介護福祉士国家試験・わかりやすい解説で受験生を応援します

Sponsord Link

介護従事者の安全

(1)介護従事者の健康管理

 

介護従事者自身が健康であることは、質の高い介護を提供するために必要不可欠なことであり、介護従事者の疲労やストレスは、介護の質の低下や事故につながることもあります。

 

このため、介護従事者は、自分自身の心と身体の健康状態を整えておく必要があります。

 

WHO(世界保健機関)では、健康を「健康とは身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない」と定義しています。

 

(2)こころの健康管理

 

精神面での健康管理では、ストレスをためない工夫をし、安定した精神状態を保つことが大切です。そのためには、十分な睡眠、休養をとること、自分に合ったストレス解消法を行う、心配事などを話せる人を持つことなどを普段から心がけるようにしましょう。

 

現在の介護現場は、事故防止、認知症への対応、高度で専門的な介護技術など、業務が拡大・多様化し、ストレスの多い職場であると言われています。

 

そのようなストレスへの対処法や心と身体の管理を行うことをストレスケアマネジメントと言いますが、職場でのストレスケアマネジメントは、個人のストレスを減少させるとともに、事故を未然に防ぐ、リスクマネジメントの一環として考えられています。

 

また、介護従事者など、対人援助サービス従事者に多いのが、「燃え尽き症候群(バーンアウト・シンドローム)」です。燃え尽き症候群は、突然燃え尽きたように、仕事への気力を失い、心身共に疲れ果てた状態になることで、それまで熱心に仕事をしていた人ほど陥りやすくなります。

 

(3)身体の健康管理

 

介護現場では、腰痛症や椎間板ヘルニアなどでの腰痛が大変多くみられます。

 

腰痛症は、特に原因となる病気がない腰部の痛みの総称です。多くは悪い姿勢などを長時間継続して、筋肉の疲労が蓄積することによって起こると考えられています。

 

椎間板ヘルニアとは、重いものを持つなど、強い力が断続的に加わったとき、背骨の骨と骨の間にあってクッションの役割を果たしている椎間板と呼ばれる軟骨が外に飛び出し、神経を圧迫することで激しい腰痛や臀部から足先にかけてのしびれを引き起こす病気です。

 

腰痛を予防するためには、ボディメカニクスの活用、福祉用具や介護機器の活用、良い姿勢の保持、コルセットや幅広ベルトの着用などがあげられます。

また、腰痛体操などで、腹筋や背筋などの筋肉を強化し、身体を柔軟にすることも効果的です。

このほか、十分な睡眠や休養をとる、規則正しい生活、栄養バランスのとれた食事を摂るなども重要です。

 

厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」では、重量物取扱い作業について、人力の負担軽減のために、作業の自動化、機械化、適切な補助機器等の使用を推奨しています。

 

(4)介護従事者の感染症予防

 

介護従事者は、自らが感染症の媒体にならないよう、日ごろから十分な予防対策をとる必要があります。

丁寧な手洗い、うがい、マスクの着用、排泄介助などの他、利用者の血液や体液に触れる可能性がある場合は、手袋、エプロンの着用などが必要です。

 

(5)介護従事者を守る法律

 

①労働基準法

労働基準法は、労働者を保護するため、労働条件の最低基準を規定している法律で、従業者を1人でも使用する事業所に適用されます。

・1週間の労働時間は40時間、1日の労働時間は8時間を超えてはならない

・女性の出産に関して、産前6週間(請求があった場合)と産後8週間は就業させてはならない などが規定されています。

 

②労働安全衛生法

労働安全衛生法は、事業者に対して職場の安全と衛生を確保するための体制づくりを義務付けており、労働基準法と整合性がとられています。

従業員50人以上の事業場には衛生管理者(10人以上50人未満は衛生推進者)、産業医の配置が義務付けられています。

産業医は、衛生管理者に対する指導・助言、従業員の相談に応じ、1000人以上の従業員を使用する事業場には、専属の配置が義務付けられています。

 

③介護労働者法(正式名称:介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律)

