(1)介護過程の意義と目的
介護過程とは、利用者がより良い生活を実現するために、直面している生活課題を把握し、その解決を図るための計画を立て、実施、評価するプロセスをいい、「問題解決アプローチ」ということができます。
介護過程は、多職種連携のもと、利用者の尊厳を守り、個別ケアを実践することによって、自立した生活の実現を目指すものです。
また、介護過程の展開は、利用者のニーズを客観的・科学的に捉えることによって、「根拠に基づいた介護の実践」を可能にすることができます。
介護過程は、介護保険のケアプランや他の計画とほぼ同様ですが、「アセスメント」「計画の立案」「援助の実施」「評価」の4つの過程で構成され、それらが循環することによって、支援が継続していきます。
各過程の内容は、以下のとおりです。
①アセスメント
・援助に必要な多方面からの情報を収集する。
・専門的な視点から情報を解釈、分析し、それらを関連付け、統合する。
・利用者が抱える生活課題(ニーズ)を明確化する。
②計画の立案
・課題を解決するための目標を設定する。
・目標を達成するための方針や具体的な支援方法を決定する。
③援助の実施
・計画に基づいた援助を実施する。
・実施状況や新たな課題を把握する。
④評価
・モニタリングを行い、目標の達成状況を評価する。
・支援方法が適切であったかを評価する。
・計画の修正の必要性、今後の方針を検討する。
・新たな課題が把握された場合は、再アセスメントを行い、必要な計画の修正を行う。
(2)介護過程の展開
◆情報収集とアセスメント
アセスメントとは、①利用者の希望や心身の状況、生活環境など多角的に情報を収集する、②その情報を解釈、分析し、関連付け、統合する、③生活課題(ニーズ)を明確にする、という一連の過程のことを指します。
アセスメントが適切に行われるかどうかが、その後の援助の質に大きく影響します。アセスメントを行う者には、専門的知識や経験、判断する力が要求されます。
また、アセスメントを行う際には、利用者のマイナス面だけにとらわれることなく、利用者のできること、得意とすることなどのストレングスにも着目することが大切です。
①情報収集
情報には、利用者自身が考え方や問題のとらえ方である「主観的情報」と、他者が観察することによって得られる「客観的情報」があります。
情報収集では、まず主観的情報を集めますが、初めからすべての情報を集めようとはせず、先入観を持たずに利用者に接し、受容・共感によって信頼関係を築きながら正確な情報を把握していきます。
客観的情報は、心身の状態の観察や、医師の診断・バイタルチェックなどのデータや記録書類、家族や他職種からの情報などから得ることができます。
これらの情報を記録する際は、主観的情報なのか客観的情報なのかがわかるように区別して記録します。
②情報の解釈・分析、関連付けと統合
収集した情報が正確なもので、援助目標を達成するために必要十分かどうかを吟味したうえで、その内容を分析し、いくつかの情報の関連付けと統合を行うことによって、利用者の課題を明確化します。
③課題の明確化
利用者の抱える課題には、①顕在的課題、②顕在的課題の要因、③潜在的課題があります。
また、支援の方法として、①状態の改善・維持を目指すものと、②状態の悪化・低下を防止するものとに分けることができます。
支援計画を立案する場合には、これらを踏まえ、利用者のニーズや生活状況に照らし合わせて、優先順位をつけて支援を行うことが必要です。
優先順位の設定に当たっては、まず「生命の安全」にかかわることを最優先し、次いで自立支援の基づいた「生活の安定」や「人生の質・豊かさ」など、その人らしく生活ができているかに視点をおくとよいでしょう。「マズローの欲求段階説」も参考になります。
介護過程にICFの視点を取り入れることによって、アセスメントの質を高くすることができます。
「参加」に焦点を当てることによって、利用者の意欲が高まり、「心身機能・身体構造」や「活動」にプラス面の影響がでる、生活機能と環境因子のかかわりに焦点を当てることで、活動を促進する計画を立てるなど、多角的な視点で計画を立案することができるようになります。