◆コミュニケーションの基礎
介護福祉士国家試験におけるコミュニケーションに関する問題は、この科目と領域Ⅱの「コミュニケーション技術」から出題されます。
第25回問題では、コミュニケーションの環境と「感情の反射」、第26回~28回でも、共感や自己覚知という言葉、言語的・非言語的コミュニケーションなどが出題されていますので、コミュニケーションについては、様々な角度から学習しておくことが必要です。
以下、この科目での重要ポイントです。
よい介護をするには、信頼関係(ラポール)が必要です。
信頼関係を築くには、利用者との良好なコミュニケーションが必要であり、そのためには、介護福祉士が自分自身を理解(自己覚知)することと相手を理解(共感的理解)をすることが必要です。
コミュニケーションがうまくいかない原因として、相手と自分の認知のずれが生じている場合があります。
相手の認知している世界を受け入れることを受容といいますが、受容によって初めて共感的理解が生まれ、それによって信頼関係を築くことができます(この過程を覚えてください)。
この科目では、ますコミュニケーションに関する重要語句を理解することが必要です。 下記の語句を肯定的に書いている問題文はほぼ○です。点数をとりやすいところですので、しっかりと覚えましょう。
・ラポール
信頼関係、対人援助の場面では、援助者と利用者の保間に共感を伴った信頼関係を築くことが必要。
・受容
先入観で判断せず、相手をあるがままに受け入れること。感情的な対応や自分の価値観に基づいた批判的な対応をしないことが重要
・自己覚知
自分自身の価値観や考え方、性格などを自ら客観的に理解すること。自分が相手にどのように映っているかを理解する。
・共感
相手の心情に寄り添い、相手の感情や考え方を理解すること。
・傾聴
相手の言葉だけでなく、その裏にある言葉にならない感情や価値観、考え方などを総合的に聴くこと。
◆コミュニケーションの意義
コミュニケーションとは人(主体)と人との間で情報やそれぞれの意思、感情のやり取りをすることですが、コミュニケーションのもつ意義は、
①情報の伝達
②感情の伝達
③人間関係の調整
④自己の形成と人間関係の形成
の4つがあげられます。
また、よいコミュニケーションをとるには、信頼関係が必要ですが、さらに信頼関係を築くためには、適切に自己開示をする必要があります。
援助者自らの価値観や性格を知り、それが相手にどのような影響を与えるかを理解しておかないと、人間関係の形成に支障が起きたり、相手の状態を誤って判断してしまう可能性があります。
自己開示の適切な基準として、
①量(情報の量)
②深さ(内容の深さ)
③時(いつ開示するか)
④人(誰に開示するか)
⑤状況(機会や頻度など)
があり、この5つに基づいて、自己開示が適切にできるよう判断します。
コミュニケーションを促す環境として、室内でコミュニケーションをとる場合は、適度な明るさがあること、快適な温度・湿度であること、騒がしくなくリラックスできることなどがよい環境であるといえます。
この科目の重要語句に「生活場面面接」という言葉があります。
これは、面接を面接室などで行うのではなく、意図的に利用者の居室などの日常生活の場面で行う面接です。普段の何気ない声かけで面接が行われるので、利用者もリラックスしてコミュニケーションがとりやすくなります。
ただし、面接者はその場でのとっさの判断力が求められ、集団の場では、プライバシーに配慮しなければなりません。
第25回試験で、コミュニケーションを促す場面づくりに関する問題がでましたが、
利用者と援助者で向かい合って座る「対面法」は利用者が緊張しやすいので、直角に座る「直角法」の方が話しやすく、どうしても「対面法」で行わなければならない場合は、利用者が視線を向けることのできる花瓶などを机の上に置くとよいとされています。
親密度を高めるためには、横並び(平行法)も有効で、利用者の作品などを一緒に見る場合などに用いますが、あまり相手と親密でない場合は、なれなれしく感じることもありますので、注意が必要です。
また、人と人との距離には、「物理的距離」と「心理的距離」がありますが、物理的距離(実際の距離)が近くなると心理的距離(心の距離、親密感)も近くなるなど2つの距離は密接に関係していますが、利用者に近づきすぎると、利用者を緊張させることもあるので、程よい距離を保つことも必要です。
ただし、物理的距離が遠くても心理的距離が近いと、お互いの感情の交流を行うことができます。
パーソナルスペースという言葉がありますが、これは他人に入り込まれると不快感を感じる「なわばり」のような空間のことで、相手との親密さによって、距離の取り方が変わってきます。