介護労働者法は、介護労働者の雇用管理の改善、能力の開発及び向上等に関する措置を講ずることにより、介護関係業務に係る労働力の確保、介護労働者の福祉の増進を図ることを目的とする法律です。

この法律に基づき、介護労働者の雇用管理の改善、能力の開発・向上、その他の福祉の向上を図ることを目的として、平成4年に介護労働安定センターが設立されました。

介護における安全の確保とリスクマネジメント6

(4)非常災害対策

 

特別養護老人ホーム等の福祉施設施では、「非常災害に関する具体的計画を立て、非常災害時の関係機関への通報及び連絡体制を整備し、それらを定期的に周知するとともに、定期的に避難、救出をの他必要な訓練を行わなければならない」と規定されています。

 

火災、風水害、地震に対応する計画を立てること、スプリンクラー、自動火災通報装置等の消防設備の設置、訓練等の実施、防火管理者の配置が義務付けられています。

 

2007(平成19)年に消防法の改正があり、グループホームなどの小規模な施設にも、スプリンクラー、自動火災通報装置の設置や、防火管理者の配置が義務付けられました。

 

高齢者や障害者は、災害時に自分を守り、避難をすることが困難です。 高齢者の住宅火災による死亡者の約6割が逃げ遅れによるものとなっており、火災警報器を設置する、カーテンなどに防火品を使用する、消火器を設置する、近隣との協力体制をつくるなどの対策が重要です。

 

(5)緊急時の対応

 

介護従事者は、利用者の人命にかかわるような緊急事態に遭遇することがあります。 そのような場合に介護従事者は、人命救助、状態悪化の防止、苦痛の軽減に努めなければなりません。

 

緊急時に備え、利用者の氏名、生年月日、病歴、服薬状況などの情報を整理しておくこと、緊急時の連絡体制を確認しておくこと、緊急時の対応方法を知ることなどの準備をしておくことが必要です。

 

緊急時は下記のような対応を行いますが、ひとりで行おうとはせず、大声で周囲の人の協力を求めます。

 

①窒息

食べ物が喉につまった場合は、

・本人に咳をしてもらい自然に吐き出す ・利用者の頭を下げ、肩甲骨の間を強く叩く(背部叩打法)

・利用者の背部からみぞおちのあたりに手をまわして腹部を強く上に圧迫する(ハイムリック法)

・意識がない場合は、清潔なガーゼ等で指を覆い、詰まったものを掻き出す、吸引器を使用する という対応をします。

また、 嘔吐した場合も、吐物で窒息しないように顔を横に向け、嘔吐しやすい体勢にします。

 

②呼吸困難

肺や心臓の疾患があると、軽い運動や安静時にも呼吸困難を起こすことがあります。

・衣服を緩めて起座位(座位より少し前かがみ、机に枕を置いて寄りかかる体勢)にする

・身体を前に押すように背中をさすり、呼吸を促す ・意識がない場合は、あごを上げて気道を確保し、呼吸がなければ人工呼吸を行う

 

③やけど

・まず、水道水等で患部を冷やす(無理に衣服を脱がそうとすると患部の皮膚をはがしてしまうので、着衣のまま冷やす)

・冷やしすぎると低体温症(体温が35℃以下になると生命の危険がある)になることもあり、注意が必要

・広範囲・重度の場合は、患部をタオル等で軽く覆い、病院受診する

・湯たんぽなどでの低温やけどの場合は、冷やしても効果がないので、すぐに病院を受診する

 

④転倒

・全身状態(意識があるか、出血・痛みの有無など)を調べる

・意識がない場合は、安静にして、呼吸・脈拍を調べ、救命処置を行うとともに救急車を手配する

・骨折、脱臼、捻挫などの疑いがある場合は動かさずに患部を固定する

・出血がある場合は止血をし、ガーゼや清潔な布をあてて、傷を保護する

・安静にして医師の診察を受ける(頭部を打った場合は経過観察が必要)

 

(6)一次救命処置(BLS)

一次救命処置(BLS:Basic Life Support)とは、倒れて意識のない人や、窒息を起こした人に対して、その場に居合わせた人が、救急隊や医師に引き継ぐまでに行われる救命処置のことです。

