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自立に向けた移動の介護2

(5)安全で的確な移動・移乗の介護の技法2

 

●移乗の介助

 

ベッドから車いす、車いすから自動車など、移乗の介助を行う際には、利用者・介護従事者の両方にとって、負担が少なく安全である必要があります。そのためには、ボディメカニクスを活用することが重要です。

 

ボディメカニクスを活用した移乗の介護では、支持基底面を広くとり、重心が基底面の中に入るようにします。 支持基底面とは、両足で立った場合の左右の足とその間の面のことです。つまり足を拡げれば指示基底面は広くなりますし、足をそろえれば指示基底面は狭くなります。

指示基底面を広くとり重心を低くすると、安定して利用者を支えることができます。

 

これとは逆に利用者が立ち上がる場合は、指示基底面を小さくし、前かがみになって重心を指示基底面の外に出してもらいます。このようにすると、動きがスムーズになり、立ち上がりやすくなります。

 

利用者が片麻痺の場合は、健側を活用できるよう、車いすを20~30度の角度で健側につけ、介護従事者は麻痺側を支え、保護します。 車いすからベッドに移乗する場合は、ベッドが健側になるように近づきます(健側接近)。

乗るときと降りるときでは逆になりますので注意しましょう。

全介助の場合は、利用者の足の間に介護者の片足を入れ、身体全体を抱えるようにして移乗します。

 

ボディメカニクスの要点をまとめると以下のようになります。

 

・支持基底面積を広くする

介護従事者の足を前後・左右に広くとることで安定する

 

・重心を低くする

膝を曲げて腰を落とすことで安定する

 

・利用者にできる限り接近する

接近することで重心が近づき容易に介護できる

 

・水平に移動する

利用者を持ち上げるのではなく、横に水平移動することで負担が軽減する

 

・てこの原理を使う

肘や膝を支点にして、てこの原理を使うことで負担が軽減する

 

・身体を小さくまとめる

利用者が両手両足を組みできるだけ小さくまとめることによって、摩擦が減り移動しやすくなる

 

・大きな筋群を使う

腕や手先の力だけを使うのではなく、大きな筋肉を使うことで大きな力が出せ効率的である

 

●ベッド上での体位

ギャッジベッドの背上げ機能を利用して座位をとるためには、先に足上げ機能を使用して膝を上げてから背上げ機能を使って上体を起こし、膝の下や両脇にクッションなどを入れることで、ずり落ちせずに安定した座位をとることができます。

 

自分で身体を動かすことが困難な利用者には、安楽な体位を保つことで、身体的なくつろぎや、精神的な安定を得ることができます。

安楽な体位を保つためには、指示基底面を広くし体圧を分散させる、四肢は自然な湾曲が保てるようにする、身体とベッドの間にクッションを入れる、などを行います。

 

仰臥位での褥瘡の好発部位は、仙骨部、肩甲部、後頭部、後肘部、踵部などです。

側臥位では、大転子部、腸骨部、肩関節部、膝関節部、耳介部、踵部など、

座位では、坐骨部、仙骨部、尾骨部、肩甲部、後頭部などです。

 

褥瘡は、同一部位への長時間の圧迫や摩擦による血流循環障害や低栄養、尿失禁などによる皮膚の湿潤が発生原因となります。

はじめに皮膚の発赤が起こり、水泡やびらんへと進み、皮膚・皮下組織の壊死、潰瘍と進行していきます。

 

予防のためには、以下のような方法があげられます。

①最低2時間ごとに体位交換をする(90°側臥位は避け、30°程度にする)

②座位では、床面に足がしっかりとつき、90°座位が保てるようにする

③寝衣・寝具の湿潤を避けて、身体・寝衣・寝具を清潔に保つ

④シーツ・寝衣のしわを作らない、のりづけしない

⑤摩擦を防ぐ

⑥たんぱく質・ビタミンの多い食事を摂り、栄養状態を維持する

 

(6)利用者の状態・状況に応じた移動の介助の留意点

 

●片麻痺のある人の移動の介助

 

利用者に片麻痺がある場合、多くの人は、健側の機能は障害を受けていませんので、全面的に介助するのではなく、健側の機能を活用し、介護従事者は麻痺側を補助するように介助します。 一部介助の場合は、麻痺側に立って麻痺側を支え、保護しながら介助します。

 

片麻痺のある人で、尖足や下垂足などでつま先が上がらず、歩行が困難な人には短下肢装具がよく用いられます。

短下肢装具は、下腿部から足部までの構造になっていて、足関節の動きを制限し尖足にならずに歩きやすくする装具です。

 

●視覚機能が低下している人の移動の介助

 

視覚障害者は、聴覚や触覚を用いて日常生活動作を行っています。

介護従事者は、利用者の聴覚・触覚に情報を与え、周囲の状況がわかるように支援します。

 

視覚障害者が安全に移動できるためには、居住環境の整備が必要です。

段差の解消や手すり、すべり止めの設置、移動する場所に物を置かないなど、整理整頓しておくことも重要です。

 

視覚障害者の手引き歩行はガイドヘルプと呼ばれています。ガイドヘルプは以下の手順で行います。

 

①介護従事者は、利用者が白杖(はくじょう:視覚障碍者の歩行補助具で、杖先で障害物を確認しながら歩行する)を持っていない方の側で、利用者の半歩手前に立つ。

②歩行を始める合図として、介護従事者は声をかけながらした手の甲で利用者の手の甲に触れる。

③歩行時は、利用者に介護従事者の肘の少し上を握ってもらい、半歩手前を歩く。

④介護従事者は、利用者のペースに合わせて状況説明をしながら歩行する。

⑤曲がり角では、いったん立ち止まり、行く方向を説明してから方向を変える。

⑥階段を昇降する際は、手前で階段に対して直角に止まり、状況を説明。利用者の足先が階段に触れたのを確認してからゆっくりと上り下りする。

⑦椅子へ誘導する際は、利用者の手を椅子の背もたれや肘掛などに触れさせる。利用者は自分で椅子の状態を確認してから座る。

 

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