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自立に向けた移動の介護1

(1)移動の意義と目的

 

人が食事、排泄、更衣、入浴などの日常生活動作を行う際に、移動することなくこれらの行為を行うことはできません。

また、移動可能な範囲が広く自立しているほど、生活範囲が広がり、より豊かな生活を送ることができます。

介護従事者は、利用者が安全でできるだけ楽に移動できるよう支援することが大切です。

 

人がベッド上で動かずにいると、筋力は1週間で10~15%、1か月で50%ほど減少します。身体活動や精神活動を行わないことによる廃用症候群を予防し、寝たきりにさせないような支援が必要です。

 

移動などの生活行為の自立を促すためには、身体機能だけに着目するのではなく、移動しやすい環境、意欲や安心感などの心理的な側面も重要です。

 

(2)体位について

 

移動の介護では、利用者の体位が大きく影響します。ここでは、体位の種類と意味を理解しておきましょう。

 

・立位

立っている姿勢 ・椅座位  椅子に腰かけた姿勢 ・端座位  背中をもたれずに、ベッドの端などに腰かけた姿勢

 

・半座位

上半身を45度に起こした姿勢、ファーラー位ともいう(セミファーラー位は15~30度起こした姿勢)

 

・長座位

ベッド上などで足を伸ばして座った姿勢

 

・起座位

机の上にクッションなどを置き、それを抱えるようにうつ伏せにする姿勢  心疾患や喘息発作の場合に、血液循環の負担を軽減し、呼吸を楽にする姿勢

 

・仰臥位

仰向けに寝た姿勢

 

・側臥位

左右のどちらかを下にして横向きに寝ている姿勢

 

・腹臥位  うつ伏せに寝ている姿勢

 

(3)移動に関する利用者のアセスメント

 

移動の介護を行うためには、利用者がどのような状態にあるか、課題や支援方法についてアセスメントします。

ICFの視点に立って、移動という生活機能の中の「活動」に対し、他の生活機能や「健康状態」、「環境因子」「個人因子」がどのように相互作用を及ぼしているかをアセスメントします。

 

麻痺の種類には、以下のようなものがあります。

 

・四肢麻痺

左右の上下肢に麻痺が生じるもの。主な原因疾患は、頸髄損傷、脳性麻痺がある。

 

・対麻痺

両上肢、または両下肢の麻痺をいう。通常は腰髄損傷等による両下肢麻痺をいう。

 

・片麻痺

右または左の半身に麻痺が生じるもの。主な原因疾患は脳血管疾患がある。

 

・その他

四肢のうち1つが麻痺を起している単麻痺、四肢のうち3つが麻痺を起こしている三肢麻痺がある。

 

人間の身体の関節は、一定の範囲内(関節可動域)で動かすことができますが、無理な動きをすると、関節を外したり、骨折することもあります。

 

関節の動きが悪くなった場合、日常生活動作に支障の少ない手足の位置や関節の角度をとる姿勢のことを「良肢位」といいます。移動・移乗に関するアセスメントにおいても、良肢位を確認することが大切です。

 

(4)安全で気兼ねなく動けることを支える介護

 

安全に移動・移乗を行うためには、利用者・介護者の両方にとって安全で安楽な方法であることが必要です。

 

そのためには、利用者の身体の各部分の自然な動きや使い方を理解し、運動力学を応用して合理的な方法で介護を行います。その際、利用者の身体状況に応じて、残存機能を活かしてできるだけ自立できるよう支援することが大切です。

 

ボディメカニクスを活用した介助の方法は、介護者の腰痛防止に有効であるとともに、利用者にとっても安全で楽な方法となります。

 

外出の支援をする際は、介護従事者が外出をスムーズに行える方法を知ることによって、利用者が気兼ねなく外出できるように支援します。

 

そのためには、交通量が少ない、段差が少ないなど移動に支障のない道を選び、トイレやエレベーターなどの設備を確認し、必要に応じて他人の手を借りるなどがポイントになります。

 

(5)安全で的確な移動・移乗の介護の技法1

 

●歩行の介助

 

歩行の介助を行う際のポイントは以下のとおりです。

 

・介護従事者は、歩行パターンの特徴を把握して、利用者の斜め後ろに立ち、利用者のペースに合わせて歩行し、ふらつきや転倒に対応します。

 

・杖歩行をする場合は、健側の手で杖を持ち、杖→患側→健側、または杖と患側を同時に出す→健側の順で歩行します。介護従事者は患側の斜め後ろに立って介助します。

 

・階段の昇降をする場合、昇りは 杖→健側→患側、下りは 杖→患側→健側の順になります。

 

・障害物をまたいで超える場合は、まず杖を障害物の先に出し、患側で障害物をまたぎ、次に健側を出して患側の足に揃えます。

 

・階段を昇る場合だけ、健側が先になり、その他は患側が先です。これだけ覚えておけばほとんど大丈夫です。

 

・杖の長さは、床から大転子部までの長さで、杖をついた時の肘関節の角度が150度前後になる長さのものを使用します。杖先のゴムが減っていないかにも注意します。

 

●車いすの介助

 

車いすは、歩行が困難な人の移動手段として使用しますが、さまざまな生活場面で使用する福祉用具ですので、本人の身体に合った車いすを選ぶことが必要です。

 

利用者の身体に合わない車いすを使用すると、姿勢が悪くなり褥瘡の原因にもなります。股関節、膝関節、足関節がそれぞれ90度になる車いすが適しています。

車いすの座面や背もたれの高さや角度などを、利用者の身体の状態に合わせて調整することをシーティングといいます。

 

車いすでの移動介助のポイントは以下の通りです。

・砂利敷きの場所を通るときは、車いすのキャスター(前輪)を上げる。

砂利やぬかるみなど、通路面の整備が悪い場所では、ティッピングバーを踏みキャスターを上げて通行します。

 

・段差では、段差の手前でキャスターを上げ、前輪が段差に載ったら前進して後輪を載せる。

 

・下り坂では、後ろむきで、介護従事者が身体全体で支えながら、ゆっくりと降りる。

 

・電車に乗るときは、段差と同様の方法で、電車に対して直角で前向きに乗車する。

 

・エスカレーターでは、上りは前向き、下りは後ろ向きでキャスターを上げて乗り、すぐに動けるようにブレーキはかけない。

 

・車いすを止めるときは、必ずブレーキをかける。

 

ベッドから車いすへ移乗するときは、ベッドを車いすの座面と同じ高さに調節し、ベッドの側面に対し、15~30度の角度に車いすを置きます。片麻痺がある場合は、利用者の健側に設置します。

※これはあくまでも原則です。部屋の状態などによっては、正しい位置に車いすが置けない場合があります。実技試験などで慌てることがないよう、理想的な位置に置けなくても安全な介助ができるようにしておきましょう。

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