近年わが国では、急速に進む少子高齢化、介護の長期化や重度化とそれに伴う在宅介護・家庭介護の限界などが大きな課題となり、社会保障制度を抜本的に再編し、介護を社会全体で支える仕組みをつくる必要性がでてきました。
この課題に対応するため、「21世紀福祉ビジョン」の提言や「高齢者介護・自立支援システム研究会」の報告などを踏まえて、「介護保険法」が1997(平成9)年に成立し、2000(平成12)年に施行されました。
◆介護保険創設の背景
介護保険制度創設前には、以下のような課題があり、それを解決するために、介護保険制度の導入が図られました。
・介護の社会化 家族介護の弱体化、老人医療費の高騰(社会的入院など)
⇒高齢者問題を社会全体で支える仕組みをつくる(社会保険方式を導入)
・措置制度から利用・契約制度への転換 措置制度は行政によりサービスが決定されるため、利用者が選択しにくく、権利擁護が不十分
⇒利用者自らの選択に基づいた利用者本位のサービス利用
・保健・医療・福祉サービスの総合的・一体的利用 縦割り行政(制度によってサービスの窓口が別々)
⇒別々に発展してきた医療と福祉の制度を再構築する (社会的入院の解消など、介護と医療を切り離すという側面もあります)
・サービスの供給主体の多様化 措置制度ではサービスの内容が画一的になりやすい
⇒株式会社やNPОなど多様な主体が参入し、民間活力の活用や市場(競争)原理の導入による質の向上を目指す
・ケアマネジメントの導入 サービスが医療と福祉に分かれて提供されていた、制度が複雑で適切なサービスを利用しにくい
⇒「利用者の心身の状況に応じた介護サービスの一体的提供」と「高齢者自身によるサービスの選択」を担保する仕組みを作る、ケアマネジメントの実践により介護の科学化を図るなど
この他、措置制度では応能負担(所得に応じた利用料の負担)であり、中高所得者層に重い負担となっていましたが、介護保険の導入により応益負担(サービス量に応じた負担)となり、不公平感を解消を図っています。
◆介護保険制度の目的
介護保険法第1条に、その目的が定められています。
このように、「尊厳の保持」、「自立した日常生活」を保障するため、「国民の共同連帯の理念(社会保険方式)」に基づいて制度を運営し、「国民の保健医療の向上及び福祉の増進」を実現させようというものです。