の介護を行います。

2011(平成23)年の社会福祉士及び介護福祉士法の改正により、2012(平成24)年4月から、介護福祉士の業に「喀痰吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であって、医師の指示の下に行われるもの」が加えられ、喀痰吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)と経管栄養(胃ろうまたは腸ろう、経鼻経管栄養)が実施できるようになりました。

これには、実地研修等を修了すること、医師の指示に基づくこと、実施計画書・報告書等を作成すること等、医療関係者との連携、安全確保のための体制を確保すること、などの要件を満たすことが必要です。

 

②利用者とその家族への指導

介護福祉士は、利用者とその家族に対し、介護に関する指導・助言を行います。 利用者への介護に加え、家族の心情を理解し、適切なアドバイスを行うことによって、精神的・身体的な負担を軽減することが重要です。 たとえ間違っていても、家族の介護方法を非難・批判してはいけません。

 

③利用者の社会的自立、住環境の整備を支援

利用者に介護を提供するだけでなく、利用者の身体的・精神的・社会的自立を支援します。レクリエーションなどを通し、生きがいをもって生活できるよう支援することが重要です。 また、利用者が自立して生活できるよう、住環境の整備や福祉用具の活用などについて、指導・助言することも介護福祉士の業務です。

 

④介護予防

介護福祉士は介護予防の視点を持つことも重要です。 そのためには、できないことを補うだけでなく、できることに着目し、残存機能を活用することや、リハビリテーションによる自立度の維持・向上に努めることが大切です。

 

⑤医療関係者との連携

社会福祉士及び介護福祉士法に「介護福祉士は、その業務を行うに当たつては、その担当する者に、認知症であること等の心身の状況その他の状況に応じて、福祉サービス等が総合的かつ適切に提供されるよう、福祉サービス関係者等(福祉サービス及びこれに関連する保健医療サービスその他のサービス)との連携を保たなければならない」と規定されており、医師、看護師など保健医療関係者との連携をとらなければなりません。

 

介護福祉士を取り巻く状況2 介護問題の背景

日本の介護問題の背景には、少子高齢化がありますが、特に他の国に比べて、高齢化のスピードが著しく速いこと、後期高齢者が多いなど高齢化の程度が著しいこと、家族の小規模化などによる家族機能の低下、社会構造の変化や地域社会の崩壊など社会の変化が同時に起きていることなどが特徴として挙げられます。

 

(1)高齢化

 

我が国の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は、2011(平成23)年の10月1日現在23.3%(総人口約1億2,780万人、高齢者人口約2,975万人:前年2,925万人)ですが、それに至るまでの変化は、

  • 高齢化社会(高齢化率7%):1970(昭和45)年
  • 高齢社会(高齢化率14%):1994(平成6)年
  • 超高齢社会(高齢化率21%):2007(平成19)年

となっています。

 

この高齢化社会から高齢社会に至る期間は、日本では24年ですが、アメリカ69年、ドイツ42年、フランス114年など、ほとんどの国が日本の2倍以上です。

 

また、日本の平均寿命(0歳児の平均余命)は、2011(平成23)年で、女性85.90年、男性79.44年となっており、世界でもトップクラスの長寿国です。

 

これに伴い、後期高齢者(75歳以上)の増加も著しく、2011(平成23)年で1,471万人(総人口の11.5%)ですが、2017(平成29)年には、後期高齢者が前期高齢者を上回ると予想されています。

 

(2)社会の変化

 

従来、第一次産業中心の時代では、介護は家族制度の中で主に女性が担ってきました。

 

それが、第二次・第三次産業へと産業構造が変化する中で、人口が都市部へ流出し、女性が社会進出することによって、家族の小規模化や家族機能の変化が生じ、家族で介護を行うことが困難になってきました。

 

2010(平成22)年の国民生活基礎調査によると、主な介護者は同居の家族が64.1%(別居家族9.8%、事業者13.3%)と最も多く、同居家族の内訳では配偶者25.7%、子20.9%、子の配偶者15.2%となっています。 また、介護者の年齢別、性別では、60歳以上が62.1%、女性が69.4%となっています。

 

