(1)利用者家族とのコミュニケーションの技法
ここでは、よいコミュニケーションをとるために、介護福祉士に必要なコミュニケーション技法について学びます。
下記に、主なコミュニケーション技法を示します。キーワードとその内容をしっかりと覚えましょう。
●傾聴
コミュニケーション技法の基本は、まず「傾聴」です。
傾聴とは、単に聴くだけでなく、相手に十分な関心を向け、言葉の裏に隠されている利用者の心情を理解するように聴くことで、利用者から「わかってもらえた」「理解されている」と感じてもらえるような聴き方です。
話には、話し手の経験や行動、感情、価値観が含まれており、これらを総合的に聴き、言葉の内容だけでなく、その背景にある感情を受け止めて理解することが大切です。
●共感
「共感」とは、コミュニケーション技法における基本的態度のひとつで、利用者の気持ちに寄り添い、利用者の体験したことや感じていることを共有し、理解しようとすることです。
共感の技法には、下記の2つのレベルがあります。
①第一次共感 基本的共感ともいわれ、話に含まれる感じ方、考え方、思いを受け止め、効き手側の言葉に変えて応答する技法
②第二次共感 深い共感ともいわれ、表出されず心に込められた思いや行動の背景にある感情も含めて応答する技法
「同情」は、聞き手の考えや見方から推測された相手の気持ちであり、相手の立場に立った思いの共有である「共感」とは異なるものです。
●納得と同意を得る技法
介護現場では、介護方法の説明など、何らかの説明をし、同意を得るという行為が発生します。
そのような場面では、介護者側の意見を押し付けるのではなく、利用者・家族との共感を基礎として、問題点を明確にしたうえで話をまとめていく必要があります。
下記に納得と同意を得る技法を示します。
①明確化 相手の話しにまとまりがない場合などに、質問をするなどして確認し、内容をはっきりとさせる技法
②言い換え 介護者側が別のよりわかりやすい言葉に言い換える技法
③焦点化 相手との話の中から、介護者側が重要な点を見出して理解し、まとめたうえで相手に返す(フィードバックする)技法
④要約 会話の内容、意味、感情などを総合的に理解し、要点をまとめて相手に伝える技法
・直面化 上記のような技法を用いることによって、利用者の考えや疑問が明らかになっていきますが、利用者・家族が、問題に向き合い、取り組めるように促すことを「直面化」といいます。
直面化は、利用者が自分の行動や行動がもたらす影響について、深くとらえられるようなきっかけを設けるとでもありますが、安易に用いると相手を傷つけることにもつながるため、信頼関係の深さなどを考慮するなど注意が必要です。