 

基本的な手順は、以下の通りです。

 

①倒れている人を発見した場合は、まず、周囲の安全の確認と意識の有無を確認します。

意識の確認は、肩を叩いて大声で呼びかけるなどして行います。

②意識がない場合は、大声で近くの人に助けを求め、救急通報(119番通報)とAED(自動体外式除細動器)の手配を依頼します。

③呼吸の確認を行います。目視で規則的で正常な呼吸が確認できれば、回復体位にする。

※回復体位とは、身体を横向きにし、あごを上げて気道を確保、膝を曲げ、下側の手を前方に伸ばした体位(嘔吐物による窒息を避ける)。

10秒以内に目視での呼吸を確認できない、死戦期呼吸をしている場合は心停止と判断し、直ちに胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行う。

※死戦期呼吸とは、しゃくりあげるような不規則な呼吸で、心停止直後に起きる呼吸のこと。これを呼吸があると判断してしまうと、救命のチャンスを逃してしまうことになる。

 

④心肺蘇生法(CPR)を行う

・胸骨圧迫(心臓マッサージ)  胸の真中を両手を重ねて強く、速く圧迫を繰り返す(5㎝沈む程度、1分間に100回以上)。

・気道確保  仰向けに寝かせた状態で、額を押さえてあごを持ち上げる。 異物があれば取り除く。

・人工呼吸  鼻を押さえ、息を吹き込む。感染予防のため、ハンカチなどを介して行う。 胸骨圧迫30回に2回が目安であるが、できるだけ胸骨圧迫中断しない(10秒以内)で行う。

※⑥一次救命処置(BLS)ガイドラインで説明していますが、現在は気道確保、人工呼吸より胸椎圧迫を行うことを優先しています。

 

⑤AEDによる除細動

AEDが届いたら、その音声ガイダンスに従って処置を行います。  体が濡れていたらふき取り、AEDの電源を入れ、電極パッドを胸に付けます。

AEDは、電気ショックが必要かどうかを判断し、自動的に作動します。  その後はCPRを2分間行い、AEDの解析(指示があれば電気ショック)を繰り返します。

 

⑥一次救命処置(BLS)ガイドライン

一次救命処置(BLS)には、ガイドライン2005とガイドライン2010があり、方法が少し異なっています。古い参考書だと、ガイドライン2005に準拠した方法が記載されていますので、注意が必要です。

主な違いは以下の通りです。

・処置の手順がA:AIRWAY(気道確保)→B:BREATHING(人工呼吸)→C:CIRCULATION(心臓マッサージ)だったのが、C→A→Bとなっています。

・気道確保、人工呼吸は訓練された救助者以外は、やらなくてよい。

・呼吸の確認方法について、胸の動きを見て、呼吸音を聞いて、頬で息を感じて(見て、聞いて、感じて)を廃止し、目視での呼吸が確認できない、死戦期呼吸が認められる状態であれば、心停止と判断する。

 

これらは、訓練を受けていない者にとって、胸骨圧迫が最も効果が高く、他の処置で中断されることを防ぐためです(胸骨圧迫だけのCPRでもよいとされています)。 また、ガイドライン2005から脈の確認は不要とされています。

 

このほか、

・胸骨圧迫の位置は、「乳頭間線上の胸骨」から「胸骨の下半分」に、

・胸骨圧迫の深さが、4~5㎝から、5㎝以上に、胸骨圧迫のテンポは100回/分程度から、5㎝以上に、胸骨圧迫のテンポが100回/分から100回/分になりました。

介護における安全の確保とリスクマネジメント5 事故防止、安全対策

(3)事故防止、安全対策

 

◆事故防止とリスクマネジメント

 

介護を必要とする人は、身体能力や認知能力に障害があり、事故を起こしやすい状態にあるといえます。 介護従事者は、起こり得る事態を予見して、事故を防止するために適切な介護を行うとともに、事故が発生した場合には、その被害を最小限に食い止めるために、適切な対応をとらなければなりません。

 