このような統計からも、小規模家族の中で高齢者が高齢者を介護する老老介護が増加していることが伺えます。

 

この他、地域コミュニティのぜい弱化も進んできており、介護を家族や地域で支えることが困難になっています。

 

そこで、介護保険制度などの導入により、必要なときに十分な介護サービスを利用できる仕組みを作り、介護を社会全体で支える「介護の社会化」が進められています。

 

少子化に関する統計としては、「15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの」である、合計特殊出生率の減少があげられます。

 

合計特殊出生率は、2005(平成17)年に、それまでの最低の1.26まで減少し、その後やや回復し、2010(平成22)年には、前年の1.37を上回る1.39となりましたが、2011(平成23)年も1.39と、横ばい傾向にあるといえます。

 

また、、2005(平成17)年の国勢調査では、日本の総人口が1億2776万8000人で、前年を約2万20000人下回っており、日本は人口減少時代に突入したともいうことができます。

 

このようなことから、今後ますます高齢化が進み、2035年には国民の3人に1人、2060年には2.5人に1人が高齢者になると推測されています。

 

(3)高齢者虐待の社会問題化

 

急速な高齢化の進展、家族の介護機能の低下、介護者への負担の増加などを背景に、高齢者虐待が社会問題化しています。

 

介護福祉士等、介護に従事する者は、虐待を早期に発見できる立場として、高齢者虐待棒に貢献することが期待されています。

 

事実、平成23年度の調査によると、養護者による虐待の通報者は、「介護支援専門員等」の介護関係者が42.4%で最も多くなっています。

 

介護福祉士を取り巻く状況1 介護の歴史

日本における介護の歴史をみると、老人福祉法制定以前は、聖徳太子による日本初の救済施設である四箇院に始まり、古代の律令制度による救済と家族介護を中心に、1874年の恤救規則や1929年の救護法が制定されるなど、主に救貧的な制度が中心でした。

 

1963(昭和38)年に老人福祉法が成立すると、特別養護老人ホーム等の施設や家庭奉仕員派遣事業が法制化され、介護を行う職員が法律上規定されました。

 

この時期の介護は、非専門職によって行われていましたが、施設介護の質の向上が図られるようになり、1987(昭和62)年に社会福祉士及び介護福祉士法が成立し、国家資格である護福祉士という介護の専門職が生まれました。

 

その後、1994(平成6)年に「新たな高齢者介護システムの構築を目指して」の報告書が出され、「自立支援」が介護の基本理念として掲げられ、2000(平成12)年の介護保険制度施行とともに、その理念が確立されてきています。

 

社会福祉士及び介護福祉士法は、2007(平成19)年に改正が行われ、近年の介護・福祉ニーズの多様化・高度化に対応し、資質の向上を図る必要性から、資格取得に必要な講義、演習、実習の教育内容や時間数が見直され、すべての者は一定の教育プロセスを経た後に国家試験を受験するという形で、資格取得方法が一元化されました。

 

また。2011(平成23)年の改正では、介護福祉士が、業務として喀痰吸引や経管栄養を実施することができるようになりました。

 

これにより、2015(平成27)年の介護福祉士国家試験に医療的ケアの内容が追加され、養成課程にも喀痰吸引等の基本研修が組み込まれました(実際に行為が行うには、演習・実地研修が必要です)。

 

喀痰吸引等の行為は、2015(平成27)年以降の介護福祉士のほか、登録研修機関による「喀痰吸引等研修」を受講する方法もあります。

 

介護実践に関連する諸制度7 生活保護制度の概要

(1)救貧制度の発展

 

わが国で最初の統一的な公的扶助制度は1874(明治7)年の「恤救(じゅっきゅう)規則」です。 当時の救貧政策は、血縁的な助け合いの精神を基本としており、恤救規則では、それに頼ることができない身寄りのない者、労働不能の70歳以上の者、障害者などを対象とする限定的なものでした。

 

その後、1929(昭和4)年に「救護法」を経て、1946(昭和21)年に「旧生活保護法」、1950(昭和25)年に現行の「生活保護法」が制定されました。

 

