(1)排泄の意義・目的
排泄は、体内にある不要な物質を体外に排出することを指しますが、人間の基本となる生理的欲求であり、生命を維持し、健康な生活を送るために大きな意味をもつものです。
また、排泄は極めてプライバシーに関わる行為であり、羞恥心を伴います。
介護者は、利用者の心理面にも配慮し、利用者の生活リズムや習慣を尊重した安全で安心感を与えられるよう援助します。
福祉用具などを活用し、利用者に恥ずかしい思いをさせないよう、環境を整えることも有効です。
排泄行為の自立は、社会的自立につながりますが、失禁から安易にオムツをしようするなど不適切な排泄介護を行うことが、利用者の意欲を低下させ、社会的活動が不活発になったり、廃用諸侯群を招いたりします。
(2)排泄に関する利用者のアセスメント
排泄介助を適切に行うためには、利用者の排泄に関するADLの状況のほか、習慣や価値観、などを把握する必要があります。以下に排泄に関するアセスメントのポイントを示します。
●身体的側面
・疾患の状態、既往歴、服薬状況
・ 尿意・便意の有無、
・移乗・移動、着脱等のADLの状態
・食事、水分の摂取状況
●精神的側面
・トイレの場所や排泄行為の理解などの認知機能
・コミュニケーションが可能か
・排泄に関する考えや希望、排泄習慣など
・ 本人の意欲、羞恥心、遠慮、介護の拒否の有無など
●環境的側面
・トイレの場所、移動時の障害物の有無など
・プライバシーの保護
・洋式・和式、手すりの設置など利用しやすいか
・介助可能な広さがあるか
・介護者が常にいるか、いない場合の時間帯はいつか
・介護者の技術や排泄に関する知識
(3)気持ちよい排泄を支える介護
利用者の尊厳が保持され、その人に合った方法で排泄介助を行うために、以下のような点に留意します。
・介護側の都合に合わせた介助ではなく、利用者の排泄リズム・習慣に合わせた介助を行う。
・羞恥心を与えないよう、言葉遣いや態度に注意する。
・利用者のプライバシーに配慮し、安全に動作ができる環境を整える。
・残存能力を活用し、利用者の自立度に応じた介助を行う(安易にオムツやポータブルトイレなどを使用しない)。
・清潔を保持し、感染症等に注意する。
・排泄物を確認し、異常があれば医療職に報告する。
排泄の行為は、以下のような一連の動作で行われます。
排泄のコントロールがうまくできなくなったときは、どのような原因で、どの部分ができないかを把握し、必要な援助方法を導き出します。
① 尿意・便意を感じる
② 起居動作、およびトイレまで移動、ドアを開ける
③ トイレ、便器を認識する
④ 衣服を脱ぐ
⑤ 便器に座る(①~⑤の間、排泄を我慢する)
⑥ 腹圧をかけ、排尿・排便をする
⑦ トイレットペーパーで拭く、水を流す
⑧ 衣服を着る、手を洗う
⑨ 他の場所へ移動する