介護保険施設等の運営基準では、事故の発生又はその再発を防止するため、

①事故発生の防止のための指針の整備、

②事故やヒヤリ・ハット事例の報告、改善策を従業者に周知徹底する体制を整備すること、

③事故発生の防止のための委員会及び従業者に対する研修を定期的に行うこと、

④事故が発生した場合に速やかに市町村、入所者の家族等に連絡を行うこと、

が義務付けられています。

 

また、介護保険施設等は、事故の状況及び事故に際して採った処置について記録をし。介護サービスの提供により賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行わなければならないとされています。

 

労働災害に関する経験則に「ハインリッヒの法則」というものがありますが、この法則では、1件の重大事故の背景には29件の軽傷事故があり、さらにその背景に300件のヒヤリ・ハット体験があるとしています。

 

介護事故に関してもほぼ同様のことが当てはまり、事故発生の防止のための委員会では、ヒヤリ・ハット事例を分析し、背景要因も含めた原因の究明と再発防止策を検討することが大切です。

 

事故防止のためには、利用者個々の心身の状態やその変化を的確に把握し、できる限りリスクを軽減するようなかかわり方を検討する必要がありますが、事故に関する委員会の他、ケアカンファレンスやサービス担当者会議の場も活用することができます。

 

また、介護事故に関しては、発見者からリーダーに報告し、最終的に施設や事業所管理者に報告する仕組みを整備することが義務付けられています。

 

◆転倒・転落の防止

 

転倒・転落事故は、高齢者の家庭における不慮の事故による死亡事故の原因として、窒息、溺死についで多く報告されています。

 

転倒・転落による事故を防止するためには、利用者の転倒リスクのアセスメントに基づく適切な介助を行う他、段差をなくす、手すりを設置する、床等の滑り止めやベッドを低くするなど、環境の整備が重要です。

 

なお、転倒・転落を防止するための身体拘束は、決して行ってはなりません。 重大な人権侵害であるだけでなく、身体拘束によって体力が衰え、認知症が進み、その結果、ますます転倒などのリスクが高まり、その対応のためにさらに拘束を行う、という悪循環を生みだします。

利用者が自ら行動することによって、転倒・転落事故を起こす場合は、まずはその行動の理由を探り、安全面に配慮した対応を行うことが大切です。

 

◆薬の誤用の防止

 

介護を必要とする人の多くは、日ごろ薬を服用しています。 誤って薬を服用すると、非常に危険ですので、きちんと管理し、正しい方法で服用するようにしなければなりません。

 

・服薬の介助をする場合、医師の指示をきちんと守る。

服用時間(食前、食後、食間、就寝前など時間薬)、量、回数などを守り、自己判断で服薬を中止したり、量を変えたりしてはいけません。  また、飲みにくいからといって、薬剤をカプセルから出して服用すると、薬の効果が変化してしまいます。医師に相談し、別の形状の薬を処方してもらいます。

 

・薬を飲んだことの確認を確実に行う。

欠食によって薬を飲まなかったり、飲んだことを忘れて2度服用したりすることを避けるようにします。 ・薬は正しく保管する  薬は直射日光などで変質することがありますので、基本的には冷暗所に保管します。また、長期間保存する場合は、湿気を避けるなどが必要になります。

 

・処方薬は受診して服用する。

症状が同じようでも、自己判断で以前処方された薬を服用せず、必ず受診します。  また、薬には消費期限があり、保存状態によってはさらに期間が短くなるので、注意 が必要です。 ・点眼を正しく行う。 点眼は、介護者の手や利用者の瞼を清潔にし、容器が触れないように1滴ずつ行います。複数の点眼薬を使用する場合は、5分以上間隔を空けます。

 

・介護従事者が行える服薬介助

「 医師の処方を受け、あらかじめ薬袋等により患者ごとに区分し授与された医薬品について、医師又は歯科医師の処方及び薬剤師の服薬指導の上、看護職員の保健指導・助言を遵守した医薬品の使用を介助すること」とされています。

このページのトップへ

Copyright © 2017 介護福祉士無料受験対策講座+ All Rights Reserved.
シアリス