現行の「生活保護法」は、憲法第25条の「生存権」を具現化する法律であり、国家の義務として、生活に困窮するすべての国民を対象としています。

 

生活保護法はとても出題されやすい分野ですので、用語の意味などをしっかり覚えましょう。

 

(2)生活保護の原理・原則

 

生活保護には「4つの原理」と保護を実施するための「4つの原則」があります。 どれも重要ですので、その意味も合わせて覚えましょう。

 

◆生活保護の原理

  1. 国家責任の原理
  2. すべての国民に対し、国家責任のもとに、必要な保護を行い、最低限度の生活を保障するとともにその自立を助長する。

  3. 無差別平等の原理
  4. すべての国民は、身分や困窮の原因などによらず、無差別平等に保護を受けることができる。

  5. 最低生活保障の原理
  6. この法律により保障される水準は、健康で文化的な最低限度の生活を保障するものである。

  7. 保護の補足性の原理
  8. 保護は、保護を受ける人が利用しうるあらゆる資産や能力、扶養義務者の扶養、他の法による扶助を活用しても、なお最低限度の生活ができない場合に補足的に行われる。

 

◆生活保護の原則

  1. 申請保護の原則
  2. 保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の親族の申請に基づいて開始する(申請がなければ開始しない)。ただし、要保護者が急迫した状態の場合は申請がなくても保護を行うことができる。

  3. 基準及び程度の原則
  4. 保護は厚生労働大臣の定める基準により測定した需要に基づき、その人のもつ金銭等を活用した不足分を補う。
     この基準は、年齢、性別、世帯構成、所在地その他保護の種類に応じたものが定められている。

  5. 必要即応の原則
  6. 保護は、要保護者の年齢、性別、健康状態等による実際の必要性に応じて、有効で適切に行われる。

  7. 世帯単位の原則
  8. 保護は世帯を単位として行われる。ただし、これによりがたいときは個人を単位とすることができる(世帯分離)。

 
(3)保護の種類
 
生活保護には8種類の扶助があります。問題に出やすいので必ず覚えましょう。特にすぐに思い浮かばない、生業扶助や葬祭扶助などは要注意です。
 

  1. 生活扶助
  2. 日常生活の需要を満たすための費用。第1類(個人単位)として食費、被服費等、第2類として光熱水費等がある。
    この他、移送費、地域別の冬季加算、施設入所者の生活費などがある。

  3. 教育扶助
  4. 義務教育に必要な学用品や給食費、交通費等の費用

  5. 住宅扶助
  6. 借家、借間の家賃、自己所有の住居に対する土地の地代などと、修繕費などの住宅維持費

  7. 介護扶助
  8. 要介護状態等にある被保護者が介護サービスを受けた場合に支給される。
    介護保険の被保険者の場合は、補足性の原理により、介護保険の給付が優先され、自己負担部分に対し保護が適用される(施設入所者の食費の負担も保護が適用)。
    被保険者でない場合は、介護サービスが現物給付される。

  9. 出産扶助
  10. 助産及び分娩に伴って必要となる衛生材料費等

  11. 生業扶助
  12. 生業費(小規模の事業を営むための資金・器具・資料等)、技能習得費、就職支援費(就職に必要な洋服類等の費用)

  13. 葬祭扶助
  14. 被保護者が死亡した場合の遺体の検案、運搬、火葬、埋葬等の費用

  15. 医療扶助
  16. 入院、診察、手術、薬剤、治療材料、移送費等

 
保護には、必要な物品を購入するための費用を金銭によって給付・貸与する「金銭給付」と、金銭以外の物品や医療、介護などのサービスを給付・貸与する「現物給付」の方法があります。
 

保護の8種類のうち、介護扶助と医療扶助は原則として「現物給付」、それ以外は原則として「金銭給付」により給付が行われます(ともに例外あり)。
 

※介護扶助についての補足
 

生活保護と介護保険の関係は、出題されやすいので整理しておきましょう。
 

まず、65歳以上の人と40歳以上65歳未満の人で医療保険加入者の場合は、介護保険の被保険者となりますので、補足性の原理によって介護保険が優先されます。
 

介護保険のサービスを利用した場合は、9割を介護保険から、1割の自己負担を生活保護の介護扶助から支給されます(居宅介護支援費は10割介護保険からの支給です)。
施設入所者の食費や居住費などの自己負担分も介護扶助からの支給されます。
介護保険の保険料は、生活保護の生活扶助から支給されます。
 

40歳以上65歳未満の医療保険未加入者(ほとんどの被保護者が該当します)は介護保険の被保険者ではありませんので、介護保険の適用もありません。
 

同様のサービスはすべて生活保護の介護扶助から支払われますし、当然介護保険の保険料は支払いません。
 

(4)保護施設
 

保護施設は、居宅において生活を営むことが困難な者を入所・利用させる施設で、以下の5種類があります。
 

  1. 救護施設
  2. 心身の著しい障害があるために日常生活を営むことが困難な要保護者を入所させて生活扶助を行う施設

  3. 更生施設
  4. 心身上の理由により養護及び生活指導を必要とする要保護者を入所させて、生活扶助を行う施設で、要保護者の社会復帰を目的とする。

  5. 医療保護施設
  6. 医療を必要とする要保護者に対して、医療の給付を行うことを目的とする施設。

  7. <授産施設/li>
    心身上の理由又は世帯の事情により就業能力の限られている要保護者に対して、就労又は技能の修得のために必要な機会及び便宜を与えて、その自立を助長することを目的とする施設。

  8. 宿所提供施設
  9. 住居のない要保護者の世帯に対して、住居扶助を行うことを目的とする施設

 
(5)保護受給者の権利と義務 

  1. 生活保護受給者の権利
  2. ・正当な理由なく、保護費を減らされるなど。すでに決定された保護の内容を変更されることはない
    ・保護により支給された金品には、税金をかけられたり、差し押さえられたりすることはない
    ・届出、指示に従う義務

  3. 生活保護受給者の義務
  4. ・保護を受ける権利を他人に譲渡することはできない
    ・能力に応じた勤労、支出の節約、生活の維持向上に努めなければならない

 

介護実践に関連する諸制度6 医療に関する法的な規制

(1)病院と診療所

 

病院や診療所などの医療施設は、医療法によって「公衆または特定多数人のため医業または歯科医業を行う場所」とされ、種別の定義や人員配置、構造設備の基準などが定められています。

 

医療法では、下記のような病院・診療所のほか、厚生労働大臣が承認する病院が規定されています。

  • 病院:20人以上の患者を入院させる施設で、精神科病院、結核診療所、一般病院で構成される
  • 診療所:患者を入院させる設備を有しない、または19人以下の患者を入院させる施設
  • 特定機能病院:高度な医療技術や設備をもち、特定の診療科を有するなどの条件を満たし厚生労働大臣が承認した病院
  • 地域医療支援病院:地域の他の医療機関を支援することを目的とし、地域医療の中核を担う病院としての設備を有するもので、都道府県知事が承認した病院

 

医療法では、保健医療サービスが提供される場について、「医療提供施設はその機能に応じ効率的にかつ、福祉サービスその他関連するサービスとの有機的な連携を図りつつ提供されなければならない」とされていますが、社会福祉士及び介護福祉士法においても、「介護福祉士は他の福祉サービス従業者と医師等の医療保健サービス従事者との連携を保たねばならない」としており、医療と福祉の連携は重要なポイントとなっています。

 

また、現在では「インフォームド・コンセント」と「セカンド・オピニオン」が制度化されており、患者側の自己決定権などの権利が守られるようになりました。

 

インフォームド・コンセントとは、「説明に基づく同意」と訳され、患者の状態や治療方法、検査の目的や内容を患者に分かる言葉で正しく説明することが義務付けられています。 治療の危険性も正しく説明し、拒否も含めて同意を得ることが必要です。

 

セカンド・オピニオンとは、「第二の意見」という意味で、診断や治療方針について主治医以外の医師の意見を聞くこといいます。 これによって患者が納得して主治医の治療を受ける(拒否も可)ことができるようになります。主治医を代えることが目的ではありません。

 

(2)医療の専門職

医療を提供する場面では、様々な専門職が業務を行っています。 ここでは、それぞれの専門職の業務内容を大まかに理解しておきましょう。

 

  • 医師(医師法)

医業(診断、投薬、手術、生理学的検査など)を行う。
医師は業務独占の国家資格であり、医師でなければ医業を行ってはならない。

  • 保健師(保健師助産師看護師法)

保健指導を行う。
看護師の業務である診療の補助及び療養上の世話も行うことができる。

  • 助産師(保健師助産師看護師法)

助産または妊婦、じょく婦もしくは新生児の保健指導を行う。
医師と助産師のみが助産行為を行うことができる。また看護師の業務も行うことが
できる。

  • 看護師(保健師助産師看護師法)

傷病者もしくはじょく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行う。

  • 理学療法士(理学療法士及び作業療法士法)

身体に障害のある者に対し、医師の指示に基づきリハビリテーションを行う
主として治療体操、電気刺激、マッサージなどの理学療法を行い、身体能力
の回復・改善を図る。

  • 作業療法士(理学療法士及び作業療法士法)

身体に障害のある者に対し、医師の指示に基づきリハビリテーションを行う
主として手芸や工作などの作業を通して、動作能力、社会的適応能力の回復を図る。

  • 言語聴覚士(言語聴覚士法)

言語や聴覚に障害のある人や嚥下等に問題のある人に対し、その機能の維持向上や
社会復帰等の支援を行う。

  • 歯科衛生士(歯科衛生士法)

歯科予防処置、歯科診療の補助、歯科保健指導を行う。

  • 助産師(保健師助産師看護師法)
介護実践に関連する諸制度5 保健と医療に関する施策3

(4)難病対策

 

難病に関する明確な定義はなく、いわゆる「不治の病」というような社会通念上の言葉で、ある病気が難病かどうかというのは、その時の医療の水準によって変化します。

 

現在の日本での難病の定義は、難病対策要綱において、

①原因不明で治療方針が未確定であり、後遺症を残す恐れが少なくない疾病

②経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するために家族の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病

と定義されています。

 

難病に対する対策としては、難治性疾患克服研究事業、特定疾患治療研究事業、小児慢性特定疾患治療研究事業などがあります。

 

難治性疾患克服研究事業は、症例数が少なく、原因不明で治療方法も未確立であり、生活面で長期にわたる支障がある疾患について研究を行うものです。 再生不良性貧血、潰瘍性大腸炎など、現在130疾患が対象となっています。

 

特定疾患治療研究事業は、難治性疾患克服研究事業130疾患のうち、診断基準が一応確立し、かつ難治度、重症度が高く、患者数が比較的少ない疾患に対し、公費負担により研究を行う事業です。

昭和47年度にベーチェット病などの4疾患を対象に発足し、現在は、慢性関節リウマチ、パーキンソン病など56疾患が対象となっています

 

小児慢性特定疾患治療研究事業は、児童福祉法に基づいた事業で、小児がんなど特定の疾患については、長期にわたる療養を要し、医療費の負担も高額となることから、その治療の確立と普及、患者家庭の医療費の負担軽減を図るための制度です。 現在、11疾患群、514疾患が対象になっています。

 

特定疾患治療研究事業と小児慢性特定疾患治療研究事業では、

①調査研究の推進

②医療設備の整備

③医療費の自己負担の軽減

④地域における保健・医療・福祉の充実(在宅療養支援、難病情報センターなど)

⑤QOLの向上を目指した福祉施策の推進

などの対策がとられています。

 

(5)歯科保健活動

 

日本の歯科保健活動としては、80歳のときに自分の歯を20本残そうという「8020運動」がよく知られています。

今では、「食育」運動と連携し、より健康な生活を目指すという観点から、ひとくち30回以上噛むことを目標とした、「噛ミング 30(カミングサンマル)」という運動が行われています。

 

また、口腔の健康や食べることの重要性や予防意識が認識されてきており、「健康日本 21」の9つの目標の1つに「歯の健康」が位置付けられていました。

 

介護実践に関連する諸制度4 保健と医療に関する施策2

(3)感染症対策

 

我が国の感染症は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」において、1類感染症から5類感染症と新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症に分類されており、診断した医師に都道府県知事(保健所を経由)への報告基準等が定められています。

 

各分類ごとの感染症の種類と特徴などは、下表のとおりです。

分類特徴感染症名
1類感染症感染力が強く、重篤で危険性が極めて高い感染症エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、ペスト、ラッサ病、マールブルグ病、痘そう、南米出血熱
2類感染症危険性が高い感染症急性灰白髄炎、結核、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザ(H5N1)
3類感染症危険性は高くないが、特定の職業への就業によって集団発生を起こし得るものコレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス
4類感染症動物、植物などを介してヒトに感染し、国民の健康に影響を与えるおそれのあるものE型肝炎、A型肝炎、黄熱、Q熱、狂犬病、鳥インフルエンザ(H5N1を除く)、マラリアなど
5類感染症国が調査を行い、必要な情報を一般国民や医療関係者に提供・公開し、発生・拡大を防止すべき感染症後天性免疫不全症候群(AIDS)、梅毒、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、ウイルス性肝炎(A・E型を除く)、インフルエンザ、麻しんなど
新型インフルエンザ等感染症新型インフルエンザA(H1N1)、再興型インフルエンザ
指定感染症1~3類及び新型インフルエンザ以外で、これらに準じた対応が必要な感染症で、政令で1年以内の期間に限定して指定する
新感染症人から人に伝染する疾病で、既知の感染症と病状または治療の結果が明らかに異なるもので、病状が重篤であり、当該疾病が蔓延した場合に国民の命や健康に重大な影響を与えるおそれがあるもの

 

すべての感染症を覚える必要はありませんが、インフルエンザ関連、腸管出血性大腸菌感染症、MRSA、肝炎などのほか、下記のポイントをチェックしておきましょう。

 

結核は、昭和の初めごろから1950年ごろまで、日本の死亡原因のトップでしたが、その後の医療の発達により、患者数は急速に減少しました。 ところが1997(平成9)年から再び患者数が増加し、1999年に「結核緊急事態宣言」が出されました。

 

これを受け、2006(平成18)年の感染症法改正では、結核予防法が同法に統合され、結核が2類感染症に指定されました。

 

近年の感染症に関する特徴として、「新興感染症」と「再興感染症」があげられます。

新興感染症とは、SARSや新型インフルエンザなど今まで知られていなかった感染症、再興感染症とは、結核やマラリアなど克服されたと考えられていた感染症のことを指します。

 

試験科目と合格基準

介護福祉士国家試験の筆記試験の科目と出題数は下の表のようになっています。

領域科目名出題数
午前
68問
人間と社会人間の尊厳と自立
人間関係とコミュニケーション
社会の理解12
介護介護の基本16
コミュニケーション技術
生活支援技術20
介護過程
午後
52問
こころとからだのしくみ発達と老化の理解
認知症の理解10
障害の理解10
こころとからだのしくも12
総合問題総合問題12

介護福祉士の筆記試験の合格基準は、

A.総得点120点に対して、60%程度を基準として、問題の難易度で修正した点数以上を得点すること
B.すべての科目において得点があること

とされています。

◆Aの基準について
120問中の60%は、72問ですので、これが標準になり修正が行われます。

ここ数年の合格基準点と合格率の推移を見てみると、以下のようになっています。

    合格基準点  合格率
2004年  84点   49.3%
2005年  82点   42.0%
2006年  73点   46.8%
2007年  77点   50.4%
2008年  82点   51.3%
2009年  76点   52.0%
2010年  75点   50.2%
2011年  71点   48.3%
2012年  75点   63.9%
2013年  69点   64.4%

◆Bの基準について
筆記試験の科目は全部で12科目ありますが、これを10科目群にまとめて、それぞれの科目群で1つでも0点があると不合格となります。

10の科目群は以下の通りです。

①人間の尊厳と自立+介護の基本、
②人間関係とコミュニケーション+コミュニケーション技術
③社会の理解
④生活支援技術
⑤介護過程
⑥発達と老化の理解
⑦認知症の理解
⑧障害の理解
⑨こころとからだのしくみ
⑩総合